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「他社の電気自動車が増えるほどに不利になる」テスラが依存してきた"ある収益源"

12月9日(木)11時15分 プレジデント社

電気自動車大手テスラは、カリフォルニア州シリコンバレーにある本社をテキサス州のオースティンに移転すると発表しました=2021年09月25日 - 写真=Sipa USA/時事通信フォト

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電気自動車大手のテスラの業績が好調だ。2020年度の決算では、自動車販売収入が前年比30%増となった。ツイッターなどで「会計クイズ」を発信する福代和也さんは「テスラの売上の8割以上が電気自動車(EV)の販売収入だが、そのほかにも意外な収益源がある。それは決算書を読めばすぐにわかる」という——。
写真=Sipa USA/時事通信フォト
電気自動車大手テスラは、カリフォルニア州シリコンバレーにある本社をテキサス州のオースティンに移転すると発表しました=2021年09月25日 - 写真=Sipa USA/時事通信フォト

■「意外な収益源」を持っているテスラ


皆さんは、電気自動車を作る「テスラ」という会社をご存じですか?


自動運転機能を備えた電気自動車の製造や、経営者のイーロン・マスク氏の宇宙旅行が話題になるなど、様々なメディアで取り上げられているので社名を知っている方も多いと思います。テスラは電気自動車メーカーなので、主な収益源は自動車の販売収入です。一方で、テスラは「意外な収益源」を持っています。


今回は、テスラの直近2年分の損益計算書を比較し、テスラの最近の経営状況と「意外な収益源」がどういったものなのかを読み解いていきましょう。


さっそく問題です。電気自動車を製造・販売するテスラが出した、2019年度と2020年度の損益計算書が並んでいます。どちらが最新の損益計算書か当ててみて下さい。


図表=筆者作成

■自動車販売収入の急増が黒字化の原因なのか


それでは正解の発表です。正解は選択肢①がテスラの最新の損益計算書でした。実は直近の2020年度になって、営業利益が黒字に転換したのです。黒字転換の背景を、決算数値から解説していきます。


図表=筆者作成

まず、テスラの売上構成をご覧ください。売上高の約8割が「Automotive sales」で構成されていますね。日本語に直すと「自動車販売収入」となります。これは、電気自動車を販売して得た収入ですね。


図表=筆者作成

実は、自動車販売収入は増加し続けています。特に2019年から2020年にかけては、前年比+30%も増加しています。この背景には、2019年秋に稼働を開始した中国・上海工場でModel3(廉価版の電気自動車)を大量に製造できるようになったことが挙げられます。


図表=筆者作成

そのため、テスラが開示している総出荷台数は前年比+75%、総生産台数は前年比+88%と急増しています。


図表=筆者作成

このように、自動車販売収入が急増したことで、営業利益が黒字になったように見えますね。


■黒字化を支えた「CO2排出権」


このほかにも要因があるかもしれないので、改めてテスラの売上高の内訳を確認しましょう。すると、「Automotive Regulatory Credits」という見慣れない項目があります。2020年度には、この売上が約15億ドル計上されている状態です。


図表=筆者作成

「Automotive Regulatory Credits」を日本語に訳すと、「CO2排出権取引」となります。一言で表すと、ほかの自動車メーカーに「CO2排出権」を販売して得た収益です。


実は、自動車メーカーには「CO2排出量の上限」が排出権という形で与えられています。その権利で許容されたCO2排出量を超える場合には、CO2排出権が余っている他社から排出権を買い取らなければなりません。


この取引制度は、1990年にアメリカ・カリフォルニア州で始まったものです。現在は、アメリカのニューヨークやマサチューセッツなどほかの州や、EUでもこの制度が取り入れられるなど、広がりを見せています。


■EV販売数が増えるほど排出権の取引額も増えていく


CO2排出権取引が活発になった背景には、2015年のパリ協定があります。この協定では、世界全体の長期目標として、CO2など温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」が提唱されました。これを受けて、自動車メーカーにはCO2排出量の厳しい規制が課せられています。


しかし、電気自動車よりもガソリン車のほうが航続距離が長いことや、充電スポットがまだ十分ではないこと、価格がガソリン車よりも高額なことなどから、ガソリン車の人気は未だ根強いものとなっています。


したがって、ガソリン車を大量に販売しなければいけない自動車メーカーは、どうしてもCO2排出規制で設けられた基準を超えてしまうのです。


図表=筆者作成

しかし、テスラは電気自動車を中心に販売しているため、CO2を排出しません。そのため、CO2排出権の枠が多く残っており、その枠をほかの自動車メーカーに販売しています。


図表=筆者作成

こうして、テスラはCO2排出権の販売収入を得ているわけです。先ほど紹介したように、このCO2排出権は自動車の販売台数に応じて付与されます。したがって、電気自動車の販売が好調なテスラは、販売台数の増加に合わせて排出権の取引額も増えていくのです。


■排出権ビジネスにはデメリットもある


排出権の需要は高いので、2020年には約15億ドルという前年比で3倍近い排出権収入を計上しました。


図表=筆者作成

このように大きな額の排出権収入を計上したテスラですが、その影響は財務数値に表れています。


テスラの最終利益を過去3年分確認すると、こちらも2020年に7億ドルの黒字を計上していました。ここで、先ほどご紹介した排出権収入15億ドルを思い出してください。排出権収入は、厳密に言えばテスラの本業である「電気自動車の製造・販売」とは関係ありません。もし、この15億ドルがなかったとしたら、2020年の最終利益は赤字だった可能性があります。


つまり、本業である自動車販売の売上を伸ばしていくことができなければ、安定して黒字化していくことはできないのです。


2021年上半期現在、世界のEV販売台数が前年同期比160%増の260万台になるなど、多くの自動車メーカーは、電気自動車の製造に乗り出しています。もし今後も、電気自動車の販売が増えていけば、自社に与えられているCO2排出権の範囲内で、ガソリン車を販売できるようになるかもしれません。そうなると、テスラの排出権を買う自動車メーカーがいなくなる可能性は十分にあります。


■排出権収入がなくても黒字化を達成


テスラの2020年度決算を見ると、排出権収入によって黒字化したと言える状態でした。ただ、排出権収入への依存体質は少しずつ改善されつつあります。


テスラは本業である自動車販売の売上を伸ばしており、21年4〜6月期においてはCO2排出権収入なしで黒字を達成しています。このまま自動車販売の売上を伸ばしていくことができれば、排出権収入に頼らずに安定して黒字の水準を保つことができるでしょう。


図表=筆者作成

テスラの最新の経営状況や意外な収益源を解説してきました。


2020年までのテスラは、本業の自動車販売収入ではなく、排出権収入によって最終利益が黒字化していました。ただ、2021年4〜6月期は、排出権収入がなくても黒字になっており、排出権依存からの脱却が進んでいるようにも見えます。


今後は、四半期や通期の決算において、「自動車販売収入が伸びているか」と「排出権収入を除外して黒字化するか」が注目ポイントとなるでしょう。


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福代 和也(ふくよ・かずや)
大手町のランダムウォーカー、Funda 代表取締役
学習意欲の高い個人や企業研修向けに、数字でビジネスを考える思考を身に付けるWEBアプリを提供しています。著書『世界一楽しい決算書の読み方』は発売開始1年間で20万部突破。TwitterやInstagramにて「#会計クイズ」を発信中。SNSトータルフォロワー数は約15万人。
https://www.funda.jp
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(大手町のランダムウォーカー、Funda 代表取締役 福代 和也)

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