日産に続きダイハツも、日本は「シリーズハイブリッド」大国に?

12月3日(金)6時0分 JBpress

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 ダイハツ工業は2021年11月1日、コンパクトSUV「ロッキー」と、トヨタ自動車にOEM(相手先ブランド製造)供給している「ライズ」の一部改良を行い、ハイブリッド車を追加した。

 ダイハツのハイブリッドシステムの名称は「e-SMART HYBRID」(イースマート・ハイブリッド)という。技術的には、エンジンを発電機のみとして使いモーター駆動するシリーズハイブリッドだ。


日産「e-POWER」は日本市場向けだった?

 シリーズハイブリッド車は、日産が先行して日本でシェアを拡大している。2016年から「ノート」にシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載して市場導入すると、ノートがサニー以来約30年ぶりに日本市場で車種別の月販販売台数トップになるなど、日産にとって日本市場での新たな武器となっている。

 直近では2020年末に第2世代e-POWER搭載の新型ノートを導入したほか、SUV「キックス」やミニバン「セレナ」にもe-POWERを採用し、日産の主力技術として日本では定着している。

 一方、海外に目を向けると、現時点で日産は、ルノー・日産・三菱アライアンスにおける自社の役割分担をもとに、タイや中国など一部の国や地域でのe-POWER導入を示しているに過ぎない。

 2016年のノートe-POWER導入期に試乗会で話を聞いた日産のエンジニアは、「あくまでも日本市場向けであり、海外向けの商品展開は視野に入れていない」と発言していた。当時の日産はゴーン体制下で、各モデルのフルモデルチェンジまでの期間が他社と比べてかなり長く、またEV「リーフ」の販売実績が当初の目論見よりもかなり少ないという状況だった。そのため日産としては、リーフで培った電動化技術を当時の小型車向けエンジンに活用して、効率的に電動車事業のパイを広げる必要があった。

 あくまでも個人的な印象だが、当時の日産関係者らの雰囲気からは、ノートe-POWERの販売数は限定的という予測があったように思える。実際、その後の販売の好調ぶりにかなり驚いている関係者が多かった。

 また、当時、全国各地のトヨタ販売店を取材すると、「まさかプリウスやアクアの顧客がノートに流れるとは思っていなかった」という声を数多く聞いた。販売店によると、「プリウスはハイブリッドだけど、ノートe-POWERは電気自動車の一種だ」としてトヨタと日産の技術の違いを認識している顧客も少なくなかったという。

 確かに日産は、リーフで培った電動化技術をe-POWERの開発に応用していた。だが、初代e-POWER用のリチウムイオン2次電池はリーフ用とは異なるタイプで、製造メーカーも違っていた。e-POWERのヒットは、むしろマーケティング戦略が奏功した部分が大きいと言えるだろう。


日産が掲げる「電動化」目標

 日産は11月29日に公開した長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の中で、2030年度までに15車種のEVを含む23車種の電動車をグローバルで導入し、日産とインフィニティあわせて電動車普及比率を50%以上にするという目標を掲げている。

 また、2030年度に向けた中間地点として、2026年度までにEVとe-POWERを20車種導入する。仕向け別では、電動化比率は欧州が75%以上と高い。これは、EU(欧州連合)が欧州グリーン政策の一環として「2035年までに欧州内で新車の100%を電動車(EVおよび燃料電池車)とする」目標を打ち出しているからだ。

 一方、e-POWERの普及が先行している日本ではEVと合わせて「55%以上」を目標とし、野心的な数字という印象はない。また、政府が新エネルギー車(NEV)政策を進めている中国においても、「中国市場を先読みすることが難しい」ことから「40%以上」という比較的低めの数字にとどめたようだ。

 米国では「EVのみで40%以上」とした。「アメリカではまだe-POWERを受け入れる市場環境になく、今後の市場動向を注視していく」(内田誠社長)と慎重な姿勢を示している。この「市場環境」とは、法規制への対応というよりは、日産の販売店や消費者のマインドだと考えられる。今のところ米国市場では、リーフや新たに導入するアリアによって“日産の電動化=EV”というイメージが強い。日産としてはその方向を当面維持する構えがあるのだろう。

 話を日本市場に戻すと、日本の消費者にとってe-POWERは、燃費の良さ、EV技術の応用という先進感、そして価格とのバランス感が良い、といった商品イメージが強いと思われる。日産はその路線で第2世代e-POWERのモデル拡大を進めることになるだろう。


トヨタグループが築く全方位体制

 一方、ダイハツのe-SMART HYBRIDは、ダイハツの開発責任者が「良品廉価」を強調するように、ダイハツがトヨタの電動化技術の知見を学びながら、モーター/ジェネレターとリチウムイオン2次電池のセル/モジュールをトヨタと共通化することでコスト削減を狙ったシステムである。

 筆者は先日、e-SMART HYBRID搭載の「ロッキー」に公道で試乗し、ダイハツのエンジンおよびハイブリッド開発者らと意見交換したが、e-SMART HYBRIDの大まかなシステム構成は日産e-POWERに近い。ただし、開発思想は日産とは大きな違いがある。詳細は改めて記したいが、その違いは両システム搭載車を実際に乗り比べることではっきりと分かる。

 トヨタグループは純エンジン車以外に、プリウスなどのシリーズ・パラレル方式ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、超小型EV、そして水素や合成燃料(eフューエル)を用いた内燃機関車を展開している。今後、2050年カーボンニュートラルに向けて、それらのラインナップにe-SMART HYBRID車を加えた全方位体制で望むことになるだろう。

筆者:桃田 健史

JBpress

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