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しずかちゃんが黒ベエに犯され喰われる──真のパロディ作家:エル・ボンテージの底知れぬヒロイン愛

おたぽる1月6日(水)15時30分
画像:エル・ボンテージ氏
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エル・ボンテージ氏

 ヒロインに対する愛は、縛り、犯し、喰らうという表現で昇華される。それは、果たして「異常」なのだろうか。

 2015年12月に40周年を迎えたコミックマーケット。29日から30日まで開催されたコミックマーケット89の最終日、3日目はいつものように男性向け=エロを主題として同人誌が溢れる日であった。コミックマーケットで頒布される同人誌には、思いも寄らないマニアックな内容のものが、数多と存在する。

 エロというジャンルに限っても、世の中にはさまざまな性の嗜好があるのだと実感させられる。

 今回、コミケ89の3日目をレポするにあたり、全体像を報告することをやめて1人のマンガ家に焦点を絞ってみようと思った。

 エル・ボンテージあるいは、その旧名・牧村みきというマンガ家の名前と作品を鮮明に覚えているのは、どんなに若くても40歳よりも上の世代のオタクだと思う。

 すでに商業誌、単行本で作品が発表されなくなって長いがエル・ボンテージは、夏冬のコミケに必ず出展し、新作を発表し続けている。彼個人によるサークル名は「被縛社」。なにやら不穏当な名称だが、発表される作品に描かれるのは、それ以上のものだ。

 今回、コミケ89で頒布された新作同人誌は、『人喰族』(1984年のイタリア映画)と、藤子・F・不二雄の『ジャングル黒べえ』と『ドラえもん』を掛け合わせたパロディだ。作品の中で人喰族によってジャイアンは生きたまま脳みそを食べられ、スネ夫は吊られ、のび太は釜で茹でられる。そして、しずかちゃんは、黒べえによって「黒べえ、犯した人間、食べる、はりきる」と頸動脈をかみ切られて内蔵をひきずり出されて喰われる(オチのドラえもんは、さらにヤバい)。この短編の後に収録されたイラストでは、まいっちんぐマチコ先生が縛られ、トト子ちゃんが六つ子に輪姦され、ラムちゃんも弁天も縛られる。

 もちろん、コミケに出展される同人誌を見渡せばヒロインが酷い目に遭っているエロマンガは、いくらでも見つけることができる。そうした中で、エル・ボンテージを評価するのは、80年代から一貫してヒロインに同様の、いやもっと酷い行為を商業誌でも描き続けてきたことにある。

 その頃の作品を、現代に商業誌に掲載することは相当の困難が伴うだろう。『由利ちゃんの逆襲』(1983年/久保書店)所収の「完全なるルパン三世・カリオストロの城」は、ルパンたちが「俺達が助けに行ってやるからな」と走るが、まったく間に合うことなく、最後のページになってもルパンたちは走っているだけで、クラリスは凌辱し尽くされているという作品だ。でも、この作品はまだソフトなほう。忘れもしない筆者が最初に手にした『由利ちゃんの最後』(1987年/久保書店)所収の連作「ひよこをめぐる混乱」では、『ダーティペア』のケイが酷い拷問で発狂し、クリィミーマミが縛られて監禁されて死亡する。ほかの作品でも脈絡なくマジカルエミや小公女セーラが縛られるし、同じく所収された「異邦人」では「私はキエフで被曝した」と語る主人公が『ダーティペア』のケイに「被曝したザーメンを一滴残らず、その美しい口で受け止めるんだ」という表現が飛び出す(註:筆者は、この単行本を中学生の時に読んでしまい寝込みました)。

 こうした作品を現代の商業誌に掲載することは、ほぼ不可能だと思う。もちろん80年代当時でも、まったく問題なかったというわけではない。

「ラムちゃんが、まずかったのか。小学館から弁護士がやってきたので……。一旦、出版社が絶版にして作品を差し替えたんです」

 80年代の単行本に「改訂版」が数多く存在する事情を尋ねた筆者にエル・ボンテージは、当時を思い出しつつ語ってくれた。

 でも、筆者が聞きたいのはそこではない。商業誌からは姿を消しても、エル・ボンテージはずっと、執拗に木目の描かれた背景で、縄を用いて、拘束されたヒロインを描き続けてきた。それも決して流行の作品ではないものばかりを。

「愛情表現といえば、かっこいいですけれど、実は自分のヌキネタなんです」

 すでに歴史の一ページになりそうなヒロインや、流行とは一線を画すヒロインを執拗に描き続ける理由を尋ねた筆者に、彼はそう答えた。

 長崎県に生まれ、大阪芸術大学映画学科を卒業した経歴を持つエル・ボンテージが、最初に性を意識したのは、ヒロインではなく鉄腕アトムだったという。

「何か、艶めかしさを感じました。その後、明確にセックスをしたいと思ったのはサファイアでしたね」

 そう語る姿は、なんのてらいもなく実に楽しそうだった。「初体験」の話に限らない。自らが作品の中で酷い目に遭わせているヒロインたちのことを、エル・ボンテージは、自分の彼女を惚気て話しているかのように楽しそうに語るのだ。そう、何かが憎くてヒロインを酷い目に遭わせているのではない。描かれているのは、すべて自分が好きになったヒロインなのだから。

「結果的に、こういったヒロインを描いていますが気に入ったヒロインがいたら、誰でも描きます。考えるよりも描きます。でも流行のヒロインは、ほかの人もやってるから……」

 話を聞いていくうちに、彼にとっての作品を描く作業とは、架空であるはずのヒロインとの心の交流なのかとも感じた。というのは、作風の最大の特徴である執拗な木目を描いている時に、興奮しているというからだ。

「私にとって、木目・縛られた女・縄は三位一体なのですが木目は最後の仕上げの時に描きます。時々、腱鞘炎になることもありますけれども、描くときには興奮しています」

 先に記したように「自分のヌキネタなんです」と言いながらも、エル・ボンテージは、それを作品という形に仕上げている。決して、多くの読者が集まる人気作品ではない。それでも、作品を発表しつづけるのは、この男がマンガの持つなんらかの魔力に取り憑かれているからだろうか。

「90年代のはじめ頃に、父親が体調を崩したのを機に筆を折ろうと思って、一度は九州の田舎に帰ったんです。その後、父親は亡くなったのですが、母親から遺品を渡されました。それは父親の自作のエロ小説や、エロ絵だったんです。それを見て感動しました。だから、自分は子どもの頃からSMに興味があったんだと。これを見て、俺はやらなきゃならないと決意して、もう一度上京したんです」

 なんらかの形で表現するかしないかは別として、誰もが持っている、人それぞれの性の世界観。それを本能のままに表現できるエル・ボンテージは「変態」とか「異常」ではない。

「今まではマンガをやってきましたが、マンガでない形の表現もしたいと思っています。映画やAVもつくってみたいんです。女子プロレスラーが縛られる作品とかどうでしょう」

 この言葉に、なんの制約にも囚われない真に自由な表現をできる心の持ち主なのだと思った。2015年、TPPをめぐり注目を集めた「二次創作」。エル・ボンテージの作品は、パロディを描く覚悟を教えてくれる類い希なものではなかろうか。

 なお、コミケ89では偶然にも真向かいが新刊でも縛られている『まいっちんぐマチコ先生』のえびはら武司先生のサークル。

「挨拶をしにいったら、笑って許してくれました」

 えびはら先生、いい人!
(文=ルポライター/昼間 たかし http://t-hiruma.jp/)

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