エロシーンの挿入が絶妙なサイコホラー 河野那歩也『監禁嬢』

1月2日(月)13時0分 おたぽる

「監禁嬢(2)」双葉社

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 発売と同時にネット配信もされているそうで、やたらと広告で表示される、河野那歩也『監禁嬢』(双葉社)。どうやら、人気がある作品だそうで、単行本は11月と12月の2カ月連続刊行だという。

 そこまで力を入れているのだから、いったいどういう作品なのかと読んでみることに。

 物語は平凡な中年男が、突如異常な事態に巻き込まれるというサイコものの鉄板的な展開だ。

 主人公の高校教師・岩野裕行は高校の教師。子どもも生まれたばかりで、生徒からも信頼されており、仕事は順調。いわば、小市民的な幸せを味わっている最中であった。

 そんな男が、突如全裸で監禁されているところから物語は始まる。事態が飲み込めない岩野の前に立っていたのは、カコと名乗る見知らぬ若い女。その女は、妻子の写真を示したりして、岩野のすべてを知っていることを示し、ほくそ笑む。そして、岩野に自分とはかつて出会ったことがあることを示唆するのである。

 けれども、岩野には、その女がまったく誰かは思い出すことができない。それをカコは「あなたがあなたを忘れたから」だと語り「早く会いたいなあ……あの頃のアナタに」と囁くのである。

 スティーブン・キングの名作『ミザリー』的な監禁劇。このまま、いかにして脱出する姿が描かれるのであろうかと思いきや、物語の展開は予想外である。

 ここに、もう一人のサイコな女・岩野の教え子である麻希が登場するのだ。この女、極限までヤバイ。見た目は、まだ男にも興味のない地味でおぼこい女。友人も、麻希を少々ダサい女だと思っている。

 けれども、それはあくまで仮の姿である。

 麻希は、腹の中で友人を「ブス」と罵倒し、これまでの人生で欲しいものはすべて手に入れてきたと語るのである。そんな彼女が手に入れ損なったのが、岩野であった。かつて告白された岩野だが、教師であるし、妻子もあるからと、やんわりと断っていた。ゆえに、麻希の中には愛憎半ばする気持ちが募っていたのである。

 そんなサイコな女の前に現れたカコは、麻希を岩野の監禁場所へと案内する。そこで、麻希は自分と付き合うなら解放すると岩野と取引まで始めるのである。

 こうして、無事に解放された岩野だが、家に戻れば妻子と仲良くしているカコの姿が!

 なんと、1年以上前から二人は友人同士だったというのである。

 妻子に危害を加えられることを考えて、何も言い出せない岩野。おまけに、学校にいけば麻希が命の恩人ヅラをして迫ってくるという八方ふさがりな状況が続くのである……。

 とにかく謎だらけというのが、本作の特徴。

 しかも、絶妙にエロシーンを挟んでくるのだが、そのテンポがとてもよい。考えるとか、深読みするとかではなく、気楽に味わえることのできるサイコホラーであろう。

 ただ、やっぱり、こういう作品にありがちな「オチが、ソレかよ!」になるのだけは避けて欲しいところ。それがなければ、結構な名作になりそうな予感である。
(文=是枝了以)

おたぽる

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