BIGLOBEトップBIGLOBEニュース

NHKあさが来た ハゲタカ全盛時代に光る大阪人の「商い」魂

NEWSポストセブン1月1日(金)16時0分

 予想以上のヒットとなっている朝ドラは今年のドラマのラインナップにも影響してきそうだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。


 * * *

 いよいよ、2016年の幕が開けた。今年のテレビドラマを考えるにはやはり、NHK連続テレビ小説『あさが来た』から始めるべきでしょう。


 視聴率は12週連続20%超えで、最高値は『ごちそうさん』の27.3%にあとひと息。数字だけでなく、評判もぐんぐん右肩上がり。幕末〜明治という変革期の中で、大阪の両替商・加野屋に嫁ぎ、しなやかに、力強く自分らしく生き抜く主人公・あさ(波瑠)。その姿は凜(りん)としていて、まぶしい。


 あさの輝きは言うまでもないが、このドラマのエッセンスは『あさが来た』ならぬ、『あきない(商い)が来た』ではないか。


「商い」。加野屋を舞台にした「商い」の仕方、考え方、所作。それらが丁寧に細やかに、哲学も含めてぎゅぎゅっと詰まっていて、大きな見所になっているのでは。


 たとえば、あさの義理の父・大旦那の正吉。演じた近藤正臣は「大阪商い」の秘密を明かしている。最初は、衣装として履くぞうりの鼻緒がすべて「黒」だった。が、わざわざ小道具さんに指示を出して、茶と黒の二色にした、と。切れた時に自分で替えた、という設定を考えた上で。


「昔、鼻緒はしょっちゅう切れてたもんなんですよ。切れたら、替えなあかん。で自分の手拭いかなんかを裂いて鼻緒をとり替えた、そういう設定にした」(『あさイチ』のインタビューにて)


 この小さな工夫には、大きな理由が潜んでいた。「大阪は始末の町だからです」と近藤正臣。無駄に使い捨てしない。できるものなら直して使う。ものを循環させる。二色の鼻緒の草履を「履いてると、そういう(大阪商人の)気になれるんです」。


 始末を大切にする「大阪商人」になりきる役作り。両替商の旦那の心根を作るために、わざわざ草履の鼻緒の色を工夫して履く。画面で見ても気付かないほど細かな部分に、このドラマの「魂」がはっきりと見えた気がした。


 日本初の経済小説を書いた井原西鶴は、商売を行う上で必要な心得として「始末」「算用」「才覚」「信用」を挙げている。あるいは近江商人から生まれた「相手良し、自分良し、世間良し」という三方良しの精神は、かつて日本の「商い」の神髄として浸透していた。


 相手の立場を考え、それによって自分自身も生かされる−−。あさと家族の物語の中に、そうした「商い」の哲学の潔さ、かっこよさが透けて見える。ハゲタカ的な経済行為が世界を席巻している今だからこそ、「商い」に惹かれる。『あさが来た』が人気を集める理由の一つ、かもしれない。


 あるいは、人気急上昇中のディーン・フジオカが演じる五代友厚という人物もそう。「東の渋沢(栄一)、西の五代」と並び称され、大阪経済の牽引役だったという五代は、「上に立つ者の5ヶ条」を残している。


・愚説愚論だろうと最後まで聞く。

・地位の低いものが自分と同じ意見なら、その人の意見として採用すること。手柄は部下に譲る。

・頭にきても大声で怒気怒声を発しない。

・事務上の決断は、部下の話が煮詰まってからすること。

・嫌いな人にも積極的に交際を広めること。


 当り前のようでいて、今だってなかなか実現できないこと。商売とは、えてして倫理を無視して欲に突っ走りがち。自分自身のブレーキとして、精神性や哲学を身につけなければ−−かつての大阪商人たちはそう自覚していたのだろう。


 歴史ドラマといえば、戦国武将に維新の志士と、きな臭い戦いに偏りがちだった。そんな風潮に今、『あさが来た』が風穴を開けようとしている。商売や町の暮らしを細やかにリアルに、より深く描く中から、時代と人々の挌闘ぶりを浮き彫りにするドラマの魅力に、みんな目覚め始めた。


 さて、今年の「商い」ドラマとして、まずは1月3日、『百年の計 我にあり〜知られざる明治産業維新リーダー伝〜』(TBSひる 12時)が登場してくる。


江戸初期から続いてきた銅商・住友が、近代化の波の中で企業に脱皮していく激動のプロセス。いかにイキイキと深く、人と時代を描き出すことができるか。あえて「ドキュメンタリードラマ」と銘打っているあたりにも、チャレンジの気配が漂っている。


 いよいよ2016年、ドラマ界に「商いが来ている」。

NEWSポストセブン

はてなブックマークに保存

NEWSポストセブン

最新トピックス

芸能トピックス

芸能写真ニュース

旬なニュースを配信中 フォローしてね!

注目ワード

話題の投稿画像

ページ設定

関連ワード
あさが来たのまとめ写真 NHKのまとめ写真 大阪のまとめ写真 ドラマのまとめ写真

「あさが来た」をもっと詳しく

注目ニュース
松本潤が「イッテQ」で体を張る裏事情 まいじつ9月24日(日)19時0分
画/彩賀ゆう(C)まいじつ『嵐』の松本潤が10月8日放送の『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)にゲストで出演する。[ 記事全文 ]
漫画「おおかみこどもの雨と雪」作者・優さん死去 ナリナリドットコム9月25日(月)7時1分
漫画版「おおかみこどもの雨と雪」の作者・優さんが、亡くなったことがわかった。優さんのTwitterアカウントで、夫がファンに報告している。[ 記事全文 ]
「おっぱいが完全に綱手」 叶美香、『NARUTO』の綱手様コスが“本物”でしかない ねとらぼ9月24日(日)16時5分
叶姉妹の美香さんが9月24日、漫画『NARUTO-ナルト-』に登場する5代目火影にして究極のプロポーションを持つ「綱手」のコスプレをブログ…[ 記事全文 ]
嵐・二宮和也が明かした自分に一生付いて回る「根深い悩み」とは? アサ芸プラス9月24日(日)9時58分
9月17日放送のラジオ番組「BAYSTORM」(bayfm)で、MCの二宮和也が長年の悩みについて熱く語った。[ 記事全文 ]
歌丸また入院していた…誤嚥性肺炎「今回ばかりは死ぬかと」 スポーツニッポン9月25日(月)7時28分
落語家の桂歌丸(81)が24日、都内で行われた「芸協らくごまつり」の開会式に参加し、誤嚥(ごえん)性肺炎の治療で22日まで横浜市内の病院に…[ 記事全文 ]
アクセスランキング

本サイトのニュースの見出しおよび記事内容、およびリンク先の記事内容は、各記事提供社からの情報に基づくものでビッグローブの見解を表すものではありません。

ビッグローブは、本サイトの記事を含む内容についてその正確性を含め一切保証するものではありません。本サイトのデータおよび記載内容のご利用は、全てお客様の責任において行ってください。

ビッグローブは、本サイトの記事を含む内容によってお客様やその他の第三者に生じた損害その他不利益については一切責任を負いません。

データ提供元:アニメキャラクター事典「キャラペディア