女子を利用して情報拡散、ISISの恐ろしい「SNS戦略」

12月28日(金)6時0分 ダイヤモンドオンライン

20世紀は、大手企業や政府などが権力を持つ「オールドパワー」の時代だったが、テクノロジーの発展の結果、いまや大組織がパワーを溜めこむことは不可能となった。21世紀は、個人でも際限なく大きな権力や影響力を持てる「ニューパワー」の時代だ。

世界に起こっているそうしたパワーの変化とその影響を鮮やかに読み解き、米ニューヨーク・タイムズ紙、英フィナンシャル・タイムズ紙など各国メディアで絶賛されている書籍が『NEW POWER これからの世界の『新しい力』を手に入れろ』だ。日本でも発売早々、ビジネス書書評メルマガ「ビジネスブックマラソン」(vol.5170)にて「今年最高の一冊」、いまの世界の変化に対応するための「救世主」と評されるなど、大きな話題となっている。

著者は、ハーバード大、マッキンゼー、オックスフォード大などを経て、現在はニューヨークから世界中に21世紀型ムーブメントを展開しているジェレミー・ハイマンズと、約100ヵ国を巻き込み、1億ドル以上の資金収集に成功したムーブメントの仕掛け人であり、スタンフォード大でも活躍するヘンリー・ティムズ。

本書ではこれからの時代におけるパワーのつかみ方、権力や影響力の生み方、使い方について、まったく新しい考え方を紹介している。本記事では、その刊行を記念して一部を特別公開したい。「ニューパワー」が悪用されたなら、どれだけの影響力を発揮してしまうかという恐ろしい例だ。


ISISが試みた「巧妙な拡散戦略」


「ときにはただなりゆきにまかせて、深呼吸をしよう」


 夕陽に向かっていく飛行機がぼんやりと写っている写真を背景に、親しみやすい白いブロック体のメッセージが浮かび上がっている。これはアクサ・マフムードが「タンブラー」(Tumblr)の人気ブログに投稿したミームのひとつだ。


 ブログを見るのが好きな人なら、よく見かけるタイプの投稿だ。だが、切ない気持ちを悶々とブログに綴る女の子たちとは違って、アクサ・マフムードの言葉には揺らぎがなかった。


 愛嬌のある絵文字やカラフルな風景写真やGIF動画を織り交ぜながら、アクサ・マフムードは読者に強く訴える。さあ荷物をまとめて、飛行機に乗って、飛び立つのよ——ISIS(イスラーム過激派組織)に参加するという大義のもとに。


 彼女の成功は、ニューパワーが役に立つのは募金や商品の販売促進だけではないことを、我々に思い知らせる。


 スコットランド出身の彼女は、2013年、19歳のときに故郷のグラスゴーを飛び出た。人懐っこい顔をした名門校の生徒で、両親はまさか娘がシリアのISISへ“移住(ヒジュラ)”するとは思ってもいなかった。だが、これはブログにはよく登場していたトピックだった。ヒジュラの意味を、非イスラム教の土地と「決別するか、捨て去るか」して、「イスラム教の息づく処」へ移り住むことだと説明している。


 マフムードは「ISISのポスターガール」と呼ばれ、彼女のタンブラーブログやツイッターのアカウント(すでに削除されている)には、21世紀のコミュニケーション戦略が明確に表れていた。


 しかも、彼女だけではないのだ。いわゆる「ジハード戦士の花嫁」は何人もいた。彼女たちはタンブラーやツイッターを駆使して、新メンバーの候補者たちに対し、ヒジュラの準備のためにお勧めの所持品リストを伝えるなど、じつにきめ細かいアドバイスや指導を行っていた。


 マフムードはツイッターで戦士たちに激励のメッセージを送った。「ウーリッジ、テキサス、ボストンなど、各地からやってきた兄弟たちに続きなさい。恐れずに……アラーはつねに信じる者とともにある」


 さらにマフムードと仲間たちは、オンライン暗号メッセージアプリ「シュアスポット」を使って新メンバー候補のイギリス人たちを教育したり、『デイリー・レコード』紙によると「シリアから秘密のアドバイスを送っていた」。


 仲間と直接コミュニケーションを取ることで、マフムードたちはISISのコミュニティの形成に貢献し、ISISの呼びかけに応えた者は新たな家族の一員としてサポートを受けられる、という認識を浸透させた。


 故郷の家族についても、気を配ることを忘れない。マフムードは勧誘相手らに対し、きわめて戦略的に思いやりを示し、自分も家族を捨てるのがどれだけつらかったかを振り返って、感情に訴えるメッセージを書いている。


「いちばんつらいのは、国境を越えたあと、最初に電話をかけるとき」マフムードがフォロワーに向けて書いたブログの文章は、何度もリブログされ、多くの共感を集めた。「電話から家族のすすり泣きが聞こえてきて、お願いだから戻ってきて、と泣きつかれたりすると本当につらい」





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