ドイツの伝承“黒いサンタ”を元にした、中村光の久々の新連載『ブラックナイトパレード』が圧巻のクオリティ

1月2日(月)11時0分 おたぽる

『ブラックナイトパレード』(集英社)

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『週刊ヤングジャンプ』(集英社)をはじめとする、異例の10媒体で連載中のマンガ『ブラックナイトパレード』(作:中村光)の第1巻が12月9日に発売された。『荒川アンダー ザ ブリッジ』(スクウェア・エニックス)や『聖☆おにいさん』(講談社)の中村先生による10年ぶりの新連載ということで、読者の期待は大きく膨らんでいたが、さすがは中村先生。圧巻のクオリティであった。

 主人公の日野三春は大学受験に失敗し、就職を試みるも失敗。結果3年間コンビニでバイトをするという負け組人生を歩んでいた。そしてクリスマスの日、三春が若干見下していたチャラい後輩バイトの大学生・皇帝(カイザー)くんが、内定が決まりバイトをやめることを報告、さらに超かわいい彼女の迎えが来ると三春に後を任せてバイトを一足先に退勤していった。

 のっけから非リア充たちから共感の嵐が起こりそうな展開。三春はカイザー君の内定をお祝いしてあげようとしたり、バイトからデートへ送り出すのだが、その表情が実に秀逸だ。心の声なんてなくとも、ビンビンと複雑な本音が伝わってくる。

“良い子”にしていったって良いことなど一つもない——そう感じた三春は、コンビニの廃棄の中からクリスマスケーキを盗んで“悪い子”になってしまう。バイト後、自宅の前でホルモン屋台を見つけた三春はそこでやけ酒をするのだが、その店主がなんと“黒いサンタクロース”だった。呆然としているうちに三春はサンタの袋に食べられ拉致されてしまう。

 驚きの急展開だが、実はこの“黒いサンタ”の話はドイツを中心に実際に伝承されているものだそうだ。伝承の黒いサンタは悪い子に石炭やじゃがいもをプレゼントしたり、部屋に動物の内臓をぶちまけたり、袋に入れて連れ去ったりするのだが、『ブラックナイトパレード』の黒いサンタもおおむね同じである。では“連れ去られた後”どうなるのか。伝承でも語られていないその後の話が中村ワールド全開で描かれている。

 目が覚めた三春に黒いサンタはなんと、三春が一番ほしがっていた内定をプレゼント。園上でサンタの仕事を一緒にしようと言い出す。しかも月給は手取りで30万円、残業代、ボーナス、昇給、全て有で、寮生活の3食付きという超ホワイト待遇。ここから三春は終始戸惑いながらも、可愛いけど闇が深そうなヒロイン、面倒見がいいイケメンなどの同僚にサポートされて黒いサンタの一員になって仕事をすることになっていく。

 仕事は悪い子供を見つけて絶妙にがっかりするプレゼントを渡すというものだが、ここで三春が才能を発揮し、プレゼント選びをどんどん成功させる。作中では何個か具体例が出るのだが、ここも中村先生のセンスが光っている。子供が絶妙にテンションを落としそうな品のチョイスは、底意地の悪さが出ていて笑ってしまう。こうして三春は周りから嫉妬されたり、認められたりしながら、さらにサンタの仕事について深く知っていく。

 1巻を読み終わって見返すと、情報量の多さや物語の進行スピードに驚いてしまうほど内容がぎっしり詰まっている。キャラも多く登場し、もう感情移入してしまうくらいどれも個性が際立っているが、一本のストーリーに沿って上手に三春に絡んできてくれるので、ゴチャゴチャすることなくとても読みやすい。ギャグも多いが話の流れは決して止めていない。中村光、やっぱり恐るべし。
(文・白子しろこ)

おたぽる

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