塾に通わず、現役で東大合格できた…「スマホ漬け」なのに成績がぐんぐん伸びた東大生の"YouTube視聴リスト"
2024年12月13日(金)17時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/5./15 WEST
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■「スマホ」と「勉強」は両立できる
「子供が家に帰ってもスマホばかり見ていて心配」
「子供の成績が悪いのはスマホのせいだと思う」
「子供がスマホばかり見て馬鹿にならないか不安」
世の中の親御さんたちは、このようなスマホにまつわる子育ての不安が尽きないでしょう。筆者も小学生から高校生までさまざまな児童、生徒の学習支援に携わってきましたが、保護者の方から聞く悩みの多くは「スマホとの向き合い方」に関するものでした。
確かに生徒たちと話していても、「YouTubeの動画のあのシーンが良かった」とか「あのYouTuberはめちゃくちゃ推せる」とか、そういった会話を交わすことはもはや日常です。大人でさえYouTubeを見たことがない人のほうが少数派ではないでしょうか。
本稿ではスマホを最大限有効活用することで、独学で東大に現役合格した筆者の経験談をふまえて、「では、どうすればYouTubeと勉強を両立させていけるのか」という話をしていきます。勉強に役立つおすすめのチャンネルなどを具体的に紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
■“現役東大合格”にYouTubeが役立った
まず筆者から皆さんに覚えておいていただきたいこと。それは「YouTubeを制する者は、受験を制する」ということです。
「YouTubeばかり見ていると頭が悪くなってしまうかもしれない」。実はかつて筆者もそうした意識を持っていました。ただ、最近はこの考え方が完全に過去のものになろうとしています。
コロナ禍以降、スマホを使ってオンラインで学習するという新しい勉強スタイルが拡大しました。そして最近は、YouTubeにも、学校や塾の授業に匹敵するようなレベルの「授業動画」や、勉強法を教えてくれる「勉強指導系の動画」など、多岐にわたる“教育系”というジャンルの動画が投稿されています。
まさしく筆者が東大受験をしたのは2022年のコロナ禍真っただ中で、ちょうどオンライン型の学習法が普及していたタイミングでした。筆者が東大に独学で合格することができたのは、もはやスマホのおかげと言っても過言ではないと思います。
このように、スマホ型の学習だけでも最難関の東大入試を突破できるような時代です。「YouTubeを制する者は受験を制する」というのは、将来的には受験業界の常識となっていくと確信しています。
もしかしたら読者の皆さんの中には「筆者は地頭が良かったから」と疑問を持たれた方もいるかもしれません。断言しますが、一切そんなことはありません。スマホは使いましたが、何一つ特殊な勉強法をしたわけではありませんので、誰しもがマネできる再現性の高いものとなっていると思います。
■英語の成績を上げたいなら、このYouTubeチャンネル
ここからは私自身が東大受験に向けて実践していたYouTube勉強法を紹介します。おすすめのYouTubeチャンネルを一覧にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。(図表1)
筆者作成
初めて筆者がYouTubeを使って勉強することの効果を実感したのは「英語」の勉強をしたときでした。元々は、市販の参考書や教科書を使って英語の勉強をしていたのですが、付属のCDに英語音声が収録されていることが多く、とても不便に感じていました。そこで、もっと簡単に英語の音声を聞ける方法はないかと思ってスマホを開いたのが始まりでした。
ふとYouTubeを開いて「英語 勉強」と検索してみたら、たくさんの素晴らしい授業動画と出会うことができました。特に筆者が重宝したのは「Hapa英会話」というチャンネルでした。このチャンネルでは、Jun先生が日本語と英語を交えながら、日本人が苦手になりやすい英文法や英会話表現などを教えてくれます。
例えば「〜したい」を意味する“want to”という表現は,“Do you want to order the pizza?”(ピザを頼んでもらえない?)という「〜してくれない?」という意味になることがあるといったような解説です。
日本では「『〜したい』という欲望を表すときに“want to”を使う」と単純化して、機械的に覚えてしまっているきらいがあると思います。しかし実際には“Can you order the pizza?”(「ピザをオーダーしてくれない?」)と同じ意味で、“Do you want to order the pizza?”とも表すことができると知り、「“want to”は広い意味があるのだ」と理解を深めることができたのです。
■“大学受験レベルの英語”を手軽に学べる
この例は「Hapa英会話」の動画で紹介されていたものです。日本で勉強していてはなかなか理解できないような英語のニュアンスはたくさんあると思いますが、このチャンネルでは、こうしたモヤモヤを解消してくれます。
実際、東大受験にあたっては、さまざまな英語のニュアンスを理解していないと解けない問題が出ることが往々にしてあります。もちろん他大学の受験でも一緒です。そうした意味で、筆者は英語力を身に付ける上でとても重宝しました。
このように、YouTubeを使って英語を勉強するメリットは、「ネイティブがどのように英語を使っているのかがわかる」だけでなく、「学校では習えない受験レベルの英語を先取りして勉強できる」など、山ほどあります。
筆者の場合は、高校生の比較的早い段階からたくさんの英語コンテンツを通じて勉強を進めていたので、現役で東大合格できるだけの英語力を最終的に身に付けることにつながりました。しかし、筆者が実践した勉強法は「英語動画を見る」だけではありませんでした。さらに有効活用する秘訣(ひけつ)は、この先に凝縮されています。
■記憶を定着させるために“スマホ”をフル活用
当初、筆者は前述の「Hapa英会話」をはじめとしたさまざまなチャンネルを使って英語を勉強した気になっていましたが、しばらくして「英語力が思ったほど身に付いていない」ということに気づきました。
それもそのはずでした。受動的に見ているだけでは脳に負荷がかからないので、動画の内容を記憶できていなかったのです。そこで、わざと能動的に脳に負荷をかける、アウトプットを重視する学習方法を組み合わせるようにしました。
具体的な方法としては、次のような3つのステップです。
① 英語の「授業動画」で表現の使い方を学ぶ
② 学んだ表現を用いて、「英作文」をしてみる
③ 英作文を、先生やAIに「添削」してもらう
例えば、YouTubeで英語を教えてくれる動画を見て、“want to”という表現を学んだとします(①)。
そして次に、“Do you want to close the window?”(「窓を開けてくれない?」)、“Do you want to write an E-mail to him?”(「彼にメール書いてくれない?」)などと自分で英作文をしてみます(②)。実際にペンを動かして書いてもいいですし、筆者のようにスマホのメモに打ち込んでもいいでしょう。スマホに全て記録するようにすると、後から簡単に見返せて英語力の伸びを実感しやすくなりました。
その上で、この文章が表現として適切かどうかを先生、あるいは「ChatGPT」や「Gemini」といった生成AIに添削してもらうのです(③)。筆者が受験したタイミングでは、「Grammarly」という英作文を添削してくれるアプリがはやっていた時代だったので重宝しました。学校の授業では不足しがちなアウトプットの練習をいつでも一人で行えたので、“東大入試で必要とされる英作文の力”を身に付けることができました。
写真=iStock.com/Robert Way
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Robert Way
■帰国子女を抑えて、学年1位になった
動画を見た後は、その内容を忘れないように自分でアウトプット。しかし、それだけでは正しく内容を理解できたかどうかがわからないため、添削してもらう……。これを繰り返すのです。
このようなスタイルで進めていくと、YouTubeで学んだ内容を“非常に効率よく、頭にインプットできる”ようになります。②や③の作業は、スマホを使いこなすいまの世代の生徒たちなら、何も抵抗なく進められると思います。教科書や問題集だけの勉強では“やらされ感”が出てしまうことがありますが、この方法であればスマホを使っていながらも「良い勉強」ができるのです。
筆者はさらに、AIや日本人の英語の先生に添削してもらうだけでなく、YouTubeで習った表現をALT(外国人の英語の先生)との「会話」で使ってみるというチャレンジもしていました。書くだけではなく、話すことも取り入れたのです。
すると、当初は英語に苦手意識のあった筆者ですが、みるみるうちに英語の成績が上昇し、学年に30人ほどいた帰国子女を抑えて学年1位になりました。海外に旅行した経験もなく、もちろん英語・英会話教室にも、留学にも行ったわけでもありませんでしたが、国内にいながらにして独学で英語力を伸ばすことができたわけです。これは紛れもなく「スマホ」と「YouTube」のおかげです。
■「今日は何を学んだの?」と質問するといい
ここまで紹介してきたYouTubeを使った学習法は、「動画を見ること」に「ちょっとした工夫を加える」ことで、「脳に記憶を定着させる」という勉強法でした。
実はこの「ちょっとした工夫」ですが、英作文やAI活用だけではなく、ほかにも効果的な方法があります。それは、「自分の言葉で、動画の内容を説明する」というものです。
筆者はこれまで多くの小学生や中学生、高校生に指導を行ってきましたが、「このYouTubeを見て予習してきてね」という宿題を出していました。そして、次の授業では生徒たちに“動画から何を学んだのか”を必ず説明してもらっていました。
この“何を学んだのか”を自分で言語化するためには、動画の内容を一度理解しないといけませんから、これも結局は、英作文やALTの外国人の先生と会話するのと同じような効果があるのです。
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west
ちなみにこの方法は、家庭での学習習慣にも応用できると思います。教えている生徒たちを見ていると、教科書や問題集で勉強したあとは「復習していない」ことが多いのです。ですから、ぜひ学校や塾などから家に帰ったお子さんたちには「今日は何を学んだの?」という質問をしてみてください。
学んだことを説明するためには、脳をフル回転させて勉強した内容を思い出さなければなりません。もしお子さんが「○○を学んだよ」と説明ができていれば、それは完璧に理解できているという証しになります。
■スマホの“使い方”で、周りと差をつける
結局、勉強の本質は「何を使って勉強するか」というところにはありません。教科書だろうが、塾のテキストだろうが、YouTubeだろうが、そこまで大差はないのです。一番大切なのはそれらをどう使いこなすか、ということです。
YouTubeは、この「使いこなす」という点において、スマホ世代のいまの子供たちとの相性が抜群にいいのではないかと考えています。
本稿で皆さんにお伝えしたかったことは、YouTubeも活用の仕方では東大合格に繋げられるほど強力な教材となってきているということです。今はまだ主流とは言えないかもしれませんが、うまく活用できれば、周りと差がつくことは間違いないでしょう。
ですから「塾へ行かないと、行かせないと勉強はできない」「良い参考書や教材を使わないと、買い与えないと成績が上がらない」と嘆く必要はありません。スマホを持っている環境を生かして勉強する方法を実践してみてください。
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清野 孝弥(せいの たかや)
現役東大生ライター
2003年生まれ。東京大学法学部の現役学生。公立高校から塾や予備校に通わず、独学で東京大学の文科I類に現役合格。独学で培った勉強法や各科目のノウハウをYouTubeなど数々のオンライン媒体で公開し、授業動画は100万回再生超え。現在は、明豊高校九大専科コースなど全国の高校現場で学習指導や進路指導などを提供している。
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(現役東大生ライター 清野 孝弥)