元夫も子どもも発達障害、ゴキブリ部屋から脱出した「ADHDのハウスキーパー」

12月4日(水)16時30分 週刊女性PRIME

※画像はイメージです

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 現在100人に3〜7人は発達障害の一種であるADHD(注意欠如・多動性障害)だと言われている。診断を受けていない、受けても確定診断がおりなかった「うやむや」な層をふくめると世の中にはかなり多くのADHD傾向の人が存在することになる。東京都の主婦でこのほど、『「ADHD」の整理収納アドバイザーが自分の体験をふまえて教える!「片づけられない……」をあきらめない!』(主婦と生活社)を出版した、西原三葉さんもそのひとりだ。

■「カサンドラ症候群」に苦しむ



「学生のころから、忘れ物やケアレスミスが多かったのですが、社会人になると、計算が合わなかったり、人の名前が覚えられないなどミスを連発。自分を責めるあまり、うつになり入社1年で退職し、そのころ付き合っていた彼と結婚。彼は定職につかないアルバイトだったのですが、結婚に逃げ込みたい一心で迷いはなかったのです」(以下、カッコは西原さん)

 その結婚相手はASD(自閉症スペクトラム)で、独特のこだわりがある人だった。

「定職につかないアルバイトで貯金ゼロ。自分の生活のリズムが狂うことを極端に嫌う人でした。私が高熱を出してフラフラになっても、朝5時ちょうどに朝食を出さないと不機嫌に。次々と3人の子どもが生まれたのですが、部屋が乱れていると激怒されて……」

 さらにわが子にも、自分と同じ発達障害の傾向がみられた。精神的に追い詰められていくなか、精神科で「ADHD」の診断を受ける。そして、『カサンドラ症候群』に陥っていることにも気づいた。

「カサンドラ症候群とは、主にパートナーや家族がASDであるために人間関係を築くことがむずかしく、不安や抑うつといった症状が出ること。正式な病名ではないので、精神科や心療内科にかかると、適応障害やパニック障害と診断されることも。物理的に距離をおくことで回復することがありますが、多くの人は自分が当事者であることに気づいていないことがほとんどのようです」

 西原さんは、結婚22年目で夫との関係に限界を感じて離婚。母子4人での暮らしをスタートさせた。



■「片づけが苦手」を克服



「ある日、わが家にゴキブリが大量発生したのです。ふとベランダに放置した粗大ゴミ(めんどくさくて、2年ものあいだ家具を雨ざらしにしていた)に目をやってみると、なにか黒いものが動いている。

 木の板をはがした瞬間、そこにはゴキブリの巣! ゴキブリがサーッと散っていく恐ろしい光景を見た瞬間、私のなかで何かが変わりました。発達障害で、いやなことはとことん先延ばしにしてしまうこと、部屋を片づけられないこと、それをなんとかしようと。ゴキブリを大量発生させてしまう汚部屋に住み続ける私に、生きている価値なんかない。そう思ったのです」

 そのころ、近所にADHDで悩む人たちの当事者たちの会があることを知った。困っていることを相談し、解決策を一緒に考える。「自分ひとりじゃない」と思うことで気持ちがだいぶラクになったという。同時進行で、臨床心理士のもと、認知行動療法を学び始めた。学ぶうちに、ADHDタイプでも失敗しない「片づけ法」を編み出し、自宅で実践。「片づけられない自分でも、片づけられるようになった! 自分と同じように片づけられず苦しんでいる人の役に立ちたい」と思い、ボランティアで友人・知人宅の片づけを請け負い、腕を磨いた。そして世の中には「片づけられない主婦」がとても多いことに衝撃を受けたという。

「もともとの性格で片づけが嫌い、できないっていう人もいるんですけど、私みたいに“ADHDが原因で片づけられないのでは?”という主婦も実は多くいました。私がそうだから、感覚的にわかってしまうんですね。ご自身で自覚している場合もあるし、していない場合もありますが、共通していたのは、自分に自信がないこと。

 片づけられない私なんて、主婦として失格。母親として失格。部屋が汚いということが、人生全般への失意につながっている。かつての私と同じような人たちの力になりたいと強烈に思いました」

 そして、長年つとめていた出版社を退職。「片づけ」を天職にしようと考え、最短の6か月で、整理収納アドバイザー1級の資格を取得。さらには産業カウンセラーの資格も取得し、家事代行マッチングサービス『タスカジ』でハウスキーパーの登録をスタート。資格取得にかかわる費用は、元夫が病死した際、子どもたちに支払われた保険金を「お母さんはこれまで、ひとりで苦労してきた。好きなように使っていいよ」と言って子どもたちが出してくれた。子どもたちのやさしさが、身にしみたという。

「当時はシングルマザーで、元夫が残した住宅ローンもまだ返せていなかった。せっかくなれた正社員の職場を投げうつなど、周りには無謀なチャレンジだと反対されました。でも『タスカジ』に登録した直後から、ADHDを公表している私をわざわざ指名してくださる方が多くいるんです。そのおかげで、なんとか生活できています」

依頼を受けて家を訪れると、クライアントからは「もしかして自分はADHDかもしれない」「部屋が汚いことで家族から責められてつらい」といった悩みを次々と打ち明けられるそう。「片づけられない苦しみを初めて理解してもらえた」と泣き出す女性もいるという。

「私、思うんです。片づけは“心のリハビリ、人生のリカバリー”なのだと。片づけが苦手だと、たくさんのエネルギー、時間、お金、プライドまで損失してしまう。自信を回復して、人生を卑屈にならずに送ってもらいたい。ひとりでも多くの人の片づけサポートができたら、と思います」



PROFILE

●西原三葉(にしはら・みわ)●整理収納アドバイザー1 級、産業カウンセラー、栄養士、ライフオーガナイザー1 級資格保有。食品会社勤務後、出版社に就職。「片づけられない」に長年悩んだADHD当事者だったが、認知行動療法を受けて克服。現在は退職し、家事代行マッチングサービス『タスカジ』に登録、「片づけのプロ」として活動している。息子ひとり、猫5 匹と都内在住。カウンセリングルームAUBE代表。

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