「やる気がない社員」を変える3つのコツ

12月8日(金)9時15分 プレジデント社

(株)OJTソリューションズ 『トヨタの現場力 生産性を上げる組織マネジメント(KADOKAWA)

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変化やチャレンジに消極的な人がいると、職場生産性は上がりません。しかし、どんな職場にも「やる気がない社員」はいます。どうすればいいのでしょうか。トヨタ自動車では、現場のチームワークを活性化させる独自のメソッドを確立しており、子会社のOJTソリューションズを通じてコンサルティングを行っています。「トレーナー」を務めるのは、40年以上、現場を勤めた元トヨタマンたち。今回は、そのメソッドをまとめた『トヨタの現場力 生産性を上げる組織マネジメント』(KADOKAWA)から、3つのコツをご紹介します——。

■(1)「ラクをしたい気持ち」を刺激する


トヨタでも、いつもの仕事とは異なる新たな取り組みが現場から歓迎されることは稀で、「余計な仕事が増えた」と面倒がられるケースが大半です。このような“極力面倒なことを避けたい”という傾向が強い人には、人のある根源的な性質を利用しましょう。




(株)OJTソリューションズ 『トヨタの現場力 生産性を上げる組織マネジメント(KADOKAWA)

人は様々な特性を持っていますが、その1つに「ラクをしたい」というものがあります。皆さんにも、大変な仕事を前にしたときに「面倒だな。もっとラクにできないか」と反射的に思ったり、本来やるべきことではあるもののこっそり手を抜いた経験はないでしょうか。新たな取り組みを面倒に思う人の気持ちにも、この「ラクをしたい」という根源的な特性が潜んでいます。


改善活動などの新たな取り組みに対するよくある誤解は、「今よりも大変になる」というものです。2時間の作業を1.5時間に短縮するための取り組みを事例に、考えてみましょう。2時間の作業を全てそのまま1.5時間でやるのは「大変になる」ことですが、不要なプロセスやムダを省くことで1.5時間でできるようにするのは「ラクになる」ことです。もちろん、取り組みをしている最中は一時的に定常業務以外に改善活動が追加されますが、長期的にトータルで見た場合には「ラクになる」ケースが大半です。このように、新たな取り組みを現場がラクになるための手段と理解してもらえれば、後ろ向きだった気持ちを前向きにすることができます。


▼まずは「困りごとヒアリング」から

その時に有効なのが、「困りごとヒアリング」です。これは弊社の元トヨタマンのトレーナーが顧客先で改善活動をする際に活動初期によく行うもので、実際に現場で困っていることを担当者・作業者にあげてもらい、それを1つずつ解決していく取り組みです。改善活動を加速する原動力として使われることも多いのですが、スムーズに進めるためにはポイントが2つあります。


1つは、取り組み対象を現場目線での困りごとに限定すること。トヨタで改善を行う視点として、ムリ・ムダ・ムラがありますが、「困りごと」で聞くのはムリ=現場で大変だと感じていることに限定します。これは、ムリの改善が現場にとってメリットを感じやすいこと、「ムダ」を指摘されると自分の仕事を否定された気持ちになりやすいことが理由です。


もう1つは、提案された困りごとには、必ずリアクションをすること。これはすべての困りごとに対策を講じるという意味ではなく、予算等の制約で対策が取れない場合にもその理由を添えて伝えるということです。多くの現場では、「どうせ提案しても取り上げてもらえない」「何も変わらない」というあきらめが蔓延しています。その気持ちを振り切って出してくれた提案に対して無反応でいると、これまでに増して後ろ向きな状態になってしまいます。きちんと提案内容を検討してもらった喜びは、その後の活動に大きなプラスとなるのです。



■(2)悪条件下での成功ケースを引き合いに使う


変化に後ろ向きな人の心を動かすのは、絵にかいたような好条件下での成功事例ではありません。そのような事例は「それは、あの会社(部署)だからできることでしょ」という反発を生み、自職場が変化・進化できない理由を“条件がそろってないから”として正当化させるだけです。


「どうせムリ」の気持ちを変える効果的な事例は、生産性・売上高などの数値が他部署よりも劣っている、社内や業界でのポジションが低かったり長年人員補充がされず風土が停滞しているなど、悪い条件下での一発逆転の成功事例です。


弊社のある顧客企業では、単純作業が多く顧客クレームの責任も押し付けられがちで、社内で最も士気やポジションが低い職場で活動をスタートしました。活動開始にあたっては、「1人の落ちこぼれもださないように」「数値成果は一切求めない」というトップ方針によりプレッシャーを極力排除。最初は後ろ向きだった職場のメンバーたちでしたが、弊社のトレーナーたちと身近で成果がわかりやすいテーマに地道に取り組む中で小さな成功体験を積み、徐々に前向きになっていきました。そして、ロット生産から1個流し生産など高次元の活動にも取り組むようになりました。この職場での成功事例は「あの部署ができるはずがない」と決めつけていた周囲の部署へも多いに刺激となり、全社の「どうせムリ」を一掃して活動を全社に拡大させたのです。


このように、悪条件下での成功事例は、その周囲に焦りを生み、「どうせムリ」をなくす大きな原動力になります。自社内や業界内で、このような事例を探してみてください。


■(3)「どうせムリ」の背景にある理由を見極める


「どうせムリ」という気持ちをもっている人も理由は様々で、「どうせムリ」の払拭も一筋縄ではいきません。ここでは代表的な2つのタイプへのアプローチをご紹介します。


1つ目は、スキル・経験が未熟で自信がない場合で、仕事の経験が少ない若手によく見られます。この場合は変化自体に反対しているのではなく、その変化を担う自分自身が関門なのです。本当は一歩を踏み出したいものの、失敗が怖くて一歩を踏み出せないのです。彼ら・彼女らに対して有効なのは、失敗リスクを減らしてあげること。このタイプは年齢も若く先入観が少ないケースが多いので、不安材料を減らしてあげれば機動的に活動に取り組むケースが多々見られます。


弊社のある顧客企業では、若手をリーダーにした場合には、経験豊富なベテランをバックアップにつけた上でチームにしていました。そうすることで、両者が補完しつつ長所を発揮することができていました。若手の機動力やチャレンジ精神と、ベテランの経験や人脈が活きるのです。




■嫌っているのは「自らの立場を危うくする変化」


2つ目は、変化してこなかった過去へのあきらめと現状が大きく変化することへの不安を抱いている場合で、こちらはベテラン層で多くみられます。昔は自分も前向きな気持ちで色々とチャレンジしたけど結局変わらなかったというあきらめと、時間をかけて蓄積した自らの経験・スキルやせっかく築いた現在のポジションが変化で無意味なものになってしまうのではという不安があるのです。


しかし、長年仕事をしてきた組織・現場には愛着をもっているケースが多いため、この点を最大限引き出すようにします。また、一見変化を嫌っているように見えますが、より正確に言うと嫌っているのは「自らの立場を危うくする変化」です。前述のように組織や職場には愛着があるので、彼らの立場を保証した上での変化であれば、前向きな協力を得られる余地があります。


弊社が支援したある自治体では、活動開始にあたって定年退職間近の課長クラスが活動の抵抗勢力として立ちはだかりました。そこで実施したのが、活動を担っている彼らの部下たちから活動内容の報告を受けるかわりに、課長クラスの彼らに活動結果への責任を持たせること。活動内容に応じて、適切なサポートをしてもらうことを求めたのです。活動の開始直後は後ろ向きだった彼らですが、プロジェクトから頼りにされ活躍の場面も与えられたことで、活動の大きな後ろ盾となっていきました。


このように、活動に抵抗する理由ごとに適切な対処をすることで、活動の向かい風を追い風に変えることができるのです。


新たな取り組みに対する「どうせムリ」「面倒くさい」という反応にも、人が根源的に備える特性・過去からの経験・自らのスキルへの自信不足など、様々な理由があります。皆さんの目の前にいる後ろ向きな方は、一体どのようなタイプでしょうか。ぜひ、上記を参考にアプローチをしてみてください。


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岡内 彩(おかうち・あや)

OJTソリューションズ 経営企画部

東京大学教育学部卒業。トレーナーや顧客企業への取材を通じて、人材育成のコツや強い現場づくりに必要な要素などの形式知化を進める。OJTソリューションズ: 2002年4月、トヨタ自動車とリクルートグループによって設立されたコンサルティング会社。トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者が「トレーナー」となり、トヨタ時代の豊富な現場経験を活かしたOJT(On the Job Training)により、現場のコア人材を育て、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援する。 本社は愛知県名古屋市。60人以上の元トヨタの「トレーナー」が所属し、製造業界・食品業界・医薬品業界・金融業界・自治体など、さまざまな業種の顧客企業にサービスを提供している。 主な著書に20万部超のベストセラー『トヨタの片づけ』をはじめ、『トヨタ仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』(すべてKADOKAWA)など。

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(OJTソリューションズ 経営企画部 岡内 彩)

プレジデント社

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