安倍首相の「悪だくみ人脈」 始まりは昭恵さんだった

1月6日(土)7時0分 NEWSポストセブン

左から加計氏、高橋氏、安倍氏、増岡氏(Facebookより)

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 安倍首相には地下茎とも言うべき「人脈」がある。首相にとって“真のお友達”である彼らとの関係は、あくまでプライベートのはずだったが、一連の「加計問題」によって、その人脈が政治と繋がっていることが露呈した。安倍人脈を探るアプローチで、これまでの永田町や霞が関とは全く異なる、新たに生まれた政治力学を森功氏(ノンフィクション作家)が浮き彫りにする。(文中敬称略)


 * * *

 男たちの悪巧み──。


 そう題した一枚の写真が世間で話題になり始めたのは、2017年2月頃のことだ。大阪の森友学園による国有地払い下げ問題が浮上したあと、安倍晋三夫妻の醜聞が岡山県の加計学園に飛び火した。まさにその頃である。


 愛媛県今治市の土地開発公社が造成した36億円相当の保有地が、加計学園に無償で提供され、岡山理科大学による52年ぶりの獣医学部新設計画がクローズアップされた。学園の理事長、加計孝太郎(66)が安倍首相の「腹心の友」で、獣医学部新設が安倍政権の進める国家戦略特区構想だったことから、「友人に対する依怙贔屓ではないか」と取り沙汰されてきたのは、周知の通りだ。


 その依怙贔屓疑惑は、一強と呼ばれた政権を揺るがし、昨年の政局における最大の議題に発展した。年が明けてなお、野党は22日から始まる通常国会に向け、追及の構えを崩さない。秋の自民党総裁選を控える首相にとって、2018年の前途はまだまだ見通せないといえる。


 今を時めく現職総理とその権勢を取り巻く友人たち。そのネットワークには意外な広がりがある。なかでも安倍と加計とのつながりを如実に物語ったのが、安倍昭恵が掲載したフェイスブック(FB)の写真だった。


 もとより当人は軽いジョークのつもりだったのだろう。が、昭恵が撮影し「男たちの悪巧み」と題したFBの投稿写真が数え切れないほどマスコミにとりあげられ、加計疑惑の火に油を注いだのは間違いない。


 くだんの「悪巧み」写真は2015年のクリスマスイブのときに撮影したものだとされる。安倍や加計、4人の男性がそれぞれリラックスしてソファーに身を沈め、銘々がワイングラスを片手にポーズを決めている。メディアによっては安倍と加計以外の2人にはボカシを入れ、氏素性をわからなくしているところもあるが、一人は三井住友銀行副頭取だった高橋精一郎(61)、もう一人が鉄鋼ビルディング専務の増岡聡一郎(55)である。メンバーの一人である増岡に「悪巧み」写真についてストレートに尋ねてみた。


「あれはずい分評判になりましたけど、そんなに意味のある写真ではないんです」


 増岡は開口一番、余裕を見せてこう笑いとばした。


「考えてみてください。われわれが本当に悪だくみをするような間柄だったら、(昭恵が)『悪巧み』なんて書くわけがないですよね。しかもその写真を公表するわけがない。昭恵夫人が写真を撮ったということからしても、そうでしょ。まあ、4人並べてみれば、なかには高橋さんみたいに客観的に見て人相の恐そうな人もいるんでね。悪だくみに見えたから、悪ふざけで茶化して書いただけです」


 数ある首相の友だちのなかでも、2015年のクリスマスイブには、とりわけコアな4人組が集ったといえる。写真には登場しないが、それぞれが夫人を連れて聖夜を祝い、楽しんだという。彼らの絆は、巷間伝えられているより、はるかに強く結ばれている。


◆「写真を見せられた」


 加計学園理事長の加計孝太郎などは、いまや総理の「腹心の友」としてすっかり有名になった感があるが、実はそれも獣医学部問題が表沙汰になって以降のことである。二人の関係については、永田町や霞が関の事情通たちのあいだでも、ほとんど知られていなかった。


 加計学園の獣医学部新設に異論を唱え、例の「総理のご意向」文書の存在を明言した前文部科学事務次官の前川喜平でさえ、二人の間柄については、まったく気づいていなかったという。


「私が安倍総理と加計さんの関係を知ったのは、事務次官になってからです。それも次官就任(2016年6月)からしばらく経った10月半ばくらいでした。二人の関係を知ったきっかけが、昭恵夫人のFBの写真だったのです」


 前川に取材したところ、こう話した。折しもちょうどその頃、前川のところに陳情にやって来たのが、文科省OBで内閣官房参与だった木曽功だった。木曽は内閣官房の参与でありながら、加計学園の理事を兼務してきた。そこで前川は、木曽から「文科省は(国家戦略特区)諮問会議が決定したことに従えばいいから」と迫られたという。


「それまで僕は、国家戦略特区で何が起こっているのかも知りませんでした。あまりに変なので、『木曽さんがやって来たことの背景は何なの?』と(大学設置窓口の高等教育局)専門教育課の担当者に聞いたんです。そのとき、担当者から総理と加計さんの関係を初めて説明してもらったのです」


 その説明のときに前川が見たのが、くだんの昭恵のFB写真だったのである。前川がこう打ち明けた。


「このとき獣医学部新設については、同時に日本獣医師会の北村(直人顧問)さんたちが、『加計学園を認めないでくれ』と松野(博一・文部科学)大臣のところへ陳情に来ていました。私はその陳情の場にはいなかったのですが、獣医師会の持ってきた資料の中に、昭恵夫人のFB写真があったのです。


 省内の担当者から一連の流れの説明を受ける中で、獣医師会が陳情に来たという報告を聞き、『獣医師会が持ってきた資料がこれです』と写真を見せられた。そのタイトルの『男たちの悪巧み』にはインパクトがありました。そこで初めて、加計さんと安倍さんは奥様も一緒にクリスマスを過ごすくらい仲がいいんだな、と知ったのです」


 安倍晋三の交友関係でいえば、政官界における側近たちや財界の応援団は広く世に知られてきた。だがその一方で、プライベートで付き合ってきた学生時代からの友人もいれば、知られざる実業家との交友もある。


 これまでそれらはほとんど明るみに出ることはなかった。が、図らずも、夫人のFB写真で「腹心の友」との親密な付き合いが浮かび、さらに、他の友人たちとの交友が徐々にわかってきた。


◆金融庁参与になった背景


 2015年のクリスマスパーティで撮られた「男たちの悪巧み」スナップに登場する4人のうち、安倍と加計、高橋の3人は、1977年秋から南カリフォルニア大学に留学していたときの同窓生である。つまり、それが40年来の付き合いという所以だ。加計は新聞の首相動静にもたびたびその姓名が出ているが、三井住友銀行の副頭取である高橋が登場するようになったのは、たまたまそれを目撃した記者が経済部出身だったため、高橋の顔に気づいたのだという。


 米国留学組の一人である高橋は、市場投資部門のスペシャリストとして、銀行・証券界でその名を知らぬ者がないほどの手練れのバンカーである。とりわけ金融界で勇名を馳せたのが、2007年5月に発生したサブプライムローン問題のときだ。三井住友銀行の関係者が言う。


「当時、銀行ではサブプライム関連の金融商品に5000億円規模の投資をしていました。その雲行きが怪しくなってきたので、高橋さんの判断でそれを売り払ってしまった。その翌2008年9月にリーマンショックに見舞われた。サブプライムの売れ残りが600億円ほどあって紙くず同然になり、そこは損をしたけど、(その先見の明の)おかげでずい分助かった。みずほなんかは1兆円規模の損失を出していたので、高橋さまさまでした」


 4人組のうち、安倍、加計、増岡はいずれも、父親や祖父の代から続く名門の家柄に育ってきたが、高橋だけはサラリーマンだ。やや異質な存在ともいえるが、他の2人に負けず劣らず、安倍に近いところにいる。


 2017年6月の株主総会をもって三井住友銀行副頭取から上席顧問に退いた。本人は周囲に、近く投資会社を設立するつもりだと話していたようだ。


「ところが顧問に退く直前の5月、金融庁の森信親長官から『金融庁の参与になってくれないか』と声がかかったのです。森さんはリーマンショックのときまだ審議官だったが、高橋さんの実力を高く評価し、迎え入れたといわれています」(同銀行関係者)


 6月、高橋は金融庁参与に就く。まさに加計問題で国会に激震が走るさなかに政府の参与に就任したのだから、安倍の意向が働いたのではないか、ともっぱらの評判だが、当人は「総理とはまったく関係ない」と意に介していないという。


◆会場はエグゼクティブラウンジ


 4人組の中で、増岡だけは米国留学組ではない。安倍より10近く歳が若いが、30年の付き合いがある。実はクリスマスイブの「男たちの悪巧み」パーティを呼びかけてきたのが、鉄鋼ビル専務の増岡であり、会場を提供してきた。いわゆる世話人のような存在だろうか。


 2017年の開催は首相動静(12月24日)で確認ができないが、クリスマスパーティは2015年、2016年と2年続けて東京駅に隣接する鉄鋼ビル南館の「エグゼクティブラウンジ」で開かれてきた。首相動静には出ていないが、2016年はセイコーHD社長(現会長)の服部真二夫妻も加わり、イブの夕餉をともにし、もう一組増えて5組のカップルとなっている。みな会食やゴルフの仲間たちである。会場を提供してきた増岡に聞いた。


「別にここ(鉄鋼ビル)でなくともいいのですが、要するに1年の暮れに集まろうという会で、その年その年でいろいろやってきました。代々木上原のピザ屋さんや(宇田川町の)焼肉屋さんなんかも行きましたよ」


 鉄鋼ビルの応接室で増岡がそう明かした。


「ただ、年末のレストランやホテルは他のお客様が予約をされるでしょ。そこに警備のためにSPがついてこられると、ご迷惑をかける。またクリスマスの繁忙期に他の予約が取れなくなっちゃうかもしれない。だけどここだったら、その心配がありませんからね。それで私が声をかけ、パーティを開いているんです」


 増岡が専務を務める鉄鋼ビルは、もとは広島県の中堅ゼネコン「増岡組」が終戦間もなく開発したビルだ。


 三菱グループが建設した丸の内の「丸ビル」と並ぶ戦後復興の象徴として東京駅八重洲口の隣に建設された。近代的なオフィスビルとして、その名が通ってきた鉄鋼ビルは老朽化とともに昨今の都心の再開発ブームに乗り、近代オフィスビルに建て替えられたのが、2015年10月である。


 パーティ会場となったエグゼクティブラウンジは、新鉄鋼ビル南館4階ワンフロアーにある。文字どおり特別な来賓客をもてなすための豪華なつくりで、ラウンジはむろん会員制だ。会員資格を見るとこうある。


〈会員になろうとする者は、運営者が行う所定の審査を経た上で入会の可否が決まることをあらかじめ了承するものとします。審査の方法・内容等は、理由の如何を問わず、運営者からは一切回答いたしません〉


 個人会員は、入会時10万円の入会金と10万円の預託金を支払い、月々5万円を納めるシステムで、法人だとその倍だ。高級ソファーの置かれている200平米近いオープンスペースは中庭風のテラスに面し、会員たちは接待用の78平米のシンフォニールームで寛ぐ。ちなみにシンフォニールームの使用料は、3時間で15万円とけっこうな値段である。その他、4階には5室の会議室やトレーニングジム、マッサージチェアーのあるリラクゼーションブースやロッカー、シャワールームまで備えている。宿泊施設こそないが、ちょっとした高級ホテル並みの設備といえる。


 2015年のクリスマスパーティは、増岡が新鉄鋼ビル竣工の披露を兼ね、安倍や加計、高橋たち、40年来の友人である南カリフォルニア大留学組のメンバーをカップルで招待したのだという。ラウンジでは、ソファーに身をゆだね、京橋の「シェ・イノ」のフレンチを前にワイングラスを手にした安倍や加計たちが上機嫌な様子だった。


 安倍一強を取り巻くその“友だちサークル”は、歴代総理のそれと一種異なる。いかにも危うさをはらんだ交友に感じてならない。


 クリスマスパーティの世話役、増岡は増岡組創業家の一員であり、戦時中の増岡組は海軍の御用商人として、財を成した。戦後、鉄鋼ビルを建設したのも、政治力のおかげだとされる。安倍とはどんな付き合いなのか。


「始まりは昭恵さんでした。僕とは同じ歳で学生時代からテニスやスキーの仲間でもあったのです」


 増岡本人はそう話した。次回は安倍晋三の知られざる友だちサークルにさらに潜り込む。


※週刊ポスト2018年1月12・19日号

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