「女性のための在宅勤務」の時代は終わった!

12月6日(木)6時0分 JBpress

「『働く、が変わる』テレワークイベント・表彰シンポジウム」では、総務大臣表彰5社、厚生労働大臣表彰4社・2人が表彰された。

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 2018年11月29日、「主催:総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省」という、国の4省が並ぶイベントが開催された。

 11月のテレワーク月間を締めくくる、「『働く、が変わる』テレワークイベント・表彰シンポジウム「だ(https://kagayakutelework.jp/symposium/)。

 ICT普及の総務省、労働管理の厚生労働省、企業強化の経済産業省、都市計画の国土交通省と、国がいかに「ICTを活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」であるテレワークに力を入れているかがうかがえる。

 また、受賞企業のプレゼンテーションでは、日本ユニシス、三井住友海上火災保険、味の素、アフラック生命保険など、大企業の取締役がズラリ。

 味の素は、社長である西井孝明氏自らが熱弁した。そこには、従来の「女性のための在宅勤務」とは違う、今後の日本のテレワークを進めるキーワードが見えてきた。


「女性のためだけ」ではなく、企業の「働き方改革」として

 ひと昔前のテレワークと言えば、「女性が活躍できるよう、在宅勤務を導入しよう」というのが主流だった。

 しかし、それだけてでは「福利厚生」にとどまり、企業のメリットは少ない。受賞各社が共通してかかげるテレワーク導入の目的は、「生産性向上」だ。

 これは、「女性」だけを対象にしていては実現できない。受賞企業のほとんどが、女性に限らず、会社全体の「働き方改革」の中に「テレワーク」を位置づけている。

 企業のテレワークへの取り組み方は、確実に変わってきているのを感じる。そこで、シンポジウムでの11社の発表から、日本のテレワークが向かうキーワードを10個ピックアップしてみた。

 キーワードごとに、受賞企業の取り組みを解説していこう。

 なお、各社の取り組み、数字などは、シンポジウムで配布された資料から抜粋している。


効果の数値化

 テレワークは「働き方」であるため、その導入効果は、なかなか見えにくい。

 受賞企業は、それぞれの指標を設定し、テレワークの効果を数値化することで、テレワークの導入効果の「見える化」に取り組んでいる。


人材確保

 深刻な人手不足時代において、「働きたい企業」「働き続けたい企業」となることは、非常に重要なポイントである。

 「テレワークを導入している企業」であることを広報することにより、比較的早く効果として表れるのが、採用ランキングなどだ。

・三井住友海上火災保険

 テレワークをはじめとする働き方改革に積極的に取り組んでいることをアピール。学生のエントリー数が115%と増加。各種媒体による採用ランクングも上昇。

・WORK SMILE LABO

 採用活動でテレワークの環境整備の内容を伝えたところ、就職したい企業ラングング、岡山県内9位にランクイン。中途採用は、昨年比180%の求人応募。

 また、今いる社員の満足度を向上させることは、離職防止となる。以下のような数字も出ている。

・味の素

 79%の社員が「働きがいを実感している」と回答。

・アフラック生命保険

 ライフイベント(出産・育児・介護など)があったとしても長く続けられる会社だと思う社員が、2014年 67.1% ⇒ 84.0%


サテライトオフィス

 子育てや親の介護などの事情があれば、「家で働く」ことで、両立がしやすくなる。しかし、通勤時間が長い、終業後に自己啓発や副業をしたい、という事由もある。

 日本の住宅事情や、住宅には仕事に適した環境(机や椅子、プリンタなど)を整えにくいこともあり、最近は、サテライトオフィスの利用が活発化している。

 また、営業活動においては、訪問先と訪問先の間に、サテライトオフィスでウエブ会議や資料印刷などのテレワークができることで、効率よく仕事を進めることが可能になる。

 「女性のための在宅勤務」からスタートしがちだったテレワークだが、最近は、在宅勤務よりも、先にサテライトオフィス勤務のテレワークからスタートする企業も少なくない。

・向洋電機土木

 建設業ならではの現場事務所をICT化し、テレワークが可能なサテライトオフィスとして活用している。

・日本ユニシス

 自社サテライトオフィス(新宿・大手町・丸の内)で、毎月7000人以上が利用している。

・味の素

 サテライオフィス会社と契約し、全国140拠点のオフィスを利用可能。自社の事業所(全国11拠点)に加え、東京・大阪の社宅にもサテライトオフィススペースを設置している。

・アフラック生命保険

 首都圏を中心に全8か所にサテライトオフィスを設置。複合機やデュアルディスプレイなど、自席と同様の環境を整備している。

・SCSK

 全国に9拠点、合計で70席のサテライトオフィスを設置している。

・東急電鉄NewWork(バネルディスカッション)

 直営店21店舗。提携店99店舗で、大阪にも進出。契約企業数は約200社。利用登録社員は7万人。毎月のべ1万5000人が利用している。


時間管理

 時間外労働時間が法律で制限される状況において、テレワークなら残業し放題になってしまっては、本末転倒となる。

 厚生労働省が昨年出したガイドラインにおいても、「テレワークを行う労働者に関しても労働時間の適正な管理を行う必要がある」と明記されている。

 「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html)

 これを踏まえ、テレワーク導入における時間管理については、「自己申告」だけではなく、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録と合わせて、適切な管理を実施していく傾向にある。

・日本ユニシス

 PCのログオン・ログオフ時間の自動収集ツールを全ノートPCに導入している。

・WORK SMILE LABO

 出退勤をクラウドで管理。携帯で出退勤の打刻と位置情報の確認が可能。また、PCログ管理システムにより、作業時間・内容の見える化を実現している。

・味の素

 テレワークなど、社外からのネットワーク接続時刻(VPN)を勤怠システムに「客観時間」として表示。

 テレワーク利用者はその時間をもとに勤怠管理システムへ入力をしている。

 自身の入力時刻と客観時間に30分以上の差異がある場合は、差異理由を申請し上司が確認するというステップを必ず踏むようにしている。

・アフラック生命保険

 勤怠システム上に、パソコンのログオフ時間が表示され、社員のログオフ時間と業務終了時間が一定時間乖離している場合は、システム上承認できない仕組みとしている。


「働く」選択肢

 「短時間勤務」「育児休業制度」など、社員がライフイベントに合わせて休むことができる制度は充実してきた。

 しかし、「短時間勤務だと重要な仕事を任せてもらえない」「「育児休業から仕事の復帰が大変」など、働きたい社員も少なくない。

 テレワークにより、育児休業からの業務復帰を支援したり、子どもの送迎のため短時間勤務しかできなかった社員がフルタイムに復帰したり、といった「働く」選択肢を増やすことも可能になる。

・三井住友海上火災保険

 自社開発の社内クラウドソーシングシステムにより、所属部署の業務状況を把握し、繁忙期に不定期で作業支援ができることにより、育児休業者の職場復帰を支援している。

 出産後就業継続率向上(2014年度93%⇒2016年度以降95%)

・アフラック生命保険

 テレワークを活用することにより、短時間社員比率が年々減少している。

 2015年:53.4% ⇒ 2016年:50.1% ⇒ 2017年:44.4%

・味の素

 テレワークにより、短時間勤務者が14%減少している。


現場仕事

 テレワークというと「デスクワーク」を思い浮かべやすい。

 しかし、子育てや親の介護はもちろん、ワークライフバランスを高めたいというニーズは、店舗販売や工場での製造など「テレワークしにくい」職場にもある。

 「この業種はできない」と決めつけてしまうと何も進まない。「どの業務を、どう運用すれば、何を使えばできる」を、企業も挑戦を続けている。

・向洋電機土木

 現場事務所をサテライトオフィス化。現場の黒板を写真撮影するところから始まっていた紙の報告書は、現在は現場をタブレットで撮影し、自動作成された表を電子納品している。

・フジ住宅

 設計士や建築士が、現場で監督業を行いながら、モバイルPCでテレワークができる体制を整えている。

・味の素

 トライアルの結果、川崎事業所では生産オペレーターのテレワークの実施に成功。生産オペレーターの交代勤務者も一部の事務作業を在宅勤務で実施することができた。


障がい者雇用

 2018年4月、障がい者の法定雇用率が上がり、企業にとっての取り組みが重要になるなか、10月には国や自治体の「水増し」が発覚。

 一方、都市部には、「障がい者雇用が可能な人材」の慢性的な不足が続いている。

 今後、通勤しにくい状況の障がい者や、地方在住の障がい者をテレワークで雇用する動きが活発化されると予測される。

・日本ユニシス

 昨年、NULアクセスビリティ(本社東京)を設立し、徳島県在住の障がい者を在宅勤務者で雇用している。

・フジ住宅

 茨城県と山口県に住む身体障がい者を完全在宅勤務でテレワーク雇用。うち1人は、パラリンピックを目指すアスリート。

・味の素

 障がいをもつ社員もテレワークの対象として推奨した結果、利用者は1.7倍(24人⇒41人)となっている。


災害時対策

 2018年は、地震・台風などの大きな災害が何度も発生した。今後も世界的に天候不安が続く。パンデミックの脅威もなくならない。

 災害時、緊急時、リスクを冒して会社に行くか、仕事を休むか、ではない選択肢としても、テレワークも重要度が増していく。

・味の素

 2018年1月22日、1月23日の関東エリア降雪時には、本社社員の60%がテレワークを実施。

・フジ住宅

 家族がインフルエンザなどの感染症にかかった場合、家族の看病をしながら在宅勤務できるよう就業規則に記載。


高齢社員

 人生100年時代を前に、定年年齢を70歳にする話も出てくるなか、高齢社員の働き方も変わる。

 毎日通勤するのは、体力的にも厳しくなる。自宅、あるいは自宅近くのサテライトオフィスで働くという選択肢は、とても現実的だろう。

・味の素

 定年退職後のシニア社員のテレワーク利用者は2.4倍(24⇒41)、総実施回数は1.2倍。

・アフラック生命保険

 60歳以上の社員100人のうち、19人がテレワークを活用しており、頻度の高い社員では、月間平均11日利用(2018年1月〜7月実績)。


地方で働く

 地方の過疎化、都市部の待機児童問題など、都市に人が集中することで起こる社会問題も少なくない。都市部で働く人が、テレワークでなら地方で働くことができる。

 まずは、地方のサテライトオフィスなどを活用し、「テレワークで働く」という流れも起きてきている。

 総務省が実施する「ふるさとテレワーク」事業では、地方のサテライトオフィスが50を超えている。

 また、「仕事(ワーク)」と「休暇(バケーション)」を組み合わせることで、より長く地方に滞在できる「ワーケーション」も注目されている。

・味の素

 交通費の安い時期に早めに帰省し、帰省先でテレワークを実施した後に、長期休暇を取得可能にしている。

・和歌山県(パネルディスカッション)

 平成29年度は24社240人が和歌山県でワーケーションを体験している

 以上、総務大臣賞と厚生労働大臣賞を受賞した9社の取り組みから、10個のキーワードについて、解説した。

 今後、日本企業がテレワークに取り組む方向性として、参考にしていただければ幸いだ。

筆者:田澤 由利

JBpress

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