発達障害と診断されて 「普通」とは何か考えさせられた

1月3日(木)16時0分 NEWSポストセブン

発達障害の診断を受けてよかったと語る姫野氏

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 大人の「発達障害」に対する関心が高まっている。NHKで特集が組まれるなど、ここ数年で、関連の情報も増えている。ライターの姫野桂氏も、世に発達障害とは何かを知らしめてきた一人だ。2018年8月に刊行された『私たちは生きづらさを抱えている』(イースト・プレス)で、発達障害の当事者22人のリアルな声を伝えた。そして12月に刊行された新刊『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)では、発達障害という「診断」は下されていないものの、「傾向」のある人々の悩みや対策を聞いている。自らも発達障害であることをカミングアウトしている姫野さんに、“生きづらさ”を抱えながら生きるすべを聞いた。(インタビュー【後編】をお届けします)


 * * *

◆私はこんなに出来の悪い子だったのか


──姫野さんは前著『私たちは生きづらさを抱えている』で、心療内科を受診し、発達障害の診断を受けることになった経緯から、テスト内容、診断結果までを、克明にレポートされています。発達障害であることを明らかにするのに、抵抗はありませんでしたか。


姫野:私自身はこれまでも、自分自身を見せていくスタイルで仕事をしてきましたから、自分にとっては自然な流れでした。ただ、発達障害であるという診断を受けたときはショックでした。


 発達障害には大きく3種類【※】あるのですが、私の場合はLDが最も強く、2桁以上の繰り上がり・繰り下がりのある暗算ができません。また、ADHDとASDの傾向も指摘されていて不注意傾向が強く、急な仕事が入るなどイレギュラーな場面に直面すると、緊張感に襲われます。


【※発達障害には大きく3種類ある。ADHD:不注意が多かったり、多動・衝動性が強い。

ASD:コミュニケーション方法が独特だったり、特定分野へのこだわりが強い。LD:知的発達に遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算が困難】


──診断が下された瞬間をふり返って、どのような気持ちになりましたか?


姫野:自分はこんなに出来が悪い子だったのか、これまでよく生きて来られたなと(笑)。当時、私はワーカーホリック気味で、仕事をめちゃくちゃしていた時期だったのです。それで体調を崩して心療内科を受診したのがきっかけだったのですが、これまで、苦手なことを無理やりやっていたんだな、という気持ちにもなりました。



──ただ、診断を受けたときの反応は、人によって違うんですね。


姫野:ショックを受けたという方もいれば、うまくいかない理由がわかって、すっきりした、という方もいます。そこはもう、人それぞれですね。私の場合はショックだったのですが、以来、自己認識が変わりました。


──どのように変わりましたか?


姫野:できないことは認めて、人に頼むようになりました。以前は確定申告を自分でやっていたのですが、計算が苦手なため、80万円も間違えるという失敗をしました。今は税理士さんにやってもらっています。他にも色々とミスが多いのですが、障害だから仕方ないと、割り切れるようになりましたね。努力が足りないのではなく、苦手なだけだと。その認識がないと、自分を責めるか、人を責めるとか、別のどこかに原因を求めてします。今は診断を受けてよかったと思っています。


──では、発達障害かもしれないと感じる人は、診断を受けたほうがいいでしょうか?


姫野:診断にはお金がかかりますし、心療内科に行くこと自体、ハードルが高いと感じる人もいると思います。そういう方は、今は自己診断できるチェックリストが載った本が出ているので、まずはそうした本を活用するのもいいと思います。自分はこういう傾向があるんだな、とわかるだけでも、変わるかもしれません。


◆「普通」になりたいと思ってきたが……


──新刊の『発達障害グレーゾーン』のインタビューの中で、「普通」のことができない、という言葉が出てきます。当事者やグレーゾーンの方の「自分は普通ではない」という自覚によって、そもそも「普通」とは何かを考えさせられます。


姫野:「普通」というキーワードは私の中でもずっと引っかかっていました。私自身も、普通になりたいと思って生きてきたからです。私が思い描く普通とは、大学を出て、企業に勤めて、3、4年経って結婚して家庭を持って、子供を2人くらい産んで……というもの。実際に、そういう人生を歩んでいる友人もいますが、私にはムリでした。


 1年前くらいからようやく、「普通」にならなくていいや、と思えるようになったんです。



──発達障害の診断を受けた頃ですね。


姫野:そうですね。ちょうど1年前に、仕事のしすぎで眠れなくなったりと体調を崩して、病院にかけこんだんですね。ついでに発達障害の診断を受けてみたら、診断が下された。これらの一連の体験によって、吹っ切れたのだと思います。同時に、私が必死に仕事ばかりしていたのは、一つの自己逃避だったと気付きました。もちろん、私はライターしかできないので、今、こうして仕事ができていることには感謝しかありませんが。


──仕事の仕方が変わりましたか?


姫野:はい。今は、スケジュールを管理して、倒れない程度の仕事量にしています。もともと私がワーカーホリックだったのは、恋愛がめっぽうダメなので、仕事で生きるしかないと自分に言い聞かせてきたからです。恋愛より仕事のほうが、私にとってはずっとラクだし、上手くできるんです。でも最近、少しずつ、プライベートも充実させたいという気持ちになってきましたね。


──姫野さんの恋愛に対する苦手意識はどこから来ていますか?


姫野:高校時代、スクールカーストの底辺にいたトラウマから、男性に恐怖心を持つようになってしまったんです。恋愛への苦手意識はまだ克服できていません。


 発達障害の女性は私に限らず、自己肯定感が低いので、自信がなさすぎて誰ともお付き合いができないとか、あるいはダメな男やモラハラ・パワハラ男に引っかかって苦労する人もいる。発達障害の女性がどうしたらいい恋愛ができるのか。その辺りは、いま気になっているテーマの一つです。


◆姫野桂/ひめの・けい

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)

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