湯浅政明監督、現代性を重視した『DEVILMAN』爆誕、世界へ

1月5日(金)17時0分 オリコン

1月5日から全世界同時配信、アニメシリーズ『DEVILMAN crybaby』を手がけた湯浅政明監督 (C)ORICON NewS inc.

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 今年、作家活動50周年を迎えた永井豪氏の傑作漫画『デビルマン』が、映像配信サービスの世界大手「Netflix」で再びアニメーション化されることになり、その監督を任されたのが湯浅政明監督。奇しくも湯浅監督にとて2017年は“アニメ生活”30年のアニバーサリーイヤーだった。

 4月に劇場公開された映画『夜は短し歩けよ乙女』は、カナダ『第41回オタワ国際アニメーション映画祭』長編部門グランプリ受賞。5月に公開された自身初の完全オリジナル映画『夜明け告げるルーのうた』は、フランス『第41回アヌシー・アニメーション国際映画祭』長編部門グランプリにあたるクリスタル賞を受賞。そして、『DEVILMAN crybaby』 が来年1月5日からNetflixで世界同時配信される。作品ごとに挑戦的な輝きを放つ湯浅監督が、伝説の原作漫画をどのように描いたのか。

■原作者・永井豪氏の創作意欲に刺激受ける

 最初のアニメ『デビルマン』もリアルタイムで観ていましたが、僕は永井先生の作品でいえば『マジンガーZ』派でした。なので、東映まんがまつりで観た『マジンガーZ対デビルマン』(73年)に出てきたデビルマンはかっこよかったな、というが記憶があって。当時、そんなに怖い印象はなかったんですけど、大人になって見直すと、けっこうおどろおどろしい描写があったんだな、って、時代的にもそれが可能だった。

 漫画の『デビルマン』を読んだのは、実は高校生になってから。漫画をたくさん持っている友人たちの家へ遊びに行っては、ひたすら漫画を読むという時間を過ごしていました。そんな中で、藤子・F・不二雄の短編とか、手塚治虫の『ブラック・ジャック』とか、『デビルマン』も初めて読みました。もともと最後に大どんでん返しがあって、思っていた方向にいかない作品が好きな傾向にあったんですけど、『デビルマン』は、もう衝撃でした。なんだかすごいものを見てしまった、と。特に、美樹ちゃんのところですよね。人間のダークサイドを見てしまったというか、いざとなったら人間が一番怖い?というトラウマになりました。

 その『デビルマン』のアニメーションをまさか自分で作れるなんて! 永井先生は僕の過去作品も観た上で、「こんなシュールな作品を作れる人なら大丈夫。『デビルマン』はシュールに作らないとダメだから」「全部任せた」「変えたいところは変えていいし、好きに作っていい。面白いものになるんだったらそれでいい」「信頼している」と背中を押してくれました。

 「シュール」という言葉の意味をはっきりと分かっていなくて、調べたところ「表現や発想が非日常的・超現実的であるさま」とあって、たしかに『デビルマン』は、あり得ないことを、現実にあるように見せる技がないと成立しないな、と合点がいきました。

 永井先生とお話していると、本当に博識だな、と感心してばかりです。ストーリーを作るためにいろんなジャンルの本を読まれているし、配信サービスを利用して、映画も年間400本くらい見ているというし。新しいことをしたい、違う展開をしたいという意欲の塊です。『デビルマン』連載当時もすごく特殊で奇抜な存在でしたけど、作家活動50年にして変わらない創作意欲を燃やし続けている。そんな永井さんの思いを受け取って、『DEVILMAN crybaby』を作らないといけないな、と思いましたし、ものづくりの勉強をさせてもらいました。

■原作もののアプローチは現代性をより重視

 本作で心がけたのは「当時読んだ印象を今の形で出す」ということでした。漫画連載当時は、その時の「今」の物語だと思って皆、読んでいたと思うんですよ。僕はそうでした。でも、2017年になった今、原作をそのままアニメ化すると、70年代の過去の話になってしまう。やはり、今、現代の話にしたいと思って。だとすれば、何度もアニメ化、実写化もされている『デビルマン』を、今更知らない体で描くのも恥ずかしいな、と思って。『デビルマン』という作品がすでに存在している現代で、新たに起きた話として、原作を現在に移築しようと考えました。

 このアイデアに、ダイナミック企画さんも賛同してくれて、永井さんが描かれた画像を提供していただきました。そして、原作の番長グループをラッパーたちに変えたのも、今どき、面と向かって因縁つけてくる人っていないな、と思って。ラッパーだったら、正面から意思をぶつけて、ディスることができるな、と思って取り入れました。バイオレンスやエロティックな描写にも、テレビアニメのような制限はありませんでしたし、漫画史上最高とも言える衝撃的な展開と壮大なラストシーンにたどり着くため、原作のスピリット、エッセンスを「今のアニメーション」の形に落とし込むための、必要だと思うことをやらせてくれる、理解と協力のある環境で作れたこともよかったと思います。

■「臨機応変に対応できる」が最強の強み

 今年、『夜は短し歩けよ乙女』や『夜明け告げるルーのうた』で賞をいただいて、良かったです。さらにはこの『DEVILMAN crybaby』を多くの人に観てもらって、いろんな感想で話題になってくれたら、それを願うばかりです。

 小説のアニメ化も漫画のアニメ化も、求められればマニアックで極端な作品も、万人受するような作品も何でもできるので、もっと仕事の依頼が増えてもいいのにな、って思っていて、最近、自分から言うようにしているんです(笑)。

 アニメーション作家として作りたいものもありますが、それができてもできなくてもいいと思っているんです。できたらいいな、くらい。絶対にというほどの執着はないです。制作会社もやっているので、会社でやれるものがやりたいとも思うし、その会社でさえ、世の中のニーズが変わっていったら、変わっていけばいいと思う。

 原作ものなら、対応する巧さを見せたいし、一緒にタッグを組む人たちにやりたいことがあれば、それに寄り添って考えることもできる。やりたいことって、後から生まれたりもするんです。今回、こうだったから、次はこういうアプローチをやってみようとか、オファーをいただいてからこれやってみようと思うことも多々ある。何をやるにしても自分ができるやり方で、自分がいいと思うやり方でやっていければ、プロフェッショナルとしていくらでもやりがいはあるし、楽しいです。

 これから先の5年、10年と、アニメーション業界だけでなく世の中が変わるスピードはますます速くなると思います。たとえどんな波が来ても乗れるように、臨機応変にやっていきたい。そのための努力を怠らないよう、いろんなところでいろんな形のものを学びながらやっていきたいですね。

■Netflixオリジナルアニメーション『DEVILMAN crybaby』

 原作漫画の『デビルマン』は、1972年より『週刊少年マガジン』(講談社)で連載されたダークファンタジー。海外でも人気があり、英語圏をはじめ、イタリア・香港・フランス・韓国など、多数の国で翻訳版が出版されている。漫画連載と同年にテレビアニメ化され、NET(現・テレビ朝日)系で放送された。これまでテレビアニメのみならずOVA、実写作品、ゲーム、小説、派生マンガなど、多くのメディアミックスが行われてきたが、原作漫画のはじまりから“結末”までアニメーション化した作品はなく、『DEVILMAN crybaby』では、初めて不動明と飛鳥了が出会い、デビルマンが誕生してから、ハルマゲドンに至るまでを描き切る。1月5日より全世界同時配信。

オリコン

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