古い物でも残し続ければ価値をうむ

12月7日(金)17時58分 財経新聞

 少し前ですが、資生堂が歌舞伎俳優などが使う伝統的な舞台用化粧品を、「売上が限られている」との理由で生産終了の発表をしたところ、多くの著名な役者たちから「品質の良さ」や「代用品がない」などと撤回を求める多くの声が挙がり、その結果、資生堂は「伝統文化をしっかり支援する」との言葉とともに早々に生産終了の撤回を発表したという話題がありました。多くの舞台関係者が胸をなでおろし、資生堂の決断に感謝の言葉を述べていました。

 たぶん商品の売上は微々たるものだったと思われ、そんな状況からは「もう生産を止めても影響はない」と判断してのことだったと思いますが、思った以上の反響と、商品が無くなることの影響の大きさに気づき、すぐに撤回したのでしょう。
 会社がすぐ判断をしたのは素晴らしいと思いますし、売上だけではわからないその商品の価値の大きさを、あらためて理解したのだと思います。

 また、こちらは最近のことですが、ポケベルのサービスが終了されるという話題がありました。
 「今でもまだあったのか」という感じですが、新規受付は5年ほど前からすでに中止されており、現在の契約者は1500人を割っていて、ほとんどが医療関係者とのことでした。
 ただ、こちらは同じ電波を利用した防災無線や防災ラジオに事業はシフトしているそうで、ポケベルから携帯電話に移り変わって、文字通信はあっという間に音声通信に取って代わられてしまいましたが、防災となると文字通信の優位さがあるそうです。
 サービスは終了しますが、いままでやり続けていたことのノウハウが、これからも活かせるということで、古いサービスや技術でも、しっかり価値を見出していたのだろうと思います。

 浅草の道路沿いで、お祭りのおみこしの製造販売をしているというお店がありました。たぶん限られた一部の人しか利用しないと思います。
 でも、同業者は日本中でもそれほど多くないでしょうし、必要とする人はどこかに必ずいるはずで、そのニーズがまったくなくなることはありません。ある時期には淘汰されて同業者が減っていったことはあるでしょうが、それを乗り越えて生き残ると、今度は絶対に欠かせない存在になります。

 IT会社で聞いたのは、非常に古いレガシーなシステムが今でも利用されており、一方でそれに対応できる技術者はどんどん減っていますが、いずれなくなると考えれば若手技術者に習得させるものでもなく、定年を過ぎた高年齢の技術者に対応してもらっているそうです。
 ITのように進歩が速い世界でも、やはり古い物はどこかに残っていて、その対応が必要になっています。利用者側も単に予算などの問題だけでなく、使い勝手が良いなどと評価して、あえて古いシステムを好んで使っていることがあります。

 最近のカフェやファミレスは、セルフサービスのところが多いですが、かつてどんどん減っていた昔ながらのフルサービスの喫茶店は、座席がゆったりしていて落ち着けるなどと言われ、あらためて注目されているそうです。年齢の高い人が昔のスタイルを好むことや、若い人でも用途に応じて使い分けるので、古いと言われたスタイルがまた受け入れられています。

 古い物が、それを知らない世代には新しいものとして、あらためて受け入れられることがあります。自分たちにとっては原点回帰だったことが、周りからは新しい取り組みと見られたりします。

 このように、古いと言われて淘汰されていったものでも、最後まで残し続けると、その価値を失われないばかりか、逆に輝きを増すようなことが数多くあります。古い物と新しい物との融合で、それまでとは違う新しい価値を生むこともあります。

 古い物でも、それを残し続ければまた価値を生むことがあります。新しい物へ目を向けるのと同じように、古い物にも目を向けていくと、同じく新しい物が見えてくるかもしれません。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

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