すごいを通り越して恐怖すら感じる「こじるり」という才能

1月5日(金)17時0分 文春オンライン

 先日、日テレが誇る最強脳内洗浄番組『ヒルナンデス!』を観ながらのんびりお昼ごはんを食べていたときのことです。サバンナ高橋と「こじるり」こと小島瑠璃子がどこぞのパン屋かなんかに中継に出ていまして、「すごい行列ですね〜」と賑やかにやっていた2人に、突然近づいてきたんですよ、何かをブツブツつぶやいている男が。「お父さん、お父さんちょっと!?」。そのブツブツ男がまずは高橋に体当たり、それを見たこじるりが「いや〜! 怖い怖い!」と叫びながら逃走……。


 と、文字にするとものすごい放送事故じゃないですか、これ。しかし、この事故案件を単なる生放送中のいちアクシデントに抑えたのが、今回の主役、こじるりなのです。



昨年は「池上彰の総選挙ライブ」(テレビ東京)でも評価をあげた


 あらためてこのシーンを見返しますと、まぁすごい。こじるりすごい。襲われた高橋を置き去りにして逃げたように見えますが、実はこじるり、「怖い怖い」と叫びながらカメラを手招きで誘導、絶妙なタイミングで問題シーンがお茶の間に流されるのを回避しています。その間ずっと笑顔。笑顔を一切絶やさない。さらに先頭まで逃げ切ったら間髪を入れず「こちら〇〇製パンさんです。お客さんにお話伺ってみたいと思いま〜す」と、流れるようにインタビューに入ったのです。これにはもう、お客さんの方がドン引き。どこの修羅の国からやってきたんだ、こじるりは……。この一連の「何事もなかったかのように」には、すごいを通り越して恐怖すら感じました。


ベッキー後、戦国時代に突入


『ヒルナンデス!』国の小島瑠璃子、『王様のブランチ』国の鈴木あきえ……かの覇王ベッキーが武者修行に出られた後の女性バラエティタレント界は、完全に戦国時代へと突入しました。一人暮らしの家にお歳暮で新巻鮭を送り付けるような、もらっても困る過剰な元気を押し出して女王の座に君臨していたベッキー。と同時に彼女は「本当の私は、明るいいい子じゃないの……」という、これまたもらって困る謎の自意識もむき出しにしていまして、「タレントとしてのベッキーじゃない、私はアーティストのベッキー♪♯」的なアレですね。


 しかしなかなか思ったように♪♯は国民に受け入れられなかった。なぜ? なぜなの? ♪♯の何が悪いの? からのゲス!!!!! と、まぁそれは置いておきまして、とにかく新女王に求められるものは、「本当の私は」とかめんどくさいことを言い出さない、シンプルかつ柔軟で従順なバラエティ体質なのだと思います。



こじるりが頭ひとつ抜けている理由


 その点でこじるりは頭ひとつ抜けています。先の放送事故的アクシデントでもその対応力は折り紙付きですし、バラエティ番組の最高峰『ヒルナンデス!』をこんなにも体現しているタレントさんは他にいないからです。


『ヒルナンデス!』って、マジで昼ごはん食べながら観る番組じゃないですか。昼ごはん食べながら、ツイッター見て、今日の夕飯どうしようかな、家賃振り込んだっけ?とか、食べると考えるを同時に行っているときに、『ヒルナンデス!』のホテル食べ放題情報や1万円全身コーデは春風のように脳みそを優しく撫でていきます。そしてこじるりは「女子高生に聞いた 先生になって欲しい有名人」というクイズにちょうどいい尺使って悩みながら「う〜〜〜ん、星野源さん!」と120点の解答をします。視聴者はただ何らかの情報を見聞きしたという満足感だけを得て、午後の業務にかえっていくのです。


 一種の催眠効果があるこの番組でのこじるりは、糸につるされた5円玉的な存在。一見5円玉そのものは無意味に思えますが、その実5円玉にしか意味はない。意味のないところに生まれる意味ですね。



千葉県出身の24歳 ©文藝春秋


あの勝俣州和をも凌駕する才能


 自分で書いててだんだんよく分からなくなってきましたが、とにかく素人にはとんと想像もつかないレベルの「無意味」を演出できるというのが、この小島瑠璃子という人のすごいところ。SNSで身を持ち崩すタレントが後を絶たない中、こじるりのツイッターを見て下さい。出演番組の宣伝、共演者からもらった差し入れの紹介、好きなドラマの話、地方で食べた美味しいもの……ひとっつも面白くない。マジでひとっつも面白くなくてすごい。そこには絶対に炎上させまいという強烈な意志を感じるのです。シンプルで柔軟で従順なバラエティタレント。ベッキーの、いや、全てのバラエティタレントの源、あの勝俣州和をも凌駕する才能の持ち主なのだと思います。






 だからこそ、驚いたのが少し前に出た熱愛情報でした。そりゃもうお年頃ですし、モテモテでしょうし、しかもジャニーズですし、初めてこじるりさんの人間的な部分を見せてもらえたと私は深い感慨を覚えた、のですが。やっぱり……絶妙なんだよなぁ……関ジャニ村上。



(西澤 千央)

文春オンライン

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