「半分グレてる」どころでない、変容する「半グレ」

12月4日(水)6時0分 JBpress

*写真はイメージです

写真を拡大

(廣末登・ノンフィクション作家)

 暴力団の勢力が衰退するとともに、半グレによる事件が増えているように思える。暴力団というオオカミが、暴力団排除条例(暴排条例)で身動きが取れないため、半グレという野良犬の活動領域が拡がった。とりわけ、オレオレ詐欺の火付け役は半グレであった。

 溝口敦氏の著書『詐欺の帝王』をみると、当時は半グレ予備軍のチーマー等が様々な詐欺に関与していた様子がうかがえる(文藝春秋、2014年)。このチーマーやカラギャン(カラーギャング)、暴走族などの不良が、やがて「半グレ」とカテゴライズされていった。


半グレとは何者なのか

 石垣島に半グレが進出し、繁華街で悪質な客引きや店舗への脅迫が相次いだ2019年9月、琉球新報は、同月14日の新聞紙面で、半グレを以下のように定義している。

<半グレ 暴力団などに所属せずに犯罪行為を行う集団。元暴走族や同じ出身地域の先輩後輩でつながるメンバーで構成されている。違法賭博や特殊詐欺などの犯罪行為で資金を得ているとみられる。得た資金で合法的に会社経営を行っているグループもいるとされる。暴力団と一般人の中間を意味する造語で「半分グレてる」や黒と白の間を意味する灰色(グレー)などが命名の由来とされている>

 この琉球新報による半グレ定義にケチをつけるつもりは筆者には毛頭ない。しかし、十把一絡げ的な「半グレ」というネーミングが、「半グレについて何だかわかりにくい感」を作り出している。だから、今年7月に放送されたNHKスペシャル『半グレ 反社会勢力の実像』が、制作者の意図から離れ、彼らを若い視聴者に宣伝する結果となったのかもしれない。

 実際、他のメディアでもこの番組に登場した「半グレ」について、「高級ブランド品で固めた自身のコーデや毎晩飲み歩く派手な姿を(インスタに)投稿し続ける・・・『今風』で、不良漫画から飛び出してきたようなアウトローといった印象を視聴者はもったはずだ」と述べられている(NEWSポストセブン 8月17日付け記事)。

 筆者から言わせると、「半グレ」は半グレに非ず。彼らは「グレグレ」「全グレ」であり、れっきとした犯罪・非行的集団である。

「半分カタギで、半分犯罪者」などという輩は存在しない。オレオレ詐欺やアポ電強盗が「ハーフクライム」なら、「フルクライム」とは余程凶悪な「強のつく」犯罪しか残らなくなってしまう。それならば、路上で殴打した、女性にわいせつな行為をした等は犯罪の内に入らなくなってしまうのか。そんな道理が通るはずがない。犯罪に「半分」も「全部」もない。故意または過失によって他人に何からの損害を与える行為は、全て不法行為であり、れっきとした犯罪なのである。

 暴力団の取材を重ねるうち、昨今の裏社会に言及する上では、半グレのことも避けて通れなくなってきた。現時点では学術的な研究ではないので、以下では、筆者がインタビューした限定的な範囲で半グレの実態を要約し、筆者なりの見解を述べたいと思う。


半グレの定義を整理する

 半グレという用語が定着したのは、ノンフィクション作家の溝口敦氏が、新書で『暴力団』(新潮新書、2011年)を著し、半グレについて言及した頃からではないかと考える。溝口氏は、同書の第六章 代替勢力「半グレ集団」とは——において、半グレを次のように解説している。

「半グレとは暴力団から距離を置くものであるといいます。その理由は、暴力団に入るメリットがなくなったからです。若い暴力団員が貧しくなり、格好良くなくなりました。暴走族を惹きつける吸引力を無くしています。暴走族としても、今さら暴力団の組員になっても、先輩の組員がああいう状態では、と二の足を踏みます……暴力団に入ると不利なことばかりですから、わざわざ組員になって、苦労する気になれません。それより暴走族のまま、『先輩——後輩』関係を続けていた方が気楽だし、楽しいと考えます」

「彼らがやっているシノギは何かというと、たいていのメンバーが振り込め詐欺やヤミ金、貧困ビジネスを手掛け、また解体工事や産廃の運搬業などに従っています。才覚のある者は、クラブの雇われ社長をやったり、芸能プロダクションや出会い系サイトを営んだりもしています」

「こういうシノギに暴力団の後ろ盾がある場合もあるし、ない場合もあります。ですが、ほとんどのメンバーはない方を選びます。下手に暴力団を近づけると、お金を毟られるだけですから、できるだけ近づけたくないのです」と。

 この本を溝口氏が執筆していた時期、すなわち、2010年11月には、市川海老蔵殴打事件が六本木で発生した。実行犯は関東連合と呼ばれる半グレ集団である(当時)。彼らは、東京の六本木に活動拠点を置く、暴走族・関東連合のOBからなるグループである。

 この事件以降、「半グレとは暴力団なの?」というような感じで、世間の注目が集まった。その時、世間の疑問に答えたのが、溝口敦氏の『暴力団』だった。

 この半グレという不良集団は、以降、勢力を伸長させ、様々な問題を起こしている。筆者が2014年に助成金をもらって、暴力団離脱者の研究を行った時も、関西で様々な半グレと袖ふれあった。そして、2018年から2019年にかけて、福岡県更生保護就労支援事業所の所長として、老若男女の刑余者と接し、時代の流れの中で、半グレというものが、溝口敦氏が紹介した当時の姿とは異なってきているのではないかという疑問を有するに至った。


半グレの種類

 昨今、マスコミや新聞に書かれている「半グレ」像が、どうもズレているような気がする。10代の不良も、20代の青年も、40代の元暴も一緒くたにして、半グレと括るのは、ちょっと乱暴であり、大雑把すぎるのではないかという考えに至った。

 筆者が様々なフィールドにおいて面談し、見聞きした範囲から、半グレとは少なくとも以下の4パターンが存在するのではないかと考える。①旧関東連合や怒羅権(ドラゴン)に代表される筋金入りの半グレ(現在は30代から40代の年齢)。②オレオレ詐欺の実行犯(これは、昨今では暴力団の手先となっているケースが多いと聞き及ぶ)。③正業を持つ半グレグループ。④元暴アウトロー、4パターンである。

 最後の元暴アウトローは、暴力団を離脱したものの正業に就けず、違法なシノギで食いつなぐ者だ。

①関東連合や怒羅権に代表される半グレに関しては、これは暴力団になるのはちょっと面倒くさいが、十代の頃の暴走族やグレン隊の非行集団の仲間関係を引きずり、どちらかというと、暴力団に近い「準暴力団」的な活動(ミカジメや薬物関係、債権回収など)をシノギとしている集団。先述の溝口敦氏のいう「半グレ」がこれにあたる。

②に関しては、(少し反社がかった)一般人の若い人。カネが欲しく、真っ当に働きたくないが、暴力団や①カテゴリーの半グレにもなりきれない集団。年齢的にも10代から20代前半位の構成員で、比較的若い集団である。この集団が暴力団の走狗となってオレオレに加担する傾向がある。現在、筆者が保護観察などで扱う少年の多くが、このパターンである。

 ただし、このカテゴリーは、①カテゴリー「半グレ」の実行部隊として使嗾されるケースがあるようだ。①カテゴリーの構成員から「誰かこのシノギやる奴いないか」と言われ、「オレらがやります」といった具合でシノギの実行を請け負い、犯罪で得たカネの一部を上納する。もし、そのシノギでしくじったら、トカゲの尻尾切りで、逮捕、即退場となる使い捨てにされるグループ。業界では、彼らのことを「つまようじ」と呼ぶむきもある。先が曲がったら捨てようか——という、消耗品的な人材だからだ。

 2019年11月10日の静岡新聞に、<詐欺「受け子」枯渇か 外国人や女性、少年に移行 警察の包囲網強化で人材、資金不足>という見出しの記事が掲載された。この記事によると、「静岡県内で発生した特殊詐欺事件で『受け子』と呼ばれる現金やキャッシュカードの受け取り役が最近、首都圏の若者から、被害者の近隣などに住む少年や女性、外国人に移行する傾向が強まっている。背景には県警などの包囲網の強化で詐欺グループが人材と資金の不足に陥り、コストの削減を図りながら組織末端の『受け子』を賄う窮状が透けて見える・・・他県警が逮捕した受け子らに行った調査では、半数以上が約束された報酬を受け取っていないと回答。詐欺グループが末端を軽視している実情が浮き彫りになった」とあり、この最新の記事をみても、筆者の分類が肯定されている。

③これは、上記2つに比較すると、マトモな半グレといえる。正業を持っている集団。あるいは、地下格闘技のような団体に所属し(していた)、ITベンチャーの若い社長などのボディーガード的な役割から、徐々にIT関係に詳しくなり、ビットコインのような取引、アダルトサイトの運営などで食っている小集団を指す。ただし、彼らは、「地下格闘技」などを通じて、①カテゴリーの半グレにもなり得る集団といえる。

④最後の元暴アウトローは厄介な存在である。近年、暴排条例の影響により、暴力団離脱者は増加傾向にある。しかし、職業社会に復帰して更生する人数は僅少だ。社会復帰できなかった、暴排条例の元暴5年条項で暴力団員等とみなされ、行き場のない彼らは、結局、覚せい剤の売買や闇金、オレオレ詐欺、下手をすると①カテゴリーの半グレの配下となったりして、悪事を重ねることになる。

 この④カテゴリーの半グレ=元暴アウトローがなぜ厄介かというと、それは犯罪のプロである暴力団に所属していた過去があるからである。彼らは、そこで蓄積された人脈や知識を有するがゆえにプロの犯罪者といえる。

 警察庁によると、2015年に離脱した元組員1265人のうち、その後の2年間に事件を起こし検挙されたのは325人。1000人当たり1年間に128.5人。これは全刑法犯の検挙率2.3人と比べると50倍以上になる。元暴のアウトロー化を否定できない現実がある。


半グレについて真剣に調査・研究する時期にきている

 こうした性質が異なるグループを、十把一絡げにして「半グレ」とカテゴライズするから、一般の人には、どうも分かりにくい。反社集団としての対策も、①から④では、それぞれ異なったものとなる筈である。

 溝口敦氏が「半グレ」という用語を用いた2011年、この年には全国で暴排条例が施行され、「反社」カテゴリーに含まれる裏社会への風当たりは強まった。そして、暴力団が旧来のように公然とシノギができないことから、半グレは様々な形をとって違法なシノギを行う人間を吸収してきた。

 さらに、筆者が得た数々の証言では、暴力団と半グレのシノギは共有され、短い期間で、違う形態へと変異している。特殊詐欺ばっかりをマークしていると、その裏では違うシノギが新たに顔を出すというように、シノギは変化し続けているのである。

 安心・安全な社会について考えるのであれば、いま、このタイミングで、新たな裏社会の住人として暗躍する「半グレ」について、真剣に調査・研究すべきではないだろうか。

 元暴アウトローを生む現状、半グレのシノギの実態などに関する詳細は、筆者が来年の陽春の刊行を目処に、半グレ・メンバーの声をリアルに紹介する新刊を準備中であるので、ご期待頂きたい。

筆者:廣末 登

JBpress

「半グレ」をもっと詳しく

「半グレ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ