太平洋・インド洋でも覇権を求め始めた中国

12月5日(水)6時0分 JBpress

11月28日に台湾海峡を通過した米補給艦「ペコス」(資料写真)。(c)LEILA GORCHEV / AFP〔AFPBB News〕

 米国のドナルド・トランプ大統領は今年に入り、中国封じ込めを狙いとするとみられる政策を次々に打ち出した。

 同大統領は、年初から対中貿易戦争を発動し、10月20日にはINF(中距離核戦力)全廃条約離脱を表明している。

 今年10月4日のマイク・ペンス副大統領によるハドソン研究所での演説では、対中対決姿勢が鮮明に打ち出された。

 米中対決の余波は、日豪印も巻き込み、南太平洋、インド洋、東シナ海にも及んでいる。


激しさを増す南シナ海での米中の鍔迫り合い

 特に、南シナ海での米中の鍔迫り合いは激しさを増している。

 ペンス演説でも、今年9月30日中国海軍艦艇が南シナ海で航行の自由作戦を実施中の米軍艦艇「ディケーター」に「45ヤードまで接近した」ことを引用して次のように断言した。

 「(中国側の)そのような仮借ない妨害があっても、米海軍は、国際法が許し米国の国益上必要とされるところではどこでも、飛行し、航行し、行動し続ける。我々は脅しにおじけづくことはないし、退くこともない」

 これに対し中国側は早速、米側に同作戦の中止を要求している。

 今年11月2日のワシントンで開催された米中閣僚級外交・安全保障対話の共同記者会見において、楊潔篪(ヨウケツチ)中国共産党政治局員は、「『航行の自由』の名の下、(米国が)軍事行動を取ることは許されない」と述べた。

 中国にとり、南シナ海とインド洋の戦略的価値は極めて重要である。

 中国は、南シナ海を「核心的利益」と表明している。南シナ海は、中国の貿易ルート、原油輸入ルートが集中する、地政学的には米国にとってのカリブ海のような地位にある。

 しかも日本、韓国、台湾の貿易ルート、原油輸入ルートとも重なっており、これらの米国の同盟国、友好国の海上輸送路は米第7艦隊により警護されている。

 米国の覇権に挑戦する中国としては、米国の軍事力によりいつでも封鎖されかねない南シナ海に通ずる死活的なシーレーンの安全は、何としても自らの軍事力により防護しなければならない。

 中国の貿易特に原油輸入ルートは南シナ海からマラッカ海峡を経てインド洋につながっている。その後は、

①ペルシア湾から陸路を経て地中海に至るルート
②イエメン、紅海からスエズ運河を経て地中海に至るルート
③マダガスカル、喜望峰から大西洋、米大陸に至るルート

 に分かれ、航路帯としてリスクは分散可能である。しかし南シナ海からマラッカ海峡、インド洋に至るルートには代替できる航路帯は乏しい。

 マラッカ海峡については、ロンボク海峡とスンダ海峡が代替ルートとして利用できるが、いずれも狭く航路の安全性にも問題があり、平常時の利用度も低いため、代替航路としては限界がある。

 それだけマラッカ海峡は、リスク分散が困難で、中国にとり死活的に重要な航路帯、逆に言えば最も脆弱な航路帯になっている。


南シナ海の米国にとっての戦略的価値と米中対決の行方

 他方の米国にとっては、太平洋と大西洋の航行の自由を確保できれば、貿易ルートは確保できる。

 米国にとり、南シナ海とインド洋の航行の自由確保は、国際公共財の保護者としての覇権国の威信を示す、海空軍力の展開海域としての戦略的価値はあっても、死活的国益のかかる要域ではない。

 このような国益上の価値の違いを考慮すれば、中国にとり死活的国益のかかる南シナ海のような海域において、米国が海空軍力を行使して中国の地域覇権に挑戦することは、米国にとり得られる国益上の価値と犯すリスクを比較した場合、合理的選択とは思われない。

 米中対決の様相は強まっているものの、米中ともに現在の情勢の下では、本格的な直接衝突は望んでいないであろう。

 米国は当面、移民対処やイラン問題を優先しなければならず、中国は対米貿易戦争への対応と国内経済の再建、特に国営企業の構造改革とそのための資金調達に追われているのではないかと思われる。

 12月1日にG20に合わせて行われる米中首脳会談では、双方の歩み寄りが成立し、当面の危機は回避された。

 貿易戦争で対米報復のための決定的対応策を欠き、国内経済や技術発展に打撃を受けている中国が貿易戦争では譲歩した形だ。

 2018年11月17日付『日本経済新聞電子版』によれば、トランプ米大統領は2018年11月16日に、中国との貿易戦争を巡って「中国は142項目の行動計画を提出してきた」と記者団に述べている。

 また中国は、それまで拒んできた米空母の香港寄港にも許可を出した。すでに中国側は米国に対し、このような譲歩案を提示している。

 これに対しトランプ大統領は、「大きな懸案がいくつか残っており、現時点ではまだ受け入れられない」と述べ、中国側に一段の譲歩を促している。

 このように現時点では、トランプ大統領は譲歩姿勢を見せていない。

 しかし米国内では、中国からの輸入品高騰に対する反発なども出ており、米側にも中国側ほどではないが悪影響が出始めている。

 他方の南シナ海での「航行の自由作戦」継続問題では、米側が実質的に対中挑発を避けて妥協点を探ることになるとみられる。結果的に米中双方の痛み分けの形で当面は落ち着く可能性が高い。

軍事戦略の観点からの南シナ海情勢の分析と
米国のINF全廃条約離脱の狙い

 軍事戦略的に見て、中国にとり南シナ海は中国本土の南部を守る緩衝地帯としての価値を持つ要域である。

 他方の米国としては、オフショア・コントロール戦略をとり、第1列島線上の日本、台湾、フィリピンなどの協力を得て、中国を封じ込めておけばよいのであり、南シナ海への侵入と制圧は必ずしも不可欠ではない。

 その結果、米中間では、第1列島線を中にして対峙し睨み合う態勢で、力の均衡が成立するであろう。

 米中間で仮に偶発事故や小競り合いに端を発する局地紛争があっても、指導部間の早期話し合い解決になるであろう。

 核戦略の観点から言えば、中国が南シナ海から直接米本土を攻撃できる潜水艦発射弾道ミサイルを搭載した新型SSBNを開発し南海艦隊に配備したとしても、第2撃にしか使えない自衛的な核戦力であり、米国に対する抑止力にはなっても挑発的な先制打撃力にはならない。

 また、南シナ海を取り巻く沿岸部のうち中国領は海南島正面のみであり、他の3正面はベトナム、台湾、フィリピン、マレーシアなどの敵性国か中立的諸国に取り囲まれている。

 そのため、南シナ海に展開している中国の原潜は、有事には容易に南シナ海域内に封じ込められ、あるいは米国とその友好国の対潜作戦により制圧されるとみられる。

 南シナ海における中国の脅威の源泉は、南シナ海の海空域を中国が数百発の各種ミサイルでカバーしており、米空母も容易には入れない地域になっていることにある。

 南シナ海の軍事基地は脆弱だが、トリップワイヤーとして機能し、南シナ海の基地を攻撃すれば、海南島とその背後の南部戦区の反撃を招くことになると予想される。

 全面核戦争になれば米国は最大1億人の損害を中国に与えられるかもしれないが、米側も数千万人から5000万人程度の損害を受ける恐れがある。

 そのため核戦争にエスカレートするような本格的軍事対決のリスクは、米中ともに侵せない。つまり米中は核手詰まり状態にある。

 さらに、中距離核戦力(INF)については、INF全廃条約を締結していない中国が、西太平洋やインド洋北部においては、一方的優位にある。

 この中距離核戦力による脅威のため、日韓台、グアム、インド洋などに展開する米軍の前方展開戦力が危険にさらされ、米空母の行動が制約を受ける状況になってきている。

 この中国の中距離核戦力の優位性を覆すことが、トランプ政権がINF全廃条約離脱を一方的に表明した最大の理由と思われる。

 ロシア側の射程500キロ以上とみられる地上配備核ミサイルの展開というINF全廃条約違反問題もある。

 米国は2014年、ロシアがINF全廃条約に違反して、核弾頭搭載可能な新たな巡航ミサイルシステムの開発を行っていると非難していたが、ロシアはこれを否定してきた。

 米国務省は2017年、ロシアが開発しているのは、核弾頭の搭載が可能な地上発射型巡航ミサイル「9M729」だと特定し、ロシアのINF全廃条約違反を非難していた。

 一方でロシアは、米国がNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国に配備しているミサイル防衛システムこそINF全廃条約違反だと非難した(Newsweek、2018年10月23日)。

 ジョン・ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)は、トランプ大統領によるINF全廃条約離脱表明直後の今年10月、モスクワに立ち寄り、ウラジーミル・プーチン大統領に直接、ロシアによるINF全廃条約違反に対する非難を伝えている。

 しかしそれと同時に、ボルトン補佐官は、中国の中距離核戦力がロシアのハートランドにも脅威となっていることを指摘している。

 このように米国は、中国の中距離核戦力の脅威をロシア側に訴え、核軍備管理交渉に中国を加えることに協力するよう、ロシア側に呼びかけている。

 すなわち、米国のINF全廃条約離脱表明の第1の狙いが、野放し状態の中国の中距離核戦力に制約を加えることにあるのは明らかである。

 それと同時に、中国の中距離核戦力に同様に脅威を受けているロシアに対し、軍備管理面での協力を呼びかけ、中露の分断を図るという外交戦略上の狙いもあるとみられる。

 日露間の平和条約締結に向けた動きも、米国の了解のもとで日本が対露融和策をとることにより、中露の連携を断ち切ろうとする、日米共同の中国孤立化戦略が発動されたものであろう。

南太平洋での米中の鍔迫り合いと
強まる日米豪の連携

 南シナ海での米中の覇権争いに関連し、南シナ海から中国が太平洋に出るに際しての最大の要域である南太平洋での鍔迫り合いも激しさを増している。

 中国は南太平洋の島嶼国に対し、外交関係を拡大して台湾を孤立させつつ、経済支援を強化し「一帯一路」戦略の拡大を目指している。

 2016年5月の台湾の蔡英文政権成立以降、中国はパナマ、エルサルバドル、ブルキナファソなどの台湾との国交断絶、中国との国交樹立を進めてきた。

 今年8月27日現在、台湾と国交を維持している17か国のうち、台湾と国交を持つ太平洋諸国は、ツバル、ソロモン諸島、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、キリバス共和国、ナウル共和国の6か国であり、中南米・カリブの9か国に次いで多い。

 それだけ太平洋諸国は、地政学的重要性と相まって、中国の重点工作対象になっている。

 今年8月19日(現地時間)のロイター通信は、2017年末、中国政府がパラオへの団体観光を禁止し、パラオがガラガラに空いていると報じている。

 しかしパラオは中国の圧力に屈することなく、台湾との国交を維持している。パラオのトミー・レメンゲサウ大統領は、「中国が要求する『一つの中国』の原則は我々の選択ではない」と言明している。

 習近平主席はAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議参加のためパプアニューギニアを訪問したが、冒頭から米国側の代表であるペンス副大統領と、「債務の罠」の有無や一帯一路の狙いをめぐり対立し、首脳の共同声明が発出されないという異例の事態が生じた。

 まさに、南太平洋での覇権をめぐり、米中の鍔迫り合いが生じている証左と言えよう。

 米国は中国が途上国を「債務の罠」に陥れようとしていると非難し、中国はそれを否定している。

 しかし、中国の海外の港湾に対する投資の秘められた狙いが、短期には中国企業による純経済的投資を装うが、最終的には中国海軍の「軍港化」することにあることは、中国側の文献にも明記されている。

(詳しくは拙著『軍拡中国に対処する 独裁国家に屈するのか』(勉誠出版、平成30年)参照)

 マラッカ海峡の脆弱性についても、南太平洋を友好国で固めることができれば、中国にとりロンボク海峡とスンダ海峡の安全性は高まり、マラッカ海峡の代替ルートとしての価値も高まる。それだけマラッカ海峡ルートの脆弱性も低下する。

 中国はフィジーのブラックロック、パプアニューギニアのマヌス島、またはバヌアツに軍事施設を得ようとしているとみられている。

 これら島嶼に中国が基地を獲得できれば、南太平洋における西側諸国の航行に影響が及ぶ。特に、マヌス島に基地を得られれば、グアムの米軍基地に中国海空軍がより接近できることになる。

 中国は2011年以降太平洋の島嶼国に13億ドル規模の低利融資または無償融資を行っており、オーストラリアに次ぐ2番目の支援国となっている。中でも中国が重点的に獲得工作を進めているのが、マヌス島である。

 今年6月パプアニューギニアのピーター・オニール首相は、中国がマヌス島の港湾整備への資金援助とパプアニューギニアに対する経済支援を増大し、影響力を強めようとしていると警告を発した。

 これに対抗しオ—ストラリアは、今年8月に政権交代があったにもかかわらず、直ちに対策を講じ、太平洋地域のインフラ整備に約30億豪ドルの低利融資や無償融資を提供することを申し出た(ロイター、2018年11月15日)。

 また米日も経済支援を申し入れており、パプアニューギニアのオニール首相は、中国からの支援を、債務の返済が困難になるとの理由で、拒絶している。

 米国は、中国の影響力拡大を封じ込めるため、豪州が表明しているマヌス島のロンブラムに海軍基地をつくる計画を、共同で推進しようとしている。

 今年11月ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議のためにパプアニューギニアを訪れたペンス米副大統領は、この計画推進について豪、パプアニューギニア両国と協議したことが報じられている(AFP、 2018年11月17日)。

 このように、南太平洋における安全保障、経済面での対中封じ込めも強められている。

 今年11月、安倍晋三首相はオーストラリアのダーウィンを訪問し、戦没者慰霊碑に献花し日豪の第2次大戦中の歴史的わだかまりを解消した。

 日豪は、2017年1月に物品役務相互提供協定(ACSA)に署名するなど、実質的な準同盟関係になっている。

 日豪連携の意義は大きい。日米豪のトライアングルにより、中国の南太平洋での影響力拡大を阻止する態勢が構築されつつあると言えよう。


インド洋への中国の進出と日印連携の強化

 中国は、海賊対処活動のためとして、インド洋のソマリア沖とアデン湾海域に、2008年以来、海軍艦艇を派遣している。

 それ以降中国は、インド洋への派遣頻度を増大させ、派遣艦艇の種類も徐々に拡大させている。

 わが国の「平成26年版防衛白書」は、その中に原子力潜水艦が派遣されたとされる事例があると指摘している。

 しかし、2015年以降海上自衛隊が「マラバール」日米印海軍共同演習に正式参加国として定期参加するようになったことにみられるように、日米印の連携態勢も強まっている。

 中国海軍は今のところ、インド洋ではまだ自由に行動できる態勢にはないと言えよう。

 また外交面でも、今年10月ナレンドラ・モディ・インド首相が訪日し、「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づき、ACSAの協議入りなど地域での安全保障や経済分野での連携強化を申し合わせており、日印関係も緊密化している。


日米豪印間のダイヤモンド構想の実体化

 以上から明らかなように、日米豪印の連携というダイヤモンド構想が、中国の「一帯一路」戦略を封じ込める態勢で、南太平洋やインド洋において、安全保障面で実効性をもち始めている。

 また米国にとり死活的国益ではないが、東シナ海から南シナ海は日本にとり、南太平洋はオーストラリアにとり、インド洋はインドにとり、それぞれ死活的国益がかかっている。

 米国はこれらの諸国に地域ごとの海空域の防衛警備の直接責任を分担させるバードンシェアリングを進めるであろう。

 それと同時に、日豪印とベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国を加えた諸国間の相互協力を容認し、支援することになるとみられる。

 特に、日本によるこれら諸国に対する、防衛警備能力、治安維持、対テロ、人道支援・平和維持協力、災害派遣などの能力構築の支援、装備の共同研究開発、情報交換などの多方面での協力が期待されることになるであろう。

 そのような多様な任務に対応できる防衛力整備の一環として、「いずも」型DDHの多用途空母への転換について、岩谷毅防衛大臣は、「できるだけ多用途に使っていくのが望ましい」と表明している。

 日本政府は新たな「防衛計画の大綱」に、「いずも」型護衛艦の事実上の空母化や搭載する最新鋭ステルス戦闘機「F35B」の導入を明記する方向と報じられている(ロイター、2018年11月27日)。

 日本の防衛力は、日米共同だけではなく、豪印などとの連携を含めた多国間の面的なかつ多様な任務に応じうる柔軟な防衛態勢に転換しつつあると言えよう。

 また、日本による100機以上、総額約88億ドル、約1兆円に上るF35Bの大量導入は、米航空機産業の雇用確保と収益向上に大きく貢献することになろう。トランプ大統領の掲げる「アメリカ第一主義」政策の具体化の一例とも言える。

減っていない東シナ海での中国の脅威と
求められる日本の総合的な国家安全保障能力

 トランプ政権が発動した米中貿易戦争に伴い経済的困難に直面しているとみられる中国側は、日本に対する微笑外交を展開している。

 今年9月の日中首脳会談では、両首脳は東シナ海を「平和・協力・友好の海とすべく引き続き共に努力していくことで一致した」とされている。

 また両首脳は、「日中共通の目標である朝鮮半島の非核化に向けて,引き続き緊密に連携していくことを確認した」とされ、「拉致問題の早期解決に向けた日本の立場について,習主席から完全な支持を得た」と報じられている。

 しかし、尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵犯などの事案は、今年に入っても減っているわけではない。

 海上保安庁によると、中国海警局の公船は今年11月5日以降11日間連続でわが国沖縄県石垣市尖閣諸島周辺の接続水域および領海の侵犯を繰り返し、今年の最長記録を更新した。

 日本としては、東シナ海での長期にわたる尖閣をめぐる中国との対峙と同時に、南シナ海での長期にわたる米中の対峙にも、備えておかねばならない。

 この種の離島の領有権をめぐる事案などグレーゾーンの辺境での衝突事案の特性として、以下の諸点が挙げられる。

①いつ、どこで発生するか予測が難しい

②アクターも、正規軍以外の、特殊部隊、武装警察・警備隊、民兵、テロリストなど多種多様

③その様相も正規軍間の局地紛争から、戦争以外の軍事作戦、テロ、サイバー戦・心理戦等によるソフトキルなど、複雑多様

④事案発生後の状況の進展が速く、現地部隊間では対立がエスカレーションしがち

⑤半面、関係国間の係争問題だけではなく、各国の内政事情も含めた政治・外交的問題と緊密に連動していることが多く、各国内の政治問題になりやすい

⑥そのために、各国の議会や国民の動向、国連安保理の決議、地域大国の仲介、当事国間の交渉などを踏まえた、外交的、政治的なエスカレーションの抑制や駆け引きが、事態の進展と並行して活発に展開されることが多い

 そのため、この種の事態においては、次のような活動が重要になる

①政治と軍事、最高指揮権を持つ指導部と現地部隊、外交・軍事・警備機関相互の連携

②迅速かつ正確な情報の収集と分析

③同盟国、地域の利害関係国、国連安保理常任理事国への働きかけ

④正確な事実関係に基づく、国益と主権護持の観点に立った自国の正当性についての、一貫した早期からの組織的な主張とその広報活動

 また、米国や豪州、ベトナムなどと協力し、南シナ海の海空域での中国軍や海警の動向についての情報収集・警戒監視・偵察活動を一部分担するといったバードンシェアリング(防衛負担の分担)の必要も高まるであろう。

 日本も、国家レベルの情報能力と、防衛・外交・経済・技術・情報宣伝を包括した総合的な国家安全保障能力が試される時期にきていると言えよう。

筆者:矢野 義昭

JBpress

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