タガが外れたか?急激に進む安倍政権の劣化

12月31日(火)6時0分 JBpress

中国・成都で開催された第8回日中韓サミットに出席した安倍晋三首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

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(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 最近の安倍内閣と自民党を見ているとタガが外れてしまったのではないか、という危惧を抱いてしまう。「タガ」というのは、桶や樽などのように円形に組んだ木版の外側にはめて固定する輪のことだ。寿司桶などは、金属の輪で固定してあるものが多い。それが外れるわけなのでバラバラになってしまう。つまり無秩序になってしまうということである。

 桜を見る会に1万8000人以上も招待したことも、そこに数百人もの安倍晋三首相の後援会員が入っていたことも、まさにタガが外れてしまっていると言う他ない。


秋元司議員、なんと公然たる金の受け取り方か

 年の瀬も押し詰まった12月26日、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業への参入を目指していた中国企業から370万円相当の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部は秋元司衆議院議員(自民党を離党)を逮捕した。

 秋元容疑者は、2017年8月〜2018年10月までIR担当の内閣府副大臣であった。その在任期間中2017年9月下旬ごろ、中国企業「500ドットコム」側から都内で現金300万円を受け取っていたほか、2018年2月中旬ごろには北海道への家族旅行の招待を受け、旅費など約70万円相当の利益供与を受けていたという。

 贈収賄事件では、金を受け取った側に職務権限があるか否かが、いつの場合も大きな争いになる。だから普通は、こういうときには金の受け取りに慎重になるものなのである。だが秋元容疑者の場合には、報道を見る限り、なんのためらいもなかったようだ。特捜部も収賄の立証に相当な自信を持っていると思われる。

 権力の腐敗を象徴するのが収賄事件である。収賄容疑での現職国会議員の逮捕は、2002年の鈴木宗男衆院議員(当時)の逮捕以来、実に17年ぶりのことである。12月29日付産経新聞は、「政官財界の不正の監視役を担ってきた特捜部が長年低迷してきたことで、捜査対象となる側の“緩み”を指摘する見方もある」と報じている。同記事の中で宗像紀夫弁護士・元東京地検特捜部長は、「『長い間、国会議員を逮捕していなかったからなのか、大胆であまりに無警戒』」と指摘している。

 この事件に関連して、自民党の白須賀貴樹衆院議員、勝沼栄明前衆院議員の事務所も家宅捜索を受けている。さらに広がりを見せる可能性もある。

 そもそもIRが本当に景気拡大につながるのか。そんな保証などどこにもない。かつてリゾート法(総合保養地域整備法)が作られたが、その多くが構想倒れに終わり、環境破壊や地方財政の圧迫を招いた例もあった。

 カジノで外国から観光客をさらに増やそうという算段のようだが、カジノに来る観光客などたかが知れている。多くの外国人観光客は、日本の自然や歴史、人情を気に入っているのだ。この面こそ重視すべきではないのか。賭け事は、競馬、競輪、競艇、オートレース、パチンコなど、日本には十分すぎるくらい揃っている。


文科省の迷走もひどかった

 2019年は、文科省の迷走が続いた都市でもあった。まずは萩生田光一文科相の「身の丈」発言で大問題になった「英語の民間試験」である。

『AERA』(2019年9月2日号)のアンケートによると、「予定通り実施すべき」はわずか4%、「不安や問題が解消されない状況では延期すべき」が23%、「中止すべき」は実に72%にのぼっている。このアンケート回答者の半数近くは高校・大学の教員だそうである。これだけの反対論を押し切って強行しようとしたこと自体、文科省と萩生田氏の思い上がりである。結局、中止になったが、受験生や教員など学校関係者を振り回した責任は大きい。

『文芸春秋』(2020年1月号)に、作家・数学者の藤原正彦氏の「『英語教育』が国を滅ぼす」という論考が掲載されている。同氏はこの中で「世界で一番英語がうまいのはイギリス人だ。なのにイギリスはほぼ二十世紀を通して経済的に斜陽だった。英語が世界一下手な日本人は、その間に最も大きい経済成長を遂げた」と指摘している。いつもながらの鋭い指摘である。

「英語の民間試験」に続いて、来年(2020年)度から大学入学共通テストで導入予定だった国語と数学の記述式問題についても延期することが決まった。50万人もの回答をどうやって採点するのか。しかも採点者によって採点が違ってくることも分かっている。こんな試験をさせられる高校生の身になってみよ。

 いったいなぜこんなことになるのか。裏で教育産業、受験産業がうごめいているとしか思えない。IR汚職のようにならないことを願うばかりだ。


陰りが見え始めた安倍内閣の支持率

 朝日新聞(12月24日付)に掲載された世論調査が興味深い。安倍内閣の支持率は38%とついに40%を切り、不支持42%が上回ることになった。

「桜を見る会」が大きく影響していることは間違いない。安倍首相の説明は「十分ではない」との回答が74%になり、「十分だ」の13%を大きく上回っている。自民党支持層でも「十分ではない」が67%もあった。招待者名簿を復元できないとしている対応には、「納得できない」が76%、「納得できる」はわずか13%であった。

 ただ、引き続き国会で解明に取り組むべきかという質問には、「取り組むべき」は40%で、「その必要はない」が50%になっている。ここらあたりの国民のバランスは絶妙である。「桜を見る会」は問題が大きいが、野党がいつまでもこの問題にこだわることにも批判的だということだ。

「桜を見る会」では、悪質なマルチ商法を行ない破綻した「ジャパンライフ」の元会長が招待されていたことが問題になった。だがこれだけではなかった。夕刊フジ(12月20日付)によると同社は元官僚や元新聞社幹部に2005年〜2017年度にかけて、顧問料を計約1億4000万円も渡したことが明らかにされている。この中には、元朝日新聞政治部長も含まれており、約3000万円も受け取っていたというのだ。朝日新聞は厳しく自己批判すべきである。

 世論調査に戻る。同調査では安倍首相の総裁4選についても聞いている。「反対」63%、「賛成」23%となっている。長期政権のひずみが目立っており、当然の傾向であると思う。また立憲民主党、国民民主党、社民党の合流についての質問では、「1つの政党にまとまった方がよい」が38%、「別々の政党のままの方がよい」が38%と同数になっている。合流への期待はあまりないということである。これも当然の結果であろう。要は、かつての民主党、あるいは民進党に戻るだけのことだからだ。

 くっついたり、離れたり、いつまでもこんなことにかまけていると国民からはさらに見放されるだけになることを真剣にこれらの党は考えるべきだ。

 この野党3党と対照的に元気なのが「れいわ新選組」である。産経新聞(12月19日付)によると同党は次期衆院選に100人を擁立する構えだが、12月10日時点で320人が公募に応じているという。山本太郎代表は、9月に北海道・利尻島から街頭演説を始め、3カ月間で38都道府県を回ったそうだ。12月18日にJR新宿駅南口でおこなった街頭演説には、始める前から黒山の人だかりができたというのだ。

 そこでおこなった演説の一部が的を射ている。「野党がかたまりになって選挙に勝てるなら、とっくの昔に勝っている。民主党の再結集にどれぐらいの人が期待するのか」。まさしくその通りである。少なくとも山本氏の訴えや行動には本気さを感じる。だから聴衆が集まるのだ。

 消費税に関して共産党は先の参院選で「増税反対」しか訴えなかった。何度も指摘してきたが、本来なら共産党こそ、「5%に戻せ。そして次には廃止を」と言うべきだったのだ。山本氏の方には筋が通っている。最近になって共産党も「5%に下げよ」と言い始めたが、れいわ新選組に追随しただけである。野党はれいわ新選組の本気さに学べ、と言いたい。

筆者:筆坂 秀世

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