企業が不要な人員を解雇できるスウェーデン式ルール

12月8日(金)16時0分 NEWSポストセブン

大前研一氏が雇用問題について語る

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 企業が賃上げをしない一方、建設、飲食、運送、医療、介護などの業界では人手不足が深刻だ。逆に、人が余っている業界のひとつ、銀行では、メガバンクが次々と人員と業務量の削減を発表した。経営コンサルタントの大前研一氏が、名目賃金が20年にわたって下がり続けている日本の雇用環境を打ち破るために、雇用ルールの変更を提案する。


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 人余りのトピックスの一つに、三越伊勢丹ホールディングスの早期退職制度の見直しがある。早期退職の対象を50歳から48歳に引き下げるとともに、退職金を部長級は最大5000万円上乗せし、課長級は最大で倍増させて、バブル期に大量入社した総合職を中心に管理職の早期退職を促し、高止まりしている人件費の圧縮を図るという。


 だが、この制度だと、会社としては最も残ってほしい人材が先に退職する。なぜなら、そういう人材は他社から引く手あまたで、のし紙を付けて再就職の斡旋をしているようなものだからである。逆に、他社で使いものにならない人は、今いる会社にしがみつくしかない。したがって、会社はますます衰退していくことになる。


 だが、三越伊勢丹ホールディングスは、そこまでしてでも辞めさせたいということだ。なぜか? 日本の場合、従業員を簡単には解雇できないからである。


 そもそも百貨店業界は、もはや斜陽どころか“死に体”である。なぜなら、eコマースが拡大し、ゾゾタウンやバイマなどがますます成長しているからだ。


 たとえばバイマの場合、エスクローで海外の商品が「現地価格+10%+送料」で手に入る。そういう時代に百貨店は、海外の何倍もの値段でバイマと同じ商品を売っているのだから、売れるはずがないだろう。平日に百貨店の店内を歩くと、客よりも店員の数のほうが多い。もはや百貨店は業態的に終わっているのだ。


 だから退職金を5000万円上乗せしてでも……となるわけで、そのために企業は内部留保を蓄えているという一面もある。政府・与党は来年度の税制改正で、賃上げをした企業は法人税を軽減し、賃上げをしなかった企業に対しては軽減措置の縮小や取り消しを検討していると報じられたが、そんな脅しをかけても、企業からすれば背に腹は代えられないので、ほとんど効果はないのである。


 この問題の解決策は、企業が不要な人員を解雇できる制度を整えることだ。スウェーデンでは、修正社会主義の下で企業が人を解雇できなくて社会が硬直化したため、解雇できるようにルールを変えた。ドイツもシュレーダー首相(当時)が「アジェンダ2010」で同様の改革を断行した。


 企業が簡単にクビを切れるようにするひどい制度だと批判する向きがあるかもしれないが、それは違う。その一方で、失業手当を手厚くしたり、解雇された人たちが21世紀に飯が食えるような新しい技術やスキルを身につけられる職業訓練システムをしっかり整えたりしたのである。


 要するに今の日本の問題は、人手不足なのに低賃金の一方で、業界によっては人余りなのに給料が高止まりして、トータルの生産性が下がっていることなのだ。ここにメスを入れ、再雇用のための職業訓練システムを充実しない限り、日本人の給料は未来永劫、上がらないだろう。


※週刊ポスト2017年12月15日号

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