駒澤主将が監督に深々と礼を——箱根駅伝「TVに映らなかった名場面」往路編

1月4日(木)9時0分 文春オンライン

 青山学院大の総合優勝で幕を閉じた第94回箱根駅伝。しかし、語るべきは優勝争いだけではない。細かいエピソードも楽しめるのが箱根駅伝の奥深さだ。レース直後に集まってくれたのは、駅伝好き集団「EKIDEN News」( @EKIDEN_News )の西本武司さん、駅伝マニアさん、ポールさん。毎年、全区間現地で観戦し、『 あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド! 2018 』も監修した彼らが、TVを見てるだけじゃわからない“細かすぎる名場面”を語り合う。(全2回 「 復路編 」も公開中)


◆ ◆ ◆


【1区】中央・舟津の「バッチリっす!」に感動


西本 まずは1区の名場面ですが、やっぱり僕は中央大学の舟津彰馬選手。2016年に1年生でキャプテンを務めたのですが、予選会を突破できず涙ながらに挨拶に立った選手です。年末に「文春オンライン」でやった座談会「 今回の1区は見逃せない。スタートから泣ける——ディープな箱根駅伝座談会 #3 」でも注目選手として挙げていたのですが、当日に区間変更などがあるのが箱根駅伝。実際エントリーの発表があるまで、本当に1区を走るのか不安だったんです。今回も東京大学の近藤選手がインフルエンザにかかってしまい、当日エントリー変更などもありましたからね。スタート前の大手町を、アップをしているであろう舟津選手の姿を求めてさまよっていたところ、向こうから全力で走ってくる舟津選手を発見! 「おはようございます!」と挨拶をしたところ、スピードを落とすことなく、サムズアップして「バッチリっす!」と応えてくれた。ここで涙腺崩壊。僕の箱根駅伝はすでに終了した、と言っても過言ではないほど感動しました。


マニア 僕はやっぱりアンパンマン号(選手と並走しツイッター上で話題になったアンパンマンの顔した車)ですね(笑)。現地にいるときは全然気づかなかったんですよ。だけど、後で写真を見直したら、やっぱり写っていました。



意外と目が恐い「アンパンマン号」


西本 自分が初めて箱根駅伝を現地で見ようとしたときのことを思い出しました。車で先回りしたら早いんじゃないかと、横浜・保土ヶ谷から車に乗り込んだところ、ちょうどパトカーとパトカーの間に挟まれまして……。結果、ず〜っとパトカーに挟まれて移動することになり、何も観戦することができなかった。箱根駅伝は車で見に行くものじゃない。「アンパンマン号の教訓」と言ってもいいでしょうね。


 あとは東洋大学の西山和弥が、「フォームがキレイだね」と、スタジオ解説の大迫傑選手(早稲田→オレゴンプロジェクト)から褒められた件も記憶に残りますね。褒められた西山が、恐れ多すぎて後ずさりをしてました。





【2区】拓殖のデレセ・タソがついにシューズを変えた


マニア 2区は青山学院大の森田歩希選手が区間賞を取ったこと。彼は5000mの中学記録保持者なんですが、高校で伸び悩みまして。中学校で記録を作ると、その後いまひとつ結果を残せないというケースが多いんですね。それが大学に入って、原晋監督の指導のもと再び力をつけてきた。


 しかも昨年区間賞を取った神奈川大の鈴木健吾選手を突き放すような走りで区間賞。どちらかというと「外さない」選手だった森田が一躍ヒーローに。この走りを予想できた人は少なかったはず。


西本 中継所では森田選手が区間賞をとったことがいまいち伝わってなくて、トップでタスキをつないだ東洋大の相澤晃選手のもとに取材陣が集まっていました。そして、ゴール後にタキさん(青山学院大学の長距離コーチ 瀧川大地氏)が、「ジョウデキ! ジョウデキ!」と甲高い声で喜びながら、森田の頭をなで回すという名シーンも生まれました(笑)。



青学・2区森田から3区田村へのタスキリレー


 ちなみに、個人的に注目していたのは拓殖大の ワークナー・デレセ・タソのシューズ問題 。彼はずっと廃盤になったニューバランスのRC1300という靴を履いていたのですが、今年もあれを履くのかどうかが気になっていました。




 それがフタを開けてみたら「ハンゾー」(ニューバランスの新しいモデル)、しかも市販モデルでした! ちなみに2区の戸塚中継所のテントをのぞいたら、ハンゾーとRC1300が並べられていたことも追記しておきます。


 ギリギリまでどちらを履くか悩んでいたんでしょうね。横には走り終わったワークナー・デレセ・タソが倒れていたのですが……。



区間5位と健闘したデレセ・タソ


マニア 余談ですが、1区で話題を独占したアンパンマン号が警察に注意されるという悲報が届いて、リツイートが2000を超える勢いを見せるなど、こちらも注目を集めていました。



【3区】中央学院のはちまきに書かれていた言葉


西本 つづいて3区。ネット上で話題になったのは中央学院大の横川巧選手のはちまきです。いつもははちまきに「中央学院」と書いてあるのですが、今回は何も書いてないと。


マニア これは、今大会の直前に、はちまきや手袋などに大学名を書くのは、大学の宣伝に当たるので禁止という通達がありまして、本人が自粛したのだと思われます。


西本 ただ、何も書いてないわけじゃなかったんです。「EKIDEN News」調べですが、横川選手のバックショットを拡大してみると、はちまきの後ろに自分の名前と“ジャイアントキリング”と書いてあることが確認できました。



はちまきをよく見ると「ジャイアントキリング」の文字


 それとマニアさんがすごく期待していたのは、「湘南の暴れん坊」東海大・鬼塚選手の湘南エリアでの大爆走。


マニア 東海大は満を持して、鬼塚を3区に置いたと思うんですよ。


西本 関係者によると、鬼塚選手の調子は「走ってみないとわからない」タイプだそうで、ハマったときと、そうでないときがあるらしくて、今回は後者のパターンだったようですね。今回の箱根では、悪くはないんだけど、大爆走までいかなかった。いまひとつハマらなかったのが残念でしたね。



【4区】駒澤主将が監督に深々とおじぎ


マニア 4区はやっぱり明治大学の“腰たすき”じゃないでしょうか?


西本 じゃあ写真対決しましょう。おたがいベストカットを出しましょうか。


マニア 分かりました。僕は学連選抜の明治大学・中島大就。腰のあたりを見てください。学連選抜のたすきに加えて、腰に明治大学カラーのたすきを巻いているんです。おそらくみんなからの寄書きが書かれているんでしょうね。明治大学の連続出場は途切れたかもしれませんが、明治は箱根路を走ったぞというメッセージを感じます。



腰にまかれた紫のタスキに注目


西本 おっ。僕も別角度の写真があるのですが、明治大学のたすきではなくて、「中島」と刺繍されているのがわかります。僕のベストショットは駒澤大学の主将・高本真樹。この1年間、駒澤大学を引っ張ってきて、今季、三大駅伝を走ったのはこの箱根だけ。これが今シーズン、最初で最後の駅伝出場だったんです。彼が小田原中継所でゴールした後、係員が制止する中、コースに向かって歩いていき、監督車に向かって一礼、大八木監督が手をあげて応えたシーン。今回のEKIDEN Newsのツイートで一番反響があった写真でした。



深々と礼をする駒澤・高本主将と手をあげて応える大八木監督


 そして、もうひとつ話題になったのが、高本のユニフォームが一人だけ違うじゃんという。これはサブユニフォームなんですが、どうして高本がこれを着ていたのか、いろいろと憶測がとびました。よーく見てください。他の駒澤ユニフォームと違いますから。



後ろが高本。たしかにユニフォームがちょっと違う



【5区】“山の神候補”が続々と登場


マニア 5区は拓殖、法政、城西ですね。芦ノ湖で待っていた僕は、東海とか順天堂、中央、駒澤、神大あたりが来るのかなと思って待っていたんです。そうしたら、ノーマークと言ったら失礼ですが、想定外の3校が上がってきて驚きました。拓殖の戸部凌佑、法政の青木涼真、城西の服部潤哉……。


西本 “山の神候補”が続々現れるという。








マニア ただ、まだ“候補”ですね。「新・山の神誕生!」という感じまでにはならなかった。



西本 それが表名場面。裏名場面はまたしても、謎の「ムッサ」と書かれた看板が最高地点に現れ、一瞬だけツイートが盛り上がりました。




 ムッサというのは東海大学から日新食品へと進んだ村澤明伸のこと。陸上の名門・佐久長聖時代からその走りが話題になり、大迫傑も朝練で勝負を挑んだというエピソードが残っている選手です。箱根駅伝ファンの間ではムッサという愛称で呼ばれていて、昨年、日テレの解説をしたときにはファンが盛り上がり「#ムッサムラムラ村祭り」というハッシュタグが、本家の「#箱根駅伝」を上回り、トレンドワード入りをしたという伝説もあるんです。そのムッサという張り紙が、東洋と青学が競っている一番いい場面に映し出されて、熱い戦いに水を差していました(笑)。ちなみに翌日我々が確認に言ったところ、張り紙はそのまま残っていました。




(「 復路編 」につづきます)


写真/西本武司、駅伝マニア(EKIDEN News) 構成/モオ



(「文春オンライン」編集部)

文春オンライン

この記事が気に入ったらいいね!しよう

このトピックスにコメントする

箱根駅伝をもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ