又吉直樹、初の長編小説「人間」を語る(1)「人」ではなく「人間」にこだわる

1月3日(金)10時0分 アサ芸Biz

 又吉直樹氏の新作「人間」が話題だ。本書は表現者を目指す青年の苦悩と残酷な現実を描いた長編小説である。しかも現実の出来事とシンクロして、読者を激しく刺激する。作品に込めた思いや創作の裏話、そして芸人又吉・作家又吉のこれからについて、書評家・永江朗氏が本音に迫る。

─3作目にして新聞連載ですが、依頼があった時はどう感じましたか?

又吉 どう考えても大変だろう、でも魅力的だなぁと思いました。

─えっ? どういうことですか。

又吉 新聞連載にはライブ感がありますよね。(書けなくなって)休載にでもなったら、どうするんやろとか。そういう怖さも含めて、おもしろそうやな、と思いました。

─実際、ほとんどギリギリの綱渡り的な連載だったそうですね。移動中に空港で書いたこともあるとか。

又吉 インフルエンザにだけは絶対かからんとこうと、体調管理だけは気をつけました。

─新聞連載というのは、作家にとって一流の証しみたいなところがありますね。「ついに俺にも依頼が来たか」みたいな気持ちは?

又吉 ベテランの方が書くイメージがあったんで、やっぱり大層なものという印象はありました。もちろん僕は僕なので、新聞小説を書いたからといって、急に格が上がるわけではないんですが。でも、大御所の方が「人間」というタイトルで新聞小説を書いたら、いよいよ最後の小説みたいに感じる人もいるかもしれないけれど、僕だと、読者も「何を書くんやろ?」ぐらいに思ってくれるんやないかなと。

─第2部には、ボロボロになるまで読み込んだ太宰治の「人間失格」が登場します。タイトルは太宰治の「人間失格」を失格する、という意味ですか?

又吉 「人間失格」というタイトルはおもしろいですよね。人間を失格した状態も人間の中に含まれているんじゃないか、そこまで太宰は踏まえたうえで「人間失格」とつけたんじゃないかとか、いろいろ考えてしまう。どこまでいっても「人間」という言葉をつかみきれない。そこで攻守交代じゃないですけど、「人間失格」から一回、「人間」にしてみる、みたいなことを考えました。

─「人」ではなく「人間」ですね。

又吉 もともと「人間」という言葉が好きで、コントをやる時でもそうです。オーソドックスなコントは、変な人がいて、それを見たまともな人が、変な人の言動を正していく。でも僕は、変な人を変な人が正していって、話がどんどん変なほうに転がっていくコントをやりたい。関係性のお笑いが好きなんで。だから「人」じゃなくて「人間」です。過去に書いた2冊も、変な人の話ではなくて、人と人との関係性の話やし。そういうのが「人間」というタイトルの理由です。

─3部構成ですが、この構成も最初から決めていたことですか?

又吉 38歳の現在から振り返った20年前の時間と、現在の時間を書きたい、というのは最初から決めていました。それが第1部と第2部です。その後の展開ははっきりと決めていなかったんですけど、小説の中で沖縄か奄美大島に行きたいと思っていて、どうやったら行ける展開になるんやろと思いながら、なんとなく編集者に、「沖縄か奄美、行きたいんですよね」という話をしていました。父が沖縄の、母が奄美大島の出身なんですよ。

─第1部だけでも小説として十分に成立しているけれども、そこにまったくスタイルが違う第2部を重ねたことで奥行きが出ました。そのうえ、さらに第3部を重ねてきた。贅沢な展開です。サービス過剰! とうれしくなりました。

又吉 (笑)そうですか。第3部は「なんなん、これ?」って言われるかなと思ったんですけど、どうしても書きたくて。むちゃくちゃ長いエピローグを書きたいというのが第3部です。

又吉直樹(またよし・なおき)1980年、大阪府生まれ。吉本興業所属の芸人。お笑いコンビ「ピース」として活動中。15年、本格的な小説デビュー作「火花」で芥川賞を受賞。17年には2作目となる「劇場」を発表。

永江朗(ながえ・あきら)書評家・コラムニスト 1958年、北海道生まれ。洋書輸入販売会社に勤務したのち、「宝島」などの編集者・ライターを経て93年よりライターに専念。「週刊朝日」「ダ・ヴィンチ」をはじめ、多くのメディアで連載中。

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