テレワークや在宅勤務は週に何日が適当なのか?

11月30日(木)6時0分 JBpress

日本の働き方改革は、世界のトレンドと合っているのか。

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日本と欧米の働き方

 日本政府は最重要テーマとして「働き方改革の実現」を掲げ、2017年3月に働き方改革実行計画を決定した。これに加え、過重労働など「ブラック企業」と呼ばれる労働基準関係法令の違反企業公表、また一方で景気回復、人手不足の加速など、働き方をめぐるさまざまな動きや状況の変化があり、大手企業を中心に知恵を絞っている。

 リクルートワークス研究所がフレキシブルワーク(柔軟な働き方)の研究に取り組み始めた10年前には、IT基盤が整っている大手通信会社がフィジビリティスタディー(実現可能性調査)で取り組むとか、育児や介護をしている女性従業員に限って在宅勤務を導入する、といった企業がいくつかあった程度である。しかしこの2〜3年は、企業トップの本気度も高くなり、改革のスピードは倍速となり、次々に日本流の「新しい働き方」を生み出している。

 働き方改革の目的の1つとして掲げられることが多いのは、労働生産性の向上。企業が主に取り組んでいるのは、長時間労働の是正をはじめとした、「労働時間」「休暇制度」「働く場所」などの制度の見直しと、「テクノロジーの導入」である。

 多くの企業がまず着手するのは「労働時間」の柔軟化だ。日本では、導入しやすい制度として「フレックスタイム制」を取り入れている企業が多い。これは欧米諸国でも同様で、デンマークでは企業の約97%が導入している。

 また、法定労働時間を見ると、フランスは週35時間と短いが、ベルギーは週39時間、日本・米国・オランダ・スウェーデンは週40時間と、欧米では40時間前後を定めている国が多い。また、労働時間を法律で一律に定めずに労使間で協議して決定することを認める国もある。これも柔軟化の1つの方法だろう。

 実際、フレキシブルワークの進展度合いを見ると、これらの国では、各職場における労働時間の変更申請や、長期休暇の取得申請を簡略化するなど、フレキシブルワークを後押しする労働法改正は進んでおり、さらに自由化が高まっている。

 一方で、「労働時間」を厳格に管理することで働き方改革を進めるというアプローチをとる国もある。

 フランスやドイツなどは、労使間で定めた労働時間以外には「つながらない権利」を設け、業務時間外の仕事のメールは見なくてよいとして、オンとオフの線引きを明確にしている。

 また、欧州内のグローバル企業の一部は「1日6時間勤務制」を導入している。フレキシブルワークの導入は、従業員の満足度や生産性の向上にもつながっているという。

 ノルウェーでは、1週間単位で計画した仕事を、早く終えることができれば、週末の金曜日は自由出勤もしくは休暇を取得することができる。例えば、朝6時など早朝に出社して昼休みは簡単な軽食を取り、午後2時くらいに退社をするという圧縮労働である。日本のように法定の45分から1時間といった長い休憩はとらず、少しでも早い時間に退社する。外見上は短時間勤務に見えるが、労働量は一定で品質を落とさず、労働時間、場所、期間を自律的に設定する「信頼労働時間制度」を取り入れている。


「テレワーク」を導入する企業が増加

 欧州では、大企業を中心に、大気汚染などの環境への配慮や、通勤による混雑の緩和、また、インターネット環境をはじめとするテクノロジーの進化、機能的なレンタルオフィスの普及拡大、セキリュティシステムの向上を背景として、「テレワーク」「在宅勤務」などの導入が進んできた。ホワイトカラー職を中心に、同僚やパートナー、顧客とのコンタクトも容易にできるため、パソコンと通信環境があれば、どこでも職場になる。

 では、テレワークや在宅勤務は週に何日が適当なのか。

 フランスの事例をみてみよう。興味深い調査結果がある。フランスのCentre d’analyse stratégique(首相の権限下にある戦略的分析センター)の報告書「Le développement du télétravail dans la société numérique de demain」では、「週3日以上のテレワークは仕事の効率や生産性が低下する」と警鐘を鳴らしている。また、勤勉な労働者は、オフィスに出社しないことに引け目を感じ、必要以上に朝早くから夜遅くまで働いてしまう傾向がみられるという。

 フランスでは実際に、従業員に毎日テレワークを許可している企業はほとんどなく、大半は週2回、もしくは週1回であるという。これは、取得日数が多くなると、人間関係の構築や組織から孤立しやすくなるという理由からだ。

 従業員側の声はどうか。「テレワークがもたらす経済効果」調査(2014年、Opinium)の調査結果では、ホワイトカラー従業員の92%は、週2日のテレワークを希望している人が最も多かったという。従業員の意見を見ると、テレワークのメリットは「生産性が向上する(36%)」「信頼されていると感じる(28%)」「多くの仕事をこなせる(13%)」という結果であった。

 また、テレワークの経済効果をみると、テレワークを導入することで、フランス経済は、年98億ユーロの経費削減が可能になるという。これはフランスのGDPの0.5%に当たる金額である。

 国や業界、職種によって最適な導入方法は大きく異なると思うが、このような海外の動向を参照してみてはどうだろう。


日本の働き方改革は、マネジメント改革でもある

 日本では、大企業を中心に、テレワークの導入に対して比較的前向きな姿勢がみられる。

「働く時間」「休暇制度」「働く場所」の柔軟化は、企業と従業員との労働契約の個別化、個別管理の拡大にも直結する。働き方改革は、働くルールと、マネジメントの改革ともいえるだろう。

 今後、雇用契約の個別化が進むと、就業規則など1つのルールで管理ができた時代のマネジメントスタイルでは、もう対応することはできない。目の前にいない部下をどう指揮し管理し、評価していくのか。たとえば、遠隔地にいる部下とのコミュニケーションは、対面よりもメールやチャットツールなどの、文章での指示が多くなる。管理する部下が多い場合は容易ではない。数が増えることで、これまでのマネジメント手法など、業務の見直しも必要となるだろう。

 先進的な企業では、部下からの業務報告を毎日AIがヒアリングして上司に報告する管理ツールなど、進化するテクノロジーを取り入れ、共存することで、労働生産性の向上を試みるところもある。

 働き方改革で働き方の柔軟化が進む、その一歩先に何が起こり、どのような対処が必要となるのか、想像力を働かせながら備えておく必要があるだろう。

筆者:村田 弘美

JBpress

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