「環境満足度」の追求が生んだ社員の公平な評価制度

12月4日(水)6時0分 JBpress

多様な働き方へ対応した評価方法は、どのようにして生まれたのか。

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(小林 麻理:ライター、社会保険労務士)

 多様な人材活用を掲げ、週4日や時短勤務の従業員が正社員として働くITコンサル企業のライフ&ワークス。同社の設立母体となるオデッセイでは、前編で触れた評価制度を含め、従業員の給与や成長、働く環境などに着目した「社員環境満足度」の要素を定義し、その実践を目指している。

 このように、「社員が環境に満足すること」に両社の社長を務める秋葉尊(あきば・たける)氏が着目し、そのための制度設計を意識し始めたのは10年以上も前のことだという。後編では、その経緯をインタビュー形式でお伝えする。

【前編】「作業データと生産性で時短・週4日社員も公平に評価 」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58303)


教育や書籍ではコンピテンシーは高められない?

——「社員環境満足度」に着目し、さまざまな施策を行われてきたきっかけは、何かあったのでしょうか?

秋葉尊氏(以下敬称略) 我々の企業活動の理念であり目標は、人を育てるコンサルティング会社として「お客様に満足いただけるサービスを提供する」ということです。それを実現するための方法として、コンサルタントのナレッジ整備や教育機会の充実など、さまざまなことを考えました。

 同時に、それらはいずれも手段であって本質的なことではないように私は感じていました。そして突き詰めると、コンサルタントのコンピテンシーを高めることが、お客様満足につながるのではないだろうか、というふうに考えるようになりました。

 コンピテンシーとは、「高い成果を継続的に発揮するための行動特性」と私は理解しています。コンサルタントであれば、プレゼンテーション力や表現力の高さなど、お客様や周囲の人から優秀だと評価されているコンサルタントが共通で持ち合わせているものです。そこで、コンピテンシー評価をまずは取り入れました。

 ただ、今度は「そのコンピテンシーを高めるにはどうしたらいいのか」ということで壁に直面したのです。当時、専門家も含めてさまざまな人に相談しましたが、「持って生まれたものに近いので、教育や書籍を通じて高めるのは難しい」と言われることがほとんどでした。


公平性を欠く評価ではやりがいを感じられない

——たしかに、表現力などを高めるのは難しいものですし、「物事を論理的に理解して相手に分かりやすく説明する」といったコンサルタントのセンス的なものであれば、なおさらのように思います。

秋葉 明確な答えが見つからない中で、「あくまで可能性ですが」という前置きでアドバイスいただいたのが、「コンピテンシーは、人間が置かれている環境への満足度が高まったときに、向上する」ということでした。

 自分が満足できる環境で働いていれば、やる気や働くモチベーションは高まり、自分が持っている力を最大限発揮しよう、と思うのは、なんとなく分かる気がしました。

 そして、従業員の環境に対する満足度を高め、自身のモチベーションで自分の力を最大限発揮してもらえれば、我々が実践したい、お客様に喜んでもらえるサービスにつながるんだ、と私は考えました。それで、従業員の環境満足度を高めよう、と思ったわけです。

——その一環として、評価制度の見直しもされたということでしょうか。

秋葉 そうです。自分が一生懸命頑張って、それが公平に評価されたら、従業員はやりがいを感じるでしょう。逆に言うと、訳の分からない評価基準で、自分より力がないと思われている人のほうが高い評価を受けたら、モチベーションは下がって当然だと思います。

 その点、コンピテンシー評価は(性格に着目し数値で表しづらい)定性的ものなので、これだけでは、従業員の納得感や公平感を得るには十分でないと考えました。 

(数値で表せる)定量的な評価をしなければいけない。そこで取り入れたのが、「標準工数(一定のタスクに対して標準でかかる時間)」をベースとした「生産性(どれだけ効率的に仕事をしているか)」の指標です。


働き方にかかわらず、「仕事」を評価する

——社員環境満足度を高めるための制度づくりと定着化は、一朝一夕では難しいと思われるだけに、10年以上前から取り組まれていたことの意義を感じます。

秋葉 そうかもしれません。先日視察した世界最大のHRテック(Human Resource × Technology)イベントである「HR Technology Conference & EXPO」でも、今年の最大のテーマは「エンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience)」でした。従業員にいかに良い経験をさせるかが大事で、そのことが会社を伸ばす、といった内容です。これは、我々が10年以上前からずっと考えてきたことと似ているなと思いました。

——「従業員に良い経験をしてもらう」には、制度面以外のフォローも大事ですね。ライフ&ワークスで働く育児中の女性社員の方が「子どもの病気でお休みする際にかけられた『気にしないで』という言葉が、何よりありがたかった」とお話されていた*1のが、とても印象的でした。

秋葉 たしかに、急な休みというのはあるでしょう。その場合でも、あらかじめ決めた計画内で仕事を完了できるように生産性を上げてリカバリーしているケースが多いようです。

 もちろん我々も、時短などで働く社員がプロジェクトに入って活躍することができるのか、最初は不安がありました。でも、実際にやってみたらできた、というわけです。そして、働き方にかかわらず、きちんと成果を評価すれば、社員は伸びるということを改めて実感しています。

 時短で働くライフ&ワークスの社員と面接をした際、「フルタイムで働いているときより、充実している」という人が複数いました。「会社から離れたら家のこともやり、そしてコンサルタントとして働けることに、大きなやりがいを感じている」と言ってもらえたことは、大変嬉しかったです。今年、新たに導入した在宅勤務制度も、喜んでもらえているようです。

 現在は、時短で働く従業員は育児中の女性ばかりですが、今後、男女問わず、介護中で時短勤務をしたいという方や、シニア層になったので週4日で働きたい方など・・・さまざまなライフステージにある方に当社で活躍していただきたいです。

*1:https://ikuwork.net/archives/1438

筆者:小林 麻理

JBpress

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