持続可能な未来への一歩:TOMOEGAWAの技術革新により生まれたセルロース繊維配合樹脂「グリーンチップ CMF」の開発ストーリー

2023年12月5日(火)10時30分 PR TIMES STORY

創業以来培ってきた技術の掛け合わせで、セルロース繊維配合樹脂「グリーンチップ CMF」が誕生

株式会社巴川製紙所は、1914年(大正3年)に「電気通信用紙(さん孔紙)」と「電気絶縁紙」の国産化というニーズに応えるため創業、産業用特殊紙のパイオニアとしての道を歩み出しました。現在では、「電気物性評価技術」を活かした特殊紙製品を原点に、「抄紙、塗工、粘・接着、粉体」技術に磨きをかけ、時代の最先端の高機能性材料分野へと領域を広げて、次世代産業分野にも事業を展開しています。

2024年1月、株式会社巴川製紙所は株式会社巴川コーポレーションに社名変更します。また、6月には創業110周年を迎えます。そんな巴川製紙所(以下、TOMOEGAWA)が創業以来培ってきた技術の掛け合わせにより、セルロース繊維配合樹脂「グリーンチップ CMF」は誕生しました。この製品は、木材パルプの微細なセルロース繊維をプラスチック(樹脂)に混ぜ込んだバイオマス複合樹脂です。セルロース繊維を混ぜることで石油資源の節約とカーボンニュートラルを考慮した製品です。

TOMOEGAWAの新たな挑戦、今後の展開について、iCasカンパニー ファイバーマテリアル事業部 営業部グループ 吉野達也グループマネージャーが紹介します。

抄紙の知見と混練技術、事業部をまたいだ技術のコラボレーション

「グリーンチップ CMF」開発開始当時は、TOMOEGAWAの技術を組み合わせて何かを創ろう、事業部をまたいだ活動をしようという機運が高まり始めた頃でした。TOMOEGAWAには機能紙事業部(現:ファイバーマテリアル事業部)の抄紙技術はもちろん、画像材料事業部がトナー製造で培った混練・粉体技術もあります。「グリーンチップ CMF」は機能紙事業部が開発を開始しましたが、樹脂の中にセルロース繊維を混ぜ込むのは至難の業で、苦戦しているところに、画像材料事業部のメンバーが助言、開発に参加してくれるようになりました。親水性であるセルロース繊維は凝集しやすく、性質が真逆である疎水性の樹脂とは混ざりにくいため、均一に分散させることが難しいのです。そのような難題に直面していたところに、両事業部の知見、技術力が上手くマッチし、状況が一変しました。特殊な混練方法を生み出すことができたのです。両事業部によるコラボレーションです。分散特性ではトナー製造の知見が、セルロース繊維の最適な長さや絡みやすさは抄紙の知見が活かされました。一般的に、セルロース繊維が短いと強度が落ち、長いと絡まって流動性が悪くなり、加工がしづらくなりますが、それらをコントロールしてプラスチック成形品の強度や耐熱性、成形性を向上させることができ、尚且つ、環境に配慮した製品であること、それが「グリーンチップ CMF」の強みです。

環境に優しい「グリーンチップ CMF」を市場投入。好評を得るも、新たな課題も見つかる

大手製紙会社や化学メーカーが開発を進めているCNF(セルロースナノファイバー)は、鋼鉄の5分の1の軽さながら5倍以上の強度があり、日本政府も開発を後押ししています。その最中、TOMOEGAWAは2020年7月に「グリーンチップ CMF」をプレス発表しました。樹脂の強化繊維にCNFではなくCMF(セルロースマイクロファイバー)を採用しました。その理由は、セルロース繊維をマイクロレベルにすることで製造工程のエネルギー量をCNFと比べて抑えることができ、コスト的にも優位になること、また樹脂に高配合できるため、より環境に優しいと考えたからです。樹脂ペレットにセルロース繊維を多く配合することができ、それにより石油由来の樹脂を減らすことができます。

「グリーンチップ CMF」の標準品にはセルロース繊維を55%配合していますが、樹脂の特性をコントロールするためにお客様の方で「グリーンチップ CMF」をマスターバッチとして希釈して使用していただくこともできます。また、CO₂排出量は、バージンのPP(ポリプロピレン樹脂)とセルロース繊維55%配合の「グリーンチップ CMF」との比較で、約18%削減(当社試算)できることを確認しています。このような設計コンセプトで製造した「グリーンチップ CMF」に対する成形メーカーをはじめ、自動車メーカーや家電メーカーなどの環境に関わる開発者や担当者の方々の反応は良く、評価してみたいとの話が増えてきました。そして、展示会に出展するなどプロモーションを開始しましたが、今度は独特の匂いや落下時の割れやすさなどの課題が見つかり、苦戦する日々が続きました。そんな苦難を乗り越えるため、地道な研究開発とお客様や営業部門からの意見に耳を傾け続けて、現在は幅広いニーズに応えられるよう耐衝撃性を向上させたものや難燃性を付与したものもラインアップに加えることに成功しました。立ち上げ当初から気になっていたセルロース繊維配合樹脂の特徴である甘い匂いを抑えることもでき、徐々に市場に受け入れられつつあると感じるようになってきました。

外部機関の認証を得て、雑貨用途で採用が広がる

「グリーンチップ CMF」の特長は、強度と軽さを兼ね備え、複雑な形状や曲面にも適応しやすいことです。また、セルロース繊維はしなやかであるため成形機や金型への影響は少なく、既存の金型を使用できることが多いというメリットもあります。

日本有機資源協会の「バイオマスマーク」、欧州「OK biobased」の認定を得ているのに加え、日本の食品衛生法試験や欧州のプラスチック規制溶出試験を既にクリアしており、現在は、スプーンやフォーク、箸、マグカップなどの雑貨用途で採用されています。

「グリーンチップ CMF」の特長

環境対応

  •  紙の原材料であるセルロース繊維の高配合が可能 
  •  石油由来樹脂の使用量を削減=減プラが可能
  •  CO₂排出量18%削減(セルロース繊維55%配合品とPPとの比較、当社試算)
  •  リサイクルしても強度の減衰が小さい

機械特性

  •  強度、耐熱性が向上(成形品の軽量化が可能)
  •  寸法安定性が向上(低収縮率)

成形性

  •  樹脂の流動性が良好(MFR20)でお使いの金型でも成形可能
  •  PP以外の樹脂でもコンパウンドが可能
  •  独特の風合いを生かした意匠性

「グリーンチップ CMF」

「グリーンチップ CMF」を使用した商品例

持続可能な社会への貢献、TOMOEGAWAの新たな試み

現在は、PPにセルロース繊維を配合した製品(樹脂ペレット)をラインナップしていますが、今後は、ポリエチレン、ポリ乳酸、ABS、ポリカーボネート、ゴム系素材等に配合することで機能向上や用途の拡充を目指します。また、バージン材だけでなく、リサイクル樹脂(PP再生原料など)に配合する研究開発も行っています。「グリーンチップ CMF」を添加することで成形品の強度をアップすることができるうえ、リサイクル樹脂にセルロース繊維を配合することで石油由来樹脂の使用量を削減することも可能になります。

需要の大きい家電や自動車用途となると落下試験や耐久試験、寒冷地対応など、クリアすべき課題や条件が多々あり、ご採用いただくまでに時間がかかりますが、最終製品を販売後に問題が起こってはいけないので、お客様とともに開発を進めています。

TOMOEGAWAとして「グリーンチップ CMF」のような樹脂ペレットを開発、出荷するのは初めてのことです。今までとは異なる製造・品質保証・生産技術を構築するのは新しい挑戦ですが、様々な業界でご採用いただけるように、サステナブルな社会の実現に貢献できるように、「グリーンチップ CMF」の開発を進めています。

株式会社巴川製紙所Website「グリーンチップ CMF」

https://www.tomoegawa.co.jp/product/new_product/greenchip.html

※「グリーンチップ CMF」はエフピー化成工業株式会社との共同開発品です。

※GREEN CHIPロゴ、グリーンチップ、 CMFは株式会社巴川製紙所の登録商標です。

【株式会社巴川製紙所 会社概要】

TOMOEGAWAグループは、様々な分野の製品で世界トップクラスのシェアを獲得するグローバルな高機能性材料メーカーです。抄く・塗る・貼る・砕くの技術を活かし、「半導体・ディスプレイ関連事業」「機能性シート事業」「トナー事業」「セキュリティメディア事業」の4つの事業セグメントをメインに様々な事業領域で活躍をしています。また、より良い未来の実現に向けて新しいビジネス価値を創造するため、「新規開発事業」の事業セグメントを設けています。

本社所在地:東京都中央区京橋二丁目1番3号 京橋トラストタワー 7階

代表取締役社長:井上 善雄

創業:1914年(大正3年)6月19日

URL:https://www.tomoegawa.co.jp/

【お問い合わせ先】

株式会社巴川製紙所 

iCasカンパニー 企画室

TEL:03-3516-3405

E-mail :eisui_info@tomoegawa.co.jp


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