「響け!ユーフォニアム2」総括。青春の光と闇をお焚きあげ

1月5日(木)18時0分 エキサイトレビュー

完結した「響け!ユーフォニアム2」。音楽は楽しいだけじゃないけど、そこがいい。

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熱血根性吹奏楽アニメ「響け!ユーフォニアム2」がついに最終回を迎えて、10日あまり。
あすか先輩たち3年生の卒業式。師匠が弟子から離れていくような回だった。
見逃した人はニコニコ動画で見られます。
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1月5日22時からは「響け!ユーフォラジオ2 新春ニコ生スペシャル」が、3月には「TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』コンプリートブック」の発売が控えている。
1月11日にはTVアニメ『響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」も発売になり、まだまだ話題は絶え無さそうだ。

山田尚子は「思春期を描きたいんです」「その子達の目線に興味があります」(アニメスタイル007)「吹奏楽部にかぎらず、何か物事に打ち込んでいる人なら絶対に共感できるような人間関係や熱くなることを描いていけるといいなと思いました」(オフィシャルファンブック)と語っていた。
「ユーフォ」は、「音楽って楽しい」なアニメではなかった。

吹奏楽部員からみた「ユーフォニアム」


このアニメに対して、Twitterなどで元吹奏楽経験者は口を揃えて「あるある」と声をあげていた。
そして「もっとひどかったよ」とも言う。

吹奏楽部は、体育会系だ。
コンクール入賞を目指すなら、甘っちょろいことなんてやっていられない。

厄介なのは、先輩後輩の関係だ。
1期では、中学時代に久美子がメンバーに選ばれたことに対し、先輩が嫉妬を露わにして「あんたがいなければコンクールで吹けたのに!!」と怒鳴りつけた。
2期では、元3年生がやる気を起こさず、練習をサボるシーンが描かれている。元1年生(現2年生)は耐えきれず反旗を翻すも、相手にされず、しまいにはやる気のあった希美がいじめにあい、その年の1年生部員が大量脱退した。

「あるある」なのだ。
実際の部活動では、もっと幸せな記憶は山ほどあるはず。
でも痛い経験の方が、記憶に残りやすい。
だからネットで出る感想は、「ユーフォ」の苦しい描写に共感が寄る。

開いたままの傷口


「ユーフォ」は、問題が完全に解決する、ということがほぼない。
割と、傷口は開いたままだ。
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田中あすか先輩の話。最初はヒステリックな母親の圧力で、部を辞めなさい、と職員室でビンタまでされた。
あすかは久美子の涙の説得を受け、何が何でもコンクールに出たい、と決意。
彼女は全国大会に出場することができた。

だが、母親の言動に関してのフォローは一切ない。
最終回、あすかは久美子に、お父さんから受け継いだユーフォニアムのノートを手渡す。
「私にはもう必要ないからさ」
あすかは離れ離れの父親に会っていない。

退部した2年生の希美は、部に戻ることができた。
しかし、どんなにうまかろうと彼女は、コンクールには参加できない。
関西大会も、全国大会も、応援する側だ。時々映る顔は、複雑。
自分で捨てた1年間は、いくら「これから」があろうとも、もう取り返しがつかない。

同時期に辞めた他の、真面目な部員は、二度と戻ってこない。
前には進める。でも元どおりとはいかない。
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原作小説では、コンクールで他の学校の子が、先輩の代理で吹いたソロを失敗してしまうシーンがある。
その学校はダメ金(全国には行けない)だった。
先輩たちは「大丈夫だよ」と繰り返しても、後悔で嗚咽が漏れる。

滝先生のカリスマ教育


教育者視点をどう描くかにも、焦点を当てていた。
滝先生は部を全国まで引っ張った、実力のある指導者だ。
しかし、ワンマンカリスマ式だった頃の彼の教育方法は危うかった。

1期では、部員を反発させて自分が仮想敵になることで、部員の団結力を図った。
めちゃくちゃだった部を、短期間で一つに固めた手腕はあざやかだった。

次に部員ひとりひとりのクオリティ向上。
久美子に対して、彼はものすごく圧力をかける。「できますか?」と聞いて、何度も吹かせる。
その後彼は「田中さんだけでお願いします」といい、一旦久美子を切り捨てる。
(「久美子自身の(演奏に対する)成長が見えないとダメ」(石原立也:アニメスタイル007)だと追加したシーン)

最終的には「あなたの『できます』という言葉を、私は忘れていませんよ」と言って、引っ張り上げる。
一連の流れは仕込みで、久美子が大幅に成長するきっかけになった。
滝先生は学校の先生たちから、「練習させすぎだ」と指摘も受けている。

この指導方法は、一歩間違えると危険だ。
相手に圧力をかけ、情動を換気させて一線を超えさせる手段。
先生のカリスマ化で、視野が極端に狭まり、その後の演奏への向き合い方に支障をきたしかねない。
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プレッシャー指導を極端に描いたのが、映画「セッション」。
ドS教師と熱血ドラム青年の物語。指導者は口汚い言葉罵り、身体の限界まで追い込んでいく。
彼の信用を勝ち取ろうと視野が狭まった青年は、手を血まみれにし、取り憑かれたようにドラムに向かう。
音楽の楽しさは、ここにはない。

かじの切り方を間違えていたら、吹奏楽部の目標は「滝先生に認められたい」になっていただろう。
二期で、彼は優しい女性と元気な男性、という自分と違う性質の講師を呼んだ。
この2人の先生に生徒たちはついていき、部員の視野はぐっと大きく広がった。
特に男性の橋本先生の「音楽は楽しむものだ」という思想は、自信のエゴを押し付けてしまわないか心配だった滝先生の、いいブレーキになった。

最終回、3年生が抜けた後の音は、厚みがない。
滝先生と、副顧問の松本先生の会話。
「学校で指導するというのはこういうことなんですね」
松本「一年かけて積み上げても、またすぐ戻ってしまう。だからいいと私は思ってますが。毎年毎年最初からはじめられる」

ぼくたちは、言葉で言いたかった


高校生で自分の本音を言う機会なんて、現実にはそうそうない。
このアニメでも、なんだかんだで大多数の生徒が、人前では自分の本心は言っていない。

あるサックス奏者は、部活動の最中、本音で言いたかった言葉を、ちゃんと言ってくれるファンタジーだから、これは吹奏楽部員に響く、と部活動の経験を交えて語っていた。
どんな部でも、誰も本音を言わないままいざこざはフェードアウトし、嫌な思い出だけ残ってしまいがち。
本当はその場で叫び合って、喧嘩して、すっきり昇華したかった。
いまだに言えなくて後悔しているかもしれない。言ってしまって仲が修復不可能になった人もいると思う。

序盤曖昧モヤモヤ少女だった久美子。
言葉にしないとだめだと気づいて、あすか先輩に、お姉ちゃんに、大声で「大好き」と本音を叫んだ。
優子と希美とみぞれは、あなたのことを気にかけているんだとボロボロ泣いた。

どうしても斜に構えてしまいがちな思春期の本音。
でも言わないと、伝わらない。
「ユーフォ」は、キャラが心の壁を破り、叫んでくれることで、視聴者の高校時代の後悔をお焚きあげしてくれる。

立華編で第三期やってくれませんかね?
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今夜スタート「響け!ユーフォニアム2」青春はやり直せないことだらけだけど、1期を振り返ってみた
初回からタブーに踏み込んだ「響け!ユーフォニアム2」
「響け!ユーフォニアム2」2話。吹奏楽部崩壊といじめの傷跡
「響け!ユーフォニアム2」3話。うざい先輩って、正直な人ってことだよ
「響け!ユーフォニアム2」4話。人って打算的に動くもの、かなあ
「響け!ユーフォニアム2」5話。金で喜ぶわけにはいかない
「響け!ユーフォニアム2」6話。大事なものを喪失したら
「響け!ユーフォニアム2」7話。優子「あんまり舐めないでください」
「響け!ユーフォニアム2」8話。これから全国大会だというのに暗雲が
「響け!ユーフォニアム2」を見逃すな「ギュッと捕まえて、その皮剥がしてやる」
「響け!ユーフォニアム2」今夜「安全な場所から見守る人間に、本音を見せてると思う?」
今夜「響け!ユーフォニアム2」「性格悪いって言われるかもだけど、もう奥さん、いないんだよ」
「響け!ユーフォニアム2」12話。ついに言えた「お姉ちゃん、大好き」

(たまごまご)

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