霜降り明星、ハナコ……「お笑い第7世代」がダウンタウン、ウンナンを超える日は来るのか

1月2日(木)11時0分 文春オンライン

 お笑いの世界では「お笑い第7世代」という言葉をちらほら耳にするようになってきた。明確な定義があるわけではないが、だいたい平成生まれで20代前後の若い芸人の総称である。2018年に『M—1グランプリ』で優勝した霜降り明星のせいやが自分たちの世代のことをそのように名付けたのをきっかけに、この言葉がじわじわと浸透してきた。今ではテレビや雑誌でも「お笑い第7世代」の特集が組まれたりしている。


ウンナン、ダウンタウンは「お笑い第3世代」 


 いきなり「お笑い第7世代」という言葉を聞かされても、それ以前の世代のことを知らないほとんどの人にはピンとこないかもしれない。そのルーツは80年代後半に生まれた「お笑い第3世代」という言葉にさかのぼる。


 ウッチャンナンチャンやダウンタウンが世に出てきた頃、彼らのような若い世代の芸人をすでに活躍している上の世代の芸人と区別するためにそのような言葉が作られたのだ。



「お笑い第3世代」のダウンタウン ©︎文藝春秋 


 ザ・ドリフターズやコント55号を「第1世代」、タモリビートたけしや明石家さんまを「第2世代」と位置づけて、それよりも若い層のことを総称して「お笑い第3世代」と呼び始めた。


 その後、「お笑い第4世代」「お笑い第5世代」などという言葉を使う人も一部にはいたが、「お笑い第3世代」以外はそれほど一般的ではない。


「お笑い第7世代」という言葉を発明したせいや本人は軽い気持ちで口にしただけなのだが、最近出てきた若手芸人の総称として使い勝手がいいので、本人の意図を超えて拡散していった。


 ここ数年のお笑い界では、テレビに出てくる芸人が年々高齢化しているということが言われてきた。一昔前に『爆笑オンエアバトル』『M—1グランプリ』『エンタの神様』などをきっかけに世に出てきた当時の若手芸人たちは、ほとんどが40代以上になっているが、今もテレビの最前線で活躍している。



コンテストで成績を残す「お笑い第7世代」


 2012年に『キングオブコント』で優勝したバイきんぐ、2014年に『THE MANZAI』で優勝した博多華丸・大吉なども、優勝の時点でかなりの芸歴を重ねていた。


 だが、2018年に入ったあたりから、若い世代の活躍が急に目立ってきた。霜降り明星以外にも『R—1ぐらんぷり』優勝の濱田祐太郎、『キングオブコント』優勝のハナコなど、20代中心の若い芸人がコンテストで続々と頭角を現し始めたのだ。また、バラエティ番組でも、宮下草薙、四千頭身、EXITなど若い世代が台頭してきた。


「お笑い第7世代」と呼ばれている芸人にはそれぞれ個性があり、一口で言える特徴があるわけではない。ただ、大まかな共通点を挙げることはできる。



「芸人はテレビを目指すのが当たり前」という常識に縛られない


 最大の特徴は、物心ついた頃からインターネットが身近にあったデジタルネイティブ世代であり、お笑い以外の文化にも幅広い関心を持っているということだ。


 具体的に言うと、上の世代の芸人と比べて地上波テレビを絶対視するような意識が薄く、ユーチューバーにも偏見を持っていない人が多い。


 娯楽が少ない時代には、テレビは流行の発信源として若者に不可欠なものだった。だが、今はそうではない。「芸人はテレビを目指すのが当たり前」という常識は彼らには通用しない。実際に芸人の活躍の場はどんどん広がっていて、もはやテレビだけが絶対的な存在ではない。


 実際、ユーチューブで積極的に動画を公開していたり、ユーチューバーを自分たちと同列のエンターテイナーと考えているような人が多い。


 例えば、霜降り明星は「同世代の芸人だけではなく、ミュージシャンやユーチューバーとも一緒に何か仕掛けていきたい」とよく話している。お笑いというジャンルに囚われず、自分たちの世代全体で世の中を盛り上げようとしている。



ネガティブなイメージを一蹴する「根っからの真面目さ」


 もう1つの特徴は、お笑いに対して人一倍真面目だということだ。現代の若者が単に有名になったりお金を儲けたりしたいということであれば、ユーチューバーなどのほかの選択肢はたくさんある。そこであえてお笑いの道を選んでいる彼らは、上の世代の芸人よりもお笑いに対して純粋でまっすぐだ。


 例えば、お笑いコンビはお互いへの信頼や仲の良さについて公言しないことが一般的だった。でも、霜降り明星はそれを隠さない。2人ともお笑いに対する姿勢がピュアで、照れもなく熱いことを言ってお互いの才能を認め合い、励まし合っている。


 最近、お笑い界を揺るがせた闇営業問題の根底にあるのは「芸人は日常的に夜の街で女性と遊んだり怪しい人たちとつるんだりしているんだろう」というネガティブなイメージだ。


 ところが、根っから真面目な第7世代の芸人には、そういったマイナスの要素がなく、クリーンなイメージがある。だからこそ、起用する側としても安心して仕事を依頼できる。



怪しさやいかがわしさを持たない若手芸人


 闇営業問題のせいで、吉本興業とお笑い界全体に対して世間が不信感を抱くようになってしまった。お笑い界にとっては危機的な状況である。


 だが、逆に考えると、この状況はそういった悪いイメージと無縁の「お笑い第7世代」が躍進するためのこの上ないチャンスでもある。昔ながらの芸人のような怪しさやいかがわしさを持たない若手芸人は、これからの時代に最も求められる人材になりうるのだ。


 個人的には、「お笑い第7世代」という言葉が広まっている今の状況は、お笑い界にとって間違いなく好ましいことだと思う。世代交代が起こりづらい昨今のお笑い界で、このような新しい動きが出てきたのは奇跡と言ってもいい。


 いつの時代も新しい文化を背負って立つのは若者である。令和のお笑い界は彼らが引っ張っていくことになるはずだ。


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