「若くてキレイな女性に僕の子供を産んでほしい」年収2200万円56歳男性は結婚相談所で"婚活ゾンビ"になった

2024年12月7日(土)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kwanchaichaiudom

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結婚相談所にはどんな人がやって来るのか。結婚カウンセラーの大屋優子さんは「私が運営している結婚相談所を訪れた男性に、『美人・30代まで・痩せ型以外の女性とは結婚したくない』という中年男性がいた。彼に『結婚は人柄に尽きる』と伝えていたが、結局、若くて綺麗な女性と結婚することにこだわり続けた」という——。

※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには修正を加えている。


写真=iStock.com/kwanchaichaiudom
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■「上位5%の女性と結婚したい」という問い合わせが…


結婚相談所を運営していると、びっくりするような問い合わせが来ることがある。


ある日、オフィスの電話に65歳になる男性から、婚活の問い合わせがきた。「結婚相談所に登録している上位5%の女性と結婚したい」と唐突に言う。何から考える上位5%なのか? 見た目か、年収か、年齢か……。何もわからない。


しかも、彼のことは、年齢と、現在も現役でお勤めをしており、毎月の収入はあるという程度のことは電話で聞けたが、それ以外の情報はない。


「上位5%の女性とはどのような方でしょうか?」


と聞くと、彼は、自分は今までいくつもの結婚相談所で活動してきて、上位5%レベルの女性としかお見合いしてきていないのだ、という。真偽のほどは定かではないし、結局のところ「上位5%の女性」がどんな人を指しているのかは分からなかったが、そこはさておき、一般的な婚活の話をしようとすると、


「そんなことはどうでもよいんだ、俺は婚活のことは何でも知ってるから、おたくで世話になれば、上位5%の人と結婚できるのか?」


と電話口で相手は詰問口調になる。呆気にとられた私が、一瞬口をつぐむと「じゃあ、もういいや」とガチャンと電話が切られる。


「結婚相談所に登録すれば、希望する結婚相手を紹介してもらえて結婚できる。」


実際に、そう思っている人もいる。とくにその傾向が強いのは、「初婚・高学歴・高年収」のアラフィフ以上の男性に多い。


■年収2000万なのになぜか結婚できない50代男性


まさにそうした特徴を備えた方が、結婚相談所にやってきたことがある。


男性、初婚、56歳、年収2200万円。


年収のうち半分は、彼が勤務する一流企業の給料で、あとの半分は、彼が所有する不動産からの家賃収入と株式投資の配当である。親からもらった莫大な財産があり、それを不動産と株に投資。副業のほうが収入は多いのだという。


見た目は、30代後半〜40代前半と言っても無理をすれば通らなくはないくらいの若々しさ。毎日ジム通いで鍛えているせいかお腹も出ていないし、ファッションのセンスも悪くない。ヘアスタイルもさわやかで好印象だ。なぜ、彼がこの年収と見た目で、今まで独身だったのかが、不思議なほどである。きっと寄ってくる女性もいたのではないかと思うが、ご縁がなく今まで独身できたのだという。


彼の難点を言うとしたら、第一には、ぼそぼそとした話し方と、声のボリューム。何を言ってるのか、聞き取れないことがままあり、私も面談中に何回も聞き直す。また、照れ屋なのか、話している際に目が合わないこと。相手の目を見て話ができないのは、人とのコミュニケーション時にマイナスに作用する。


■50代婚活は再婚のほうがうまくいきやすい


彼の希望は、「美人な方」「子供を望める方」とのことで、真剣な表情で「若くてキレイな女性に、僕の子供を産んでほしい」と語っていた。


写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

誰だって、美人な女性がいい。それはよくわかる。だが、56歳という年齢で「子供を希望」するということは、相手の年齢が30代と想像すると、20歳以上年下ということになる。これは、難しい希望であるのは明らかである。


いくら彼の見た目が若かろうが、副業の収入が1000万円あろうが、簡単にはいかない。


また、50歳以上の男性の婚活は、再婚の方のほうがうまくいくケースが多いのだ。その理由は、再婚ということは、一度は女性と暮らした経験があるということ。結婚生活は、自分の思い通りにはいかないという経験をされているのだ。また50歳以上ともなると、初婚時に、お子さんがいらした場合も、すでに社会人となって独立している場合が多い。


それに対して、初婚の50代以上の男性は、独身時代が長い分、自分の暮らしが確立されており、ペースを他人に乱されたくないとか、マイルールが強いとか、柔軟性という部分において、不安視されがちである。


今までは、身体も健康で、仕事も第一線で活躍。友人もいて、趣味もある。時間もお金も自由に使える。ところが、年齢を重ねるにつれ、健康診断で引っかかったりし、病院の世話になることもある。


自分の仕事の引退が近づいてきて、老後一人の生活を想像するようになる。人生100年時代を、信頼できるパートナーと過ごしたいと思うのも、当然の気持ちであるから、初婚だろうが再婚だろうが、ご縁を望むなら、ぜひお世話をしたい。


■「50代・高収入男性」の年下婚はほぼうまくいかない


彼が、お子さんを希望する気持ちは理解できた。経験していない子育てをしたい。家族が欲しい。自分の資産も、子供に残したい。それらの気持ちはよくわかる。


だが、50代後半男性と結婚を望む30代女性は、一部の金目(かねもく。お金がある人と結婚したい人)女性を除き、かなり難しい条件である。しかも彼は、前提条件が「美人」であるということであるから、なおさらなのである。


「美人とのご縁があるかも、お子様を授かれる年齢の女性とのお見合いを組めるかも保証はありません。それに、たとえ20代女性と結婚したとしても、必ず子供ができる保証なんかどこにもないんです」


これだけは最初に釘を刺す。そもそも、「結婚相談所で婚活しても、結婚できる保証はない」のだから。


50代の年収が高い一部の男性は、子供を希望される。実はこの会員だけではない。私が運営している結婚相談所に登録している30代女性会員にも、「50代・子供希望・高年収」男性からのお見合いのお申し込みは、後を絶たない。


だが、これらのお申し込みは、ほぼ不成立となる。なぜなら、結婚したい女性たちの多くは、年齢層が近い男性とのご縁を希望しているからだ。


実際に50代男性からのお見合いお申し込みに「私は介護のために結婚したいんじゃない」と激怒した女性会員もいる。その気持ちはたしかによくわかる。わかりすぎるくらいわかる。だが、自分の子供が欲しい50代男性たちは、どんなに低い可能性でも30代女性とのお見合い成立を目指しているのだ。


写真=iStock.com/kimberrywood
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■お見合いの申し込みは殺到したが…


彼の場合、登録するやいなや、かなりの数のお申し込みが来た。


年齢よりも若く見え、そこそこのルックスに、所有する不動産がいくつかあり、高年収。50人ほどの女性からお申し込みをいただいたが、ほとんどが年齢が近い女性で、文句なしに美人と呼べる美しい女性たちもいた。だが、年齢は子供を産めるという年齢からは、時間が過ぎてしまっているかたがほとんどであった。


彼の希望は、「美人で子供を授かれる可能性のある方」であるから、これらのお申し込みは、すべてお断りした。彼からのお申し込みでのお見合い成立にかけるしかないが、彼のお申し込みは最高齢でも39歳。残念ながら、いくら年収が高くても、お見合いは成立しない。


■「どうしても結婚がしたい」と言っていたが…


彼もなかなか組めないお見合いにしびれを切らし、相手女性の年齢の引き上げを考え出す。


「子供は何歳まで産めますかね?」


こればかりは、人によるから、一概に何歳までなどということはできない。実際に40歳を過ぎてから、元気な赤ちゃんを授かったかたもたくさん見てきた。また逆に、20代で結婚したのに、お子さんに恵まれない夫婦も数多くいる。


子供が欲しいから結婚したいという気持ちはあって良いが、子供がいなくても温かい関係を築き、パートナーとして寄り添える相手であることが、結婚相手としての絶対条件である。


再度私は言う。


「お子さんが授かるかどうかは、お若い方と結婚したとしても一切の保証はありません。それに、結婚相談所でご結婚されるかたの年齢差は、4歳差くらいまでが圧倒的です。このまま20歳近い年齢差の方にお申し込みを続けても、結婚どころかお見合いも厳しいです。結婚がしたいのか、若い美人と以外は結婚したくないのか、どちらでしょうか?」


彼は黙り込む。黙り込んだ後、「どうしても結婚がしたい」とぼそりと言う。


「ならば、もう少しお歳の近い女性にお申し込みをいたしましょうね」


写真=iStock.com/mapo
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彼がお申し込みする女性の年齢を40歳を少し超えたあたりまでにあげたところ、いくつかのお見合いが組めるようになった。


ところが、お見合いを組めるようになったは良いが、「写真と実物が違った」「スタイルが良くなかった」など、見た目判断で、交際をこちらからお断りしていく。先方は、交際希望を出してくれているのにだ。


■「痩せてる女性が好きなんです」


ちょっと待て! 相手は一回りも年上の男性とお見合いしてくれていて、年収が高いからだけかもしれないとはいえ、交際希望を出してくれていることを、まったく理解してくれないのか。


結婚相談所の交際とは、「仮交際」。仮交際は、もう一度会ってみるというレベルで、恋人のようなお付き合いでもないし、もちろん結婚するわけではない。お見合いは一時間程度という暗黙のルールがあるが、たった一時間のお見合いでは、相手の人柄だってわかるはずもない。


結婚したいのなら、まずはお見合いしてみる。もう一度会っても良いかな、というレベルなら仮交際希望を出してみて、フィーリングを確かめてみる。これが婚活のセオリーだ。この説明は何回も彼にしたのに、見た目重視な彼は、「美人」希望は外すことはない。しかも、「体重は40キロ台限定」と後出しで条件を追加したのだ。


「痩せてる女性が好きなんです」


スリムな女性が好きでも良い。美人希望もかまわない。ならば、年齢だけはもっと柔軟に考えられないのか。


■「結婚は人柄」を最後まで理解することができなかった


結婚がしたいなら、これから仕事を引退してからも、二人で旅行したり、趣味を楽しんだり、どちらかが病気になったりしたら、お互い支えあって助け合って暮らしていけるパートナーとのご縁を見つけるべきではないのか。


もうすでに四捨五入すれば還暦で、いかに心豊かに幸せな老後を過ごせるかを考えるべき年齢ではないのか。元気なうちに、一日でも若いうちに、共白髪になれる人柄の良いお相手を探すべきではないのか。結婚相手への最優先事項は、「人柄」に尽きるのではないのか。



大屋優子、現代洋子『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)

それらの話をすると、その場では彼は理解してくれる。いや違う。理解してくれたように見えるだけだった。「美人」「スリム」「30代まで」をこの50代半ば初婚高年収男性は、あきらめることはできない。


お見合いのお申し込みのうち、ほぼこの条件に当てはまる女性だけに入れ、申し訳程度に40代前半のスリムで美人な女性に数名だけ申し込む。


これをかれこれ一年以上続けているが、彼の結婚への兆しは見えてこない。年下の美人でスリムな女性ばかりを追い続けた彼は、言うなれば“婚活ゾンビ”になってしまったのだ。


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大屋 優子(おおや・ゆうこ)
結婚カウンセラー
1964年生まれ、株式会社ロックビレッジ取締役。ウエディングに特化した広告代理店を30年以上経営のかたわら、婚活サロンを主宰。世話好き結婚カウンセラーとして奔走。
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(結婚カウンセラー 大屋 優子)

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