「110歳で生命を宿らせる」“生涯現役”・葛飾北斎の最晩年作品が傑作すぎた

1月4日(土)11時0分 文春オンライン

 健康、長寿を新春の願いごとにする向きは多かろう。これらの願いを体現し、観るだけで「元気に長生き」のきっかけになりそうな作品がいま、すみだ北斎美術館に並んでいる。「北斎没後170年記念 北斎 視覚のマジック 小布施・北斎館名品展」である。


信州小布施に北斎館なる施設があるのはなぜ?


 同館は江戸後期の絵師にして、《冨嶽三十六景》などで知られる葛飾北斎の作品を専門に扱う美術館。今展では、長野県小布施町にある「北斎館」が所蔵する名品が主に観られる構成になっている。


 すみだ北斎館は、北斎が生まれ育った地とされる墨田区に建てられたものであり、れっきとしたゆかりがある。では、信州小布施に北斎館なる施設があるのはなぜ? そう思ってしまうが、じつは小布施も北斎と強い結びつきがある。最晩年の北斎はしばしば小布施まで足を運び、地域を代表する文化人・高井鴻山に遇されて長い滞在を繰り返していたのだ。


 地域に伝わる北斎作品も数多いことから、この地に美術館ができたというわけ。そんな由縁なので、小布施北斎館には北斎晩年の作が多数所蔵されることとなった。


 晩作がコレクションの主というのは、それらがかなりの名品揃いであることを示す。というのも、北斎は典型的な大器晩成型の人物だったから。「ビッグウェーブ」の名で世界的に知られる《神奈川沖浪裏》を含む代表作《冨嶽三十六景》が制作されたのは、じつに北斎が70代になってからのことだ。



《神奈川沖浪裏》 ©Getty


 その後も90歳で没するまで、創作意欲は衰えることはなかった。日々絵筆を持ち、続々と新作を描き、死の直前までエネルギッシュな生活ぶりは変わらなかったという。本人が70代で書き残したものに、


「私は90歳で絵の奥義を極め、100歳で神の域に達し、110歳ではひと筆ごとに生命を宿らせることができるはず」


 といった意を述べているものがあるとおり、彼の絵の技量は年をとるごとに上がり、画業は充実の度を増していたのだった。



北斎晩年の肉筆画


 若き日には浮世絵版画を多く手がけたが、晩年には肉筆画が多くなった。よって北斎館は、北斎の肉筆画コレクションでは随一の存在となっている。北斎最晩年の最盛期に描かれた名品の数々が、現在は生地たる墨田区に運ばれてきているというわけだ。


 展示室で圧倒的に目を惹くのは、《東町祭屋台天井絵 鳳凰》と《上町祭屋台天井絵 男浪》だ。北斎は小布施で地元の依頼に応じ、祭屋台の天井絵を描いた。これが具象と抽象の融合された、デザイン性の高い作品に仕上がっている。まさに北斎芸術の到達点と言っていい。




 他にも、北斎が毎日描いていたという獅子の絵《日新除魔》や、センス溢れる色合いの《柳下傘持美人》など、筆使いから北斎の息吹が感じられる作品もあって見惚れてしまう。






 老いてなお盛んであることは可能だ。北斎の絵は、そう語りかけてくれているかのよう。会場で作品に囲まれていると、北斎にぜひあやかりたい、いつまでも現役のまま長生きしたいとの気力が湧いてくるのであった。



(山内 宏泰)

文春オンライン

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