コロナ再拡大、新年を迎える日本経済は重大局面に

11月30日(月)6時0分 JBpress

(加谷 珪一:経済評論家)

 新型コロナウイルスによる感染が再度、拡大する可能性が高まっている。今年(2020年)、4月に発令された緊急事態宣言によって経済は大きな打撃を受けており、同様の措置が再度、実施された場合、経済への影響は計り知れない。給付金など一時的措置で延命を続けてきた企業も多く、感染拡大で消費者の動きが鈍れば、外出自粛の有無にかかわらず倒産が増えることも予想される。年末から春先にかけて政府と企業は難しい対応を迫られるだろう。


政府は急遽Go Toキャンペーンを見直し

 国内の感染者数は、今年8月以降、減少傾向が続いていたが、11月に入って感染者数の顕著な増加が観察されるようになった。11月後半における1日あたりの新規感染者数は移動平均で2000人を超えており、8月のピークをはるかに上回っている。

 感染症の一般論として、一旦、感染が拡大すると、外出自粛やロックダウン、移動制限といった措置を実施しない限り、しばらくの間、増加トレンドが続く可能性が高い。このままのペースで行けば、年末から年始にかけてさらに多くの感染者が出てくるのはほぼ確実といってよいだろう。

 政府は経済の回復を目指し、消費を喚起するGo Toキャンペーンを実施してきた。当初、政府はキャンペーンの見直しに慎重なスタンスだったが、11月20日に行われた専門家による分科会が運用見直しを強く求めたことから、翌21日には制度の運用を見直す方針を明らかにした。感染拡大地域を目的地とする新規の旅行予約の停止や、食事券の新規発行停止といった措置が実施されるので、感染状況次第では、事実上、キャンペーンが止まる可能性も出てきたといってよいだろう。

 すべては今後の感染者数次第だが、このペースで感染者が増えた場合、日本経済には相当、大きなショックが加わる可能性が高い。その理由は、これまで政府が行ってきた各種緊急対策がそろそろ限界に近づいているからである。

 政府は年初からの感染拡大に対処するため、特別定額給付金や持続化給付金、雇用調整助成金など各種支援策を次々と実施してきた。一連の施策については賛否両論があるが、外出自粛による急激な経済の縮小に対して、パニック的な倒産や解雇、生活困窮者の急増を回避するという点においては、大きな効果があったといってよい。

 帝国データバンクが取りまとめた2020年度上半期(3〜9月)における倒産件数は3956件で、前年同期比との比較で5.2%のマイナスとなった。コロナによる倒産は増えているものの、倒産件数そのものは昨年よりも少なく推移している。生活保護の申請も4月には増加したが、6月以降は減少傾向だ。

 外食産業や旅行業界を中心に、厳しい状況に追い込まれている人がいるのは事実だが、もし政府が一連の対策を実施していなければ、失業や倒産はこのレベルでは済まなかっただろう。


感染初期段階の各種対策はそろそろ限界に

 一連の政府の対策は緊急措置としては効果を発揮したが、あくまでも緊急対策であって、今後の経済を底上げする効果は期待できない。コロナの感染が終息していない状況において、経済を拡大させるためには、IT化などコロナと共存できる分野への投資を強化するやり方と、感染拡大のリスクについてある程度、受け入れた上で、消費一般を喚起するやり方の2種類がある。

 緊急対策の後、政府が実施したのは飲食と旅行で消費を喚起するGo Toキャンペーンだったので、基本的には後者を選択したと考えてよい。感染が再拡大する兆候が出始めた11月初旬の段階では、基本的にキャンペーンを継続する方針だったことからも、基本的にはコロナとの両立を目指していたことが分かる。だが専門家らが厳しい見解を示したことをきっかけに、方針転換を余技なくされた格好だ。

 政府が前半に実施した緊急対策の効果はそろそろ限界となっていたが、少なくとも飲食と旅行の業界はGo Toキャンペーンによって、事実上、対策が継続している状況だった。このタイミングでキャンペーンが停止となった場合、業務継続が困難になる事業者が増えるのは確実である。

 飲食と旅行以外の業界では、Go Toキャンペーンのような大型の支援策は実施されていないので、消費低迷の影響をジワジワと受け続けている。クジレットカードの消費動向調査では、4月や5月と比較すると消費は回復しているものの、コロナ前との比較では2割程度、消費が少ない状態が継続している。

 あくまで計算上の話だが、日本全体で売上高が2割減った場合、各社の営業利益はほぼ全額が吹き飛ぶ計算になる。現実にはコロナ危機にもかかわらず業績を伸ばしている企業もあるので、すべの企業がダメになるわけではないが、平均値で利益がゼロになるということは、2021年3月期決算で大幅な赤字に転落する企業が増えることを意味している。

 これまで各種の支援金や銀行の追加融資などで何とかキャッシュフローを維持してきた企業も、3月の決算をきっかけに事業継続が難しくなるケースが出てくると考えられる。4月のような混乱はないだろうが、経済全体への悪影響という点では、年末から年明け、そして年度末にかけては緊迫した状況となるかもしれない

 事態がさらに悪化した場合、外出自粛といったハードな措置や給付金のような支援措置を再度実施するのか、それとも、経済を優先するのか、今の段階から政府は方針を固めておく必要があるだろう。すでに各種対策の効果やデメリットは分かっているので、前回と比べれば事前のシミュレーションは容易だ。感染状況が悪化してから、場当たり的に対策を決定することだけは避けるべきだろう。


非常事態に備えるソフトバンクグループ

 経済界も警戒を強めている。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、米紙の講演会にオンライン出演し、新型コロナウイルスについて「今後2〜3カ月は大きな状況悪化が起こりうる」との厳しい認識を示した。同社は最悪の事態に備えて、約8兆円の現金を手元に確保しているという。

 海外の状況はさらに悪く、米国では感染拡大が止まらない状況となっている。米国の製薬会社2社がワクチン開発において有効な治験結果を得たとの報道もあり、株式市場は好感しているが、ワクチンは実際に投与してみなければ効果があるのかは分からない。また、実際に接種を開始できるのがいつになるのかはまだ分からないので、ここ数カ月で事態が劇的に改善する可能性は低いだろう。

 こうした状況を総合的にふまえ、孫氏は「短期では悲観している」と発言したものと思われる。

 感染拡大がとまらない場合、政府が外出自粛を要請しない場合でも、消費者の行動は抑制的になるので、企業活動には逆風が吹く。年末や年度末において資金ショートが発生したり、決算をきっかけに事業継続を断念する事業者が増える可能性があるので、政府や企業はそれを前提に対策を実施しなければならない。

 仮に今回の感染拡大が長期化する場合、Go Toキャンペーンの継続は難しくなる。こうした中で経済を回していくためには、デジタル化など非接触を前提とした分野へのシフトを促す施策が必要だろう。IT化などハード面での支援に加えて、労働者のITスキル獲得など、生活支援とスキル獲得をセットにした支援策を検討すべきである。

 また最悪の事態となった場合、再度、外出自粛を実施するのか、また、支援策の規模や財源をどうするのかについて議論を行い、年内までにおおよその方針を固めておく必要があるだろう。

筆者:加谷 珪一

JBpress

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