「ネイル」と「芝生」の共通点から考える、未来のビジネス

11月30日(金)18時26分 Forbes JAPAN

AIに取って代わられると予測される職業のひとつに、ネイリストがあるそうだ。美容業に従事している人間としては、たいへん残念な話題である。美容業界でもロボット化は進むらしく、ネイルがその代表的な分野らしい。

すでに国内で開催している美容の展示会に行くと、指を入れると、指定した色やパターンが爪にのるインクジェットプリンターのような機械も登場している。そうでなくても、ここ数年は、爪に絵を描くより、よくできたシールを貼るほうが簡単で綺麗に仕上がるので需要は大きく伸びている。

また、ネイルに含まれるトルエンなどの化学物質が指に良くないなどの話題もあり、ネイルに関しては、違うアプローチや異なるサービスを考えなくてはいけない岐路に立っている。

財力と時間をかける贅沢

しかし、よく考えるとネイルの料金が下落傾向にあるのは、技術サービス云々の問題ではなく、すぐ伸びて欠けてしまうものに、高額な料金や手間暇をかけるのはどうかという、消費者側からのニーズにより、安いサービスが増えてきたとも言える。

簡単に付けて、簡単に変える。ネイルが、ファストビジネスの領域に入ってきたのが原因ではないだろうか。そもそも、ネイルは生活に必須なアイテムではなく、人生の楽しみのひとつであり、人間らしさを表現する贅沢商売なのだ。

ネイルのように、施術の間の昼の時間に、手が1時間も使えないということ自体が贅沢の象徴だと思う。富裕層の女性たちの、「私は家事をする必要がないので、爪は汚れることなく、いつもこんな美しくしていますよ」という自慢の道具だった時代が長かった。

つまり、王宮レベルの女性たちから発祥した「美容」であり、メンテナンスは自分ではもちろんできないし、他人がやるので、技術者や使用人を抱える財力が必要だった。

しかし、メンテナンスに手間暇がかかる、贅沢に時間を使う、という2つの要素は、次の時代のビジネスのヒントにもなっている。

ネイルに似たようなビジネスが、実は芝生園芸かと思っている。仕事で地方をまわったり、海外へ出かけたりすると、綺麗な公園や歴史的名所に寄れるのが、楽しみのひとつでもある。

美しい建物や庭の特徴は何ですかと尋ねられると、ステンドガラスでもなく家具でもなく大理石のタイルでもなく、芝生の美しさが最近の流行ではないかと思う。青々した芝生こそ、美しい景色の象徴、富の象徴になっているのではないか。メンテナンスが大変なところが、ネイルに似ていると思えるのだ。

芝生の発祥はイギリスやフランスの王宮庭園らしい。何の変哲もない丈の短い草である。色も同じ、形も同じ草が並ぶ姿は、中近東でもアジアでも浸透、流行しており、高級ホテルや高級住宅街では、この草がないと高級なクラスにさえカテゴリーされない。

テニスもサッカーも乗馬も、スポーツで最高級の舞台は、なぜか天然芝となる。ハイクラスのスポーツであるゴルフに至っては、そもそもフィールド自体が芝生である。庭園や公園のシンボルという領域を超えて、スポーツや家庭の日常にも入り込んでいるのだ。


パリ6区にあるリュクサンブール公園

芝生の初期投資は、桜の木を植えたり、黒松をシンボリックに設置したりするより、遥かに安価で簡単であるが、その後のメンテナンスに時間がかかる。芝生にはメンテナンスとか綺麗に揃っているという所有感に対する付加価値がついている。もしかしたら、使わないのにワイングラスをガラス棚に並べるとか、300km/hで走れる公道はないのにスーパーカーを所有するという気持ちと近いのかもしれない。

人間らしく未来を想像すると?

話を元に戻そう。メンテナンスという大変な作業が豊かさの象徴であれば、ネイルも芝生育成も同じだ。ネイルのように芝生をメンテナンスするロボットがでてきたら、価値は下がってくるかもしれない。

ネイルビジネスの加速度的な変化を眺めながら、芝生を思い、また美容のビジネスの未来を考えている。最近のベストセラー書籍、ユヴァル・ノア・ハラリ著の「ホモ・デウス」では、人類と猿と違いを、未来を考える想像力であると書いていた。芝生の未来を考えながら、ネイルビジネスの答えが出ないかと、呑気に公園で寝転ぶ週末である。

連載 : オトコが語る美容の世界
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