三菱重工が狙う「残存者利得」 あえて「逆風」に挑む理由

12月29日(日)7時0分 J-CASTニュース

三菱日立パワーシステムズの公式サイト

写真を拡大

スペインで2019年12月上〜中旬に開かれたCOP25(第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が注目されるなど、世界的に化石燃料に対する批判が高まる中で、三菱重工業は12月18日、火力発電設備事業を強化する方針を発表した。


具体的には、三菱重工と日立製作所が共同出資する三菱日立パワーシステムズ(MHPS)について、三菱重工が35%分の株式を日立から譲り受け、完全子会社にする。MHPSは火力発電設備を手掛けており、今後は三菱重工との連携を強めながら、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないLNG(液化天然ガス)発電向けのタービンなどに注力していくという。



日立との攻防




MHPSの株式譲渡を巡っては、三菱重工と日立の間に一悶着あった。両社の火力発電設備事業を統合して2014年に設立されたMHPSは、07年に日立が受注した南アフリカの石炭火力発電所のプロジェクトを引き継いでいたが、現地で起きた労働紛争などのあおりを受けて建設費用が拡大して、損失が発生。三菱重工は日立側のプロジェクト管理に問題があったとして、日立に約7700億円の支払いを求めていた。この和解策として、日立が保有するMHPSの全株式を三菱重工に譲渡して、さらに2000億円を三菱重工に支払うことになったのだ。



なぜ、三菱重工は世界的に批判が高まる火力発電を重視するのか。理由はある意味でシンプルだ。航空機や防衛分野、宇宙ロケット、産業用機械など幅広い事業分野の中で、足元で最も儲かっているのが火力発電設備などを手掛ける部門。火力発電への批判は環境意識が高い国々や環境団体が中心になっており、発展途上国にとって火力発電は産業の発展や国民の生活向上のためにまだまだ無くてはならない電源だ。火力発電批判を背景に世界のライバル企業が事業規模を縮小する中で、三菱重工に持ち込まれる案件が増えてくると見込んでいるのだ。「残存者利得」(ライバルが撤退した後、生き残った企業が市場を独占することで得られる利益)狙いといっていいだろう。



金融市場のまなざし




裏返しで、事業の「選択と集中」を進めている日立は、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」などのデジタル分野を事業の中心に据えようとして日立化成を昭和電工に売却すると決めたばかり。MHPSは既に日立本体から切り離しており、南アフリカの一件の処理に合わせて、三菱重工にくれてやろうと考えたとしてもおかしくない。さしずめ2000億円は「手切れ金」か。



環境NGOの調査によると、石炭火力発電の開発企業に対する世界の融資額ランキングで、日本のメガバンクが上位を独占しているという。それは世界の潮流に逆行しており、COP25の開催に前後して、米ゴールドマン・サックスなど欧米の大手金融機関が石炭火力発電事業への融資を絞る方針を明らかにしている。三菱重工はMHPSの完全子会社化で、残存者利益を独占できるのか、それとも金融市場から失望されるのか。転換期の難しい判断だったことは間違いないだろう。

J-CASTニュース

「三菱重工」をもっと詳しく

このトピックスにコメントする

「三菱重工」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ