体力のピークまで競技を続けられない……#KuTooを始めた私が、女子相撲の世界に覚えた共感

1月3日(金)11時0分 文春オンライン

 めちゃくちゃにクールでチャーミングな日本人フェミニストを見つけてしまった。


 彼女はフェミニストを名乗っているわけではないので、もしかしたらフェミニストなんて呼ぶなと怒られてしまうかもしれないし、喜んでくれるかもしれないし、特に感想はないかもしれない。けれど、私から見た彼女はこれ以上ないくらいのフェミニストだ。


 その人の名は「今日和(こんひより)」さん。立命館大学4年生で、女子相撲選手。



第6回全国学生女子相撲選手権の個人戦・重量級で優勝し、スタッフと抱き合って喜ぶ立命大の今日和 ©時事通信社


 人々に影響を与えた世界各国の女性として、イギリスのBBCが選ぶ「100人の女性」。2019年、日本では二人の女性が選ばれたことをご存知だろうか? 一人は実はこの記事を書いている私、石川優実。2019年に、職場における女性へのヒール靴着用強制に反対する#KuTooという運動を始めた。そしてもう一人がこの今日和さんだ。


 私が選ばれたことによってこの「100人の女性」をバカにする人もいるかもしれないが、過去にはテニス選手だった伊達公子さん、がんと闘った小林麻央さんが、2019年はスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんや、アメリカ女子サッカー選手のミーガン・ラピノーさんも選出されたすんごい賞なのだ。(アメリカ女子サッカーチームが優勝した時の ラピノーさんのスピーチ が最高にかっこいいのでぜひ見てほしい!)


「女子相撲界もそろそろ動き出すころかなって思ってます」


 そんな「100人の女性」に選ばれた今日和さんのドキュメンタリー映画がNetflixにて配信中だ。タイトルは『相撲人』。『相撲女子』とか『女子相撲選手』なんていうタイトルじゃない、「人」。相撲をする「人」。


 今さんは、2014年と2015年に世界女子ジュニア相撲選手権大会の重量級で優勝、2018年と2019年に世界相撲女子選手権大会の無差別級で準優勝を果たした女子相撲界のスターだ。このドキュメンタリーには、女性差別と闘う彼女の様々な「名言」がちりばめられている。中でも私が一番グッと来たのは、「女子相撲界もそろそろ動き出すころかなって思ってます」という言葉。





 かっこいい。これからきっとめっちゃクールで、だけど情熱的な差別との闘いが始まるんじゃないかと勝手に期待してしまう。いつまでも女がみんな「一歩下がって男を支える」、なんてポジションにだけいると思うなよ、と。


 男性と女性、同じ「相撲のプロになりたい」という夢を持った時に、片方の性別は叶うことがない。全国中学生選手権・高校総体・大学生競技会・国体に女子の枠もない。これを性差別と言わずなんと呼ぶのだろうか。


 いまだに女性が土俵に上がることを良しとしない相撲界。「伝統」を理由とすれば女性差別をしても仕方がないという考え方なのだろうか。



体力のピークまで続けられない女子相撲を取り巻く環境


 ドキュメンタリーの最中、理学療法士の方にマッサージを受ける今さんのシーンがある。そこで今さんは、「女子相撲のピークは20歳と言われるが、男性の大相撲を見たら30歳を超えてもできてる人いるし」という話をする。それを聞いた理学療法士の方の返答は、「体力的なピークは女性の場合は医学的には多分25〜26くらいやと思うね」というもの。


 今さんが周囲に聞かされたピークとは5、6歳も差がある。その理由は一体何故なのだろう。



 理学療法士の方いわく、「女子は環境が整っていないから学生の間だけでっていうところがあると思う(から20歳がピークと言われるのでは)」ということらしい。つまり、体力のピークのせいでなく今の女子相撲を取り巻く環境のせいで、女子相撲の多くの選手は医学的に体力のピークとされている25、6歳まで相撲を続けることが困難だということだ。なんてことだ、と私は思った。


 人生に一度くる体力的なピーク、その時にその競技を続けていたいスポーツ選手はたくさんいるだろう。その人の人生で一番の結果が出せる大きなチャンスかもしれない。そんなスポーツを極める人なら当然に持つ夢に、挑戦することさえも困難な女子相撲。


「伝統」や「マナー」とは一体なんなのだろうか


 私の活動とジャンルは違えど、目指すものはとても近いもののように思える。男性がプロの相撲に挑戦できるのならば女性も、男性がフラットシューズを履いて仕事をできるのならば女性も。こんな、「じゃあこれからはそうしましょう!」の一言があればすぐに解決に向かうことで、何故私たちはこんなにも闘わなければならないのだろう。


「困っている人がいるなら制度を見直さないとね」という、全然難しくない小学生でも分かるはずの話なのだが、いまだに女性が相撲でプロになる道はないし履きたくない人にヒールのあるパンプスを女性のみに義務付けられる職場もなくならない。


 誰かの尊厳や人権、健康を害してまで守っていかなければならない「伝統」や「マナー」とは一体なんなのだろうか。



女性差別と闘うことは女性らしい格好を否定するものではない


 そしてもう1つこのドキュメンタリーで注目したいのが、今さんが女性の素敵なファッション広告のパネルを見て「こういうブランド着こなせるようになりたいんだけど。いや引退したらね」と話すシーン。


 女性差別と闘うことは何も女性らしい格好や素敵な服装を否定するものでは全くない。相撲に打ち込み、男性と同じ、相撲にチャレンジする環境が欲しいと訴える彼女が、女性のファッションを見て「着こなしたい」と思うことになんの矛盾もないのだ。どんな洋服を良いと思おうと着ていようと、女性差別を受け入れなければいけない人間など一人もいない。


 同じ職場、仕事内容ならば男性が履いている靴で働いても良いでしょうと闘う人間が、プライベートで自分の履きたいときに履きたいタイミングでヒールの靴を履くことになんの問題もないように。



 私は今さんの活動、ドキュメンタリーを見て声を上げ続けなければいけないと思った一人だ。そして、多くの人が私と同じような気持ちになるのではないだろうか。


 色んな立場から女性差別と闘う人たちがいる。そんな人たちを「モテない女の僻み」だとか「要領良くやってりゃいいのに」などと言ってバカにするのはもう時代遅れ。


 今さんは最高にクールでチャーミングな、女性差別と闘う「相撲人」なのだ。全力で支持していきたいと思う。



(石川 優実)

文春オンライン

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