西島秀俊、「いまだにプレッシャーで死にそうになる」 活躍の裏に謙虚でブレない姿勢

1月1日(水)8時30分 クランクイン!

 俳優の西島秀俊が、映画『2/デュオ』(1997)以来、諏訪敦彦監督と22年ぶりにタッグを組んだ最新作『風の電話』。震災によって全てを亡くした少女・ハルに、同じ被災者として心を寄せる男性・森尾役に挑んだ西島が、葛藤したという諏訪組独特の撮影現場を振り返るとともに、作品のオファーをもらうたびに、「いまだにプレッシャーで死にそうになる」という、俳優としての変わらぬスタンスを語った。 本作は、東日本大震災以降、“天国に繋がる電話”として、3万人以上の人々が訪れている電話ボックス<風の電話>をモチーフにした初の映像作品。広島から故郷の大槌町へ、家族を亡くした少女ハルが、傷ついた心を抱えながら、見知らぬ町を旅する姿を追いかける。『ブラック校則』などで注目の新人女優・モトーラ世理奈が主人公・ハルを演じるほか、西島、三浦友和西田敏行、山本未來ら豪華キャストが彼女を旅先で励ます重要な役で登場する。

 諏訪監督の商業映画デビュー作となった『2/デュオ』で、売れない若手俳優の役を演じた西島。当時は、シナリオのない即興演出というスタイルで、「果たして映画が撮れるのか?」と諏訪監督自身が模索していた時代だが、あれから22年、西島自身も役者として実績を積み重ね、双方が成熟した中で再タッグが実現した。「今や諏訪監督のスタイルが確立していて、当時とは全く違う空気感でしたね。現場も落ち着いていて、安定感がありました」。

 ただ、森尾という役は、経験豊富な西島にとっても極めて難しい挑戦となったようだ。「前作の『2/デュオ』は、若くて売れない役者という、当時の僕とリンクする部分があったので、その場で感じたことが言葉となって出てきましたが、今回は自分が今いる状況と役があまりにも離れすぎていて、うまく言葉が湧き出てこないという苦しさがありました。通常は脚本のセリフが助けになるのですが、諏訪監督の場合はそれがない。果たしてこれで正解だったのか…今も自問自答しています」と胸の内を明かす。

 特に、旅の途中、森尾という役をまといながら、リアルな悩みを抱える本物のクルド人ファミリーの中に西島は突然放り込まれるが、物語と実話が交錯するドキュメンタリーのようなシーンに戸惑い、そして苦しんだ。「俳優同士の演技でシーンを作っていくのとは全く違うので、本当に難しかったですね。カメラは1時間回しっぱなし、そこでクルド人の方たちの切実な問題を真剣に聞くわけですが、リアルな話をしている中で、果たして僕は森尾という“役”として、ここにいていいのか…かなり葛藤しました」。

 それでも、「諏訪監督にもう一度呼んでいただいて、本当にうれしかった」と喜びをあらわにする西島。「独特の手触りで撮っていく監督なので、確かに現場は特殊です。でも、その特殊な現場をまた体験させていただけるといううれしさも一方にはあって。さらに今回は、モトーラさんが主人公を演じていますが、彼女の存在も刺激的でした。何か言葉を向けられると、ハルとして10分でも20分でも考え続けるところがすごい。役に対して絶対に『嘘をつかない』という彼女の意志の強さは、役者としての原点を見つめ直すいい機会にもなりました」。 もはやベテランの域に差し掛かった西島だが、気持ちは新人の頃とほとんど変わらず、作品のオファーを受けるたびに、「自分に果たしてできるだろうか? と、いまだにプレッシャーで死にそうになる」という。さらに、個人的に興味のある役があっても、自ら手を挙げて、「やらせてください!」とアピールすることも決してしない。なぜなら、「この映画に自分は必要なのか?」という客観的な判断をできないからだと説明する。

 『2/デュオ』のときも、作品のクオリティーを心配するあまり、諏訪監督に「この役は僕じゃない方がいいものができるのでは?」と直訴したというエピソードもあるくらいだが、西島は自身のキャリアよりも、作品全体の完成度に強いこだわりを見せるのだ。ただ1点、役者として欲があるとすれば、「ご一緒していない監督や、スタッフ、役者さんがまだまだたくさんいる。だから、いろんな作品にチャレンジして、才能ある皆さんから大いに刺激を受けてみたい」と目を輝かせる。

 こうした姿勢が根本にあったからこそ、西島は、一つ一つの役に悪戦苦闘しながらも、伸びやかに自身のフィールドを広げることができたといえるだろう。特に2019年は、映画『空母いぶき』『任侠学園』からドラマ『きのう何食べた?』『磯野家の人々〜20年後のサザエさん〜』まで、バラエティーに富んだ作品に多数出演し、大きな飛躍の年となったようだ。「これまでにないくらい素晴らしい作品と何本もめぐり会えました。まさに夢のような1年。2020年もその夢が覚めずに、ずっと続いてほしいなと思いますね(笑)」。謙虚だけれど、決してブレない。一度引き受けたらとことん役を突き詰める。そしてその目的は、あくまでも「いい作品」を作るため。最新作『風の電話』に、その生きざまが、森尾となって映し出される。(取材・文:坂田正樹 写真:松林満美)

 映画『風の電話』は1月24日より全国公開。

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