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「これがッ!これがッ!これが『バオー』だッ!」『ジョジョ』を生んだ荒木飛呂彦の個性を凝縮した『バオー来訪者』

おたぽる1月6日(火)2時0分
画像:(イラスト/村田らむ)
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(イラスト/村田らむ)

—今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

 荒木飛呂彦は、日本で......いや世界で、最も語られているマンガ家のひとりだと思う。

 彼の代表作である『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズと同じくらい人気のある作品はもちろんたくさんあるが、ジョジョほど語りたくなる作品は珍しいのだ。

"メジャー・オブ・メジャー"の「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していたのに、どこかカルトでマニアックな臭いがする。その臭いのせいで、みんな「自分だけが『ジョジョ』を理解している」と勘違いしてしまう。その結果、"自分のジョジョ論"を語り出すのだ。

 僕も当然、『ジョジョ』には大いにハマったし、語りたいことは山ほどあるのだけど......今回はあえて、荒木飛呂彦の『ジョジョ』よりひとつ前の作品、『バオー来訪者』を紹介したいと思う。

『バオー来訪者』もまた、「ジャンプ」にて1984〜85年にかけて連載された作品だ。こちらは『ジョジョ』と違い、全17話という短い作品だった。僕は連載当時12歳。第1話目を「ジャンプ」誌上で読み、

「ああ、なんて映画的な展開をするんだろう!!」

と驚いたのを覚えている。荒木飛呂彦の初連載作品『魔少年ビーティー』はまだ未読だったため、『バオー来訪者』は僕にとって、初めて接触する荒木マンガだった。

 冒頭は、海に浮かぶ女性の死体から始まる。その死体が誰なのか、読者に謎掛けをした後、時間を巻き戻し、高速で走る電車を舞台に、車中で起こった"ある事件"を見せていく。

 研究機関「ドレス」に捉えられていた予知能力を持った少女スミレが、組織から逃亡を計った際、偶然、タンクの中で眠らされている橋沢育朗少年を起こしてしまった。彼は、強制的に実験体に選ばれ、ドレスにより身体を改造。体内に「バオー」と呼ばれる寄生虫を埋め込まれてしまう。バオーは、宿主が生命の危機に陥ると、精神を乗っ取った上で、身体を強力な武器に作り変える。育朗とスミレは、その「バオー武装現象(アームド・フェノメノン)」によって電車から脱出した。冒頭の女性の死体は、スミレを逃したドレスの女性が責任を問わされた結果だったのだ。

 ......と、1話目から凝りに凝って、とても濃い内容だった。小学生の僕はすぐに、ガッチリとハートをつかまれた。

 改めて『バオー』を読んでみると、「悪の組織に身体を改造させられた超人」という設定は、『仮面ライダー』によく似ている。もちろん、よりダーティでドラマチックだが。

 身体にヒビが入り皮膚がただれている"醜い"設定は、サム・ライミの映画『ダークマン』を思い出した。ダークマンは全身のやけどを人工皮膚で覆っていて誰にでもなれるし、痛覚がないため恐ろしい怪力を出せるが、その皮膚は99分で死滅してしまう。

 本人の人格と、内なる暴力性人格が乖離して戦いを繰り広げる所は、筒井康隆の『おれの血は他人の血』の主人公と類似している。同作の主人公は普段はどこにでもいる普通のサラリーマンだが、怒りに火がつくと、意識がなくなった後、めちゃくちゃな暴力を振るう。

 ......と、『バオー』読書後、しばらく考えてみたら少し似ている作品をポツポツと思いついたのだが、実際に読んでいると、何かの作品に似ているとは思わない。荒木飛呂彦の作品は、スティーブン・キングの小説やさまざまな音楽、映画などから強い影響が見られるのだが、それぞれの要素が集められてひとつの作品になった結果、「荒木マンガ」として成立している。氏の強烈な個性が、勝ってしまうのだ。

 その個性のひとつが、『ジョジョ』に代表される独特な擬音や言い回しだろう。『バオー来訪者』の頃には、すでに登場している。

「ウオオオオ〜ム バルバルバル!!」

というバオーの独特の鳴き声。

「これがッ! これがッ! これが『バオー』だッ! そいつにふれることは死を意味するッ! 武装現象ッ!(アームド・フェノメノン)」

という過剰なナレーション。一度読んだら忘れられない。

 また、キャラクターもとても個性的だ。どの人物も自分の信念に対して、とても真っ直ぐで、ウジウジしていない。しかも、主人公はもちろん、敵キャラまでもが前向きなのが面白い。"清々しいほど悪いキャラ"というのは、ほかのマンガではあまり見ない。

『ジョジョの奇妙な冒険』のディオ・ブランドーは、悪キャラの界いちの人気者だが、『バオー来訪者』の中にも、マッドサイエンティストの霞の目博士、最凶の超能力者ウォーケンなど、個性的な悪役は多数登場する。

 それらキャラクターたちが持つ能力も、ただ単にオーバーな表現で荒唐無稽なのではなく、科学的な説明がつけられているのも特徴だ。バオーだけでなく敵キャラの必殺技にも、SF作品として通用する解説がなされている。そこがまた、男の子の感性をくすぐるのだ。

『バオー来訪者』の第1話を読んで荒木飛呂彦の虜になってしまった小学6年生の僕は、30年経った今も、『ジョジョリオン』の新刊を買っている。彼の濃すぎる個性は、今なお色あせてはいなかった。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/>

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