突っ込みどころ満載のアマゾン竹筒魚蒸し料理——高野秀行のヘンな食べもの

1月2日(火)17時0分 文春オンライン


イラスト 小幡彩貴


 先日、訪れたペルー・アマゾンで、この地域独特の料理があると聞いた。竹筒の中に魚を詰めて蒸し焼きにするというもので、呼び名は「パカモト」。お祭りのときは、これを大量に作ってゲストに振る舞うという。興味を惹かれた私はワチペリ族の村を訪れた。


 料理を教えてくれたのは、村の学校で教えている五十五歳の先生と六十歳の村長。その手順は意外性に満ちていた。まず、村の裏の森へ行き、太さ十センチほどの青い竹を切り出し、長さ七十センチくらいに切る。これで節一つ分だ。



竹を切り出す



ジャングルから竹を切ってくる


 続いて、魚を獲りに行く。かつては川で捕まえていたが、今では二十五メートルプールほどの大きさの生け簀で養殖している。魚はうじゃうじゃいる。だから、話は簡単と思いきや、先生と村長は突然服を脱ぎだし、パンツ一丁になった。昔から南米の男たちはなぜかビキニのような小さいパンツを穿く。そして、二人はイモの食べ過ぎなのか、腹がぼよ〜んと出て、ビキニが肉に埋もれている。深く考えたくないが、妙にエロチックである。



マイ生け簀で追い込み漁


 その格好で二人はザバザバと生け簀に入った。手に長さ二十メートルもありそうな巨大な網をもち、なんと追い込み漁を始めた。しかも底の泥に足をとられ、えらく苦労している。自分の生け簀で、髪を振り乱して、漁をしているセクシーなおっさんたち。驚くことに、魚を食べるとき、毎回こうやっているらしい。柄の長い網ですくうとか、何か他に手立てはないのか?


 二十分以上かけて、世界的には「ディスカス」の名で知られる長さ三十センチほどの魚を五匹ほどゲット。



セクシーな村長が魚をゲット


 そして、ようやく料理の開始。魚の内臓をとり、頭を切り落とすと他の部分を三つに切った。味つけは塩を振るだけ(「昔は塩もなかった」という)。二本の竹筒いっぱいに詰め、大きな葉を丸めてふたをする。



竹に魚をつめる



竹を火にかける


 焚き火の脇に丸太を置き、そこに竹筒をたてかけて、側面から火が当たるようにする。これで蒸し焼き。「圧力鍋と同じだ」と先生。三、四分に一回くらいの頻度で、竹の向きを変える。けっこうな手間だ。


 三十分くらいすると、竹筒が焦げてきた。先生と村長は代わる代わる竹の口に耳をつける。私もやってみたら、中でコポコポ音がする。魚が煮えたぎっているのだ。水を入れてないから、純粋に魚から染み出た汁である。彼らはこの音の変化で、どれくらい煮えたか判断できるという。この辺はさすが「森の民」だ。途中で、竹筒を火からいったん上げ、中の汁を皿にあけた。さらに続けて蒸す。一時間ほど経つと、「ブエノ(よし)」と言い、竹筒を引き上げた。



蒸し上がった魚


 マチェテで二つに割ると、竹筒の下の方に魚がギュッとたまっていた。この切り身を皿にあけ、キャッサバ二切れ、それに先に取り出して置いた魚汁をかける。


 おじさん二人が苦労の末、一時間半以上もかけて作った郷土料理パカモト。一体どんな味がするのかと期待して食べてみた。そして、驚いたのである。



「ふつうだ!」



完成したパカモト



パカモトにかぶりつく高野


 あまりに普通な白身の煮魚。味つけは塩のみだし、竹の香りがするわけでもない。私が自宅で作っても簡単にできそうなレベルだ。理解に苦しむのはなぜ魚の頭を入れないのかということ。実はあまりに待ち時間が長いため、村長の奥さんが頭を煮込んだスープをおやつ代わりに出してくれたのだが、そっちの方がはるかに美味しかったのだ。



ディスカスの頭を煮込んだスープと芋。苦労して作った竹筒魚蒸しよりはるかに滋味深い


 生け簀の漁といい、頭を取り除いた蒸し煮といい、突っ込みどころが満載。そして、心の中でこう叫んだ。「俺はこれそっくりでもっと美味い料理を食ったことがある!」(以下、次号)。



(高野 秀行)

文春オンライン

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