将棋連盟フットサル部の蹴り初めにて、佐藤天彦九段からいただいた“お年玉”

1月7日(火)11時0分 文春オンライン

 まずはこちらをご覧いただきたい。


 日本将棋連盟サイト内の「先週の注目対局結果をまとめてチェック」( https://www.shogi.or.jp/match_news/2019/12/191223-191229_t_highlights.html )。


 こういうページがあったとは知らなかった。不勉強ですみません。公式できちんとしたものがあったら、私が右往左往する必要はない。実に便利である。


 これを書いている1月5日現在、棋戦情報のトップにリンクがあるので、今後もよきタイミングでサイトの分かりやすいところからアクセスできるようになることだろう。


 おかげさまで私のほうは、すべてを網羅しようとする総花的なものではなく、より個人的でマニアックな方向でいくことができる。


 今回は年末年始で2週間分の更新。よろしくお付き合いください。


12月26日、木曜日。


 夜に下町某所で小規模の忘年会。黒霧島のボトルを注文し、それをお湯割りにして、特に名を秘すがE島A治七段の愚痴などを聞きながらチビチビとやる。


 あとで仕事を終えた相崎修司さんが来たけれど、私は翌日が早いので、そこそこでこそこそと失礼させてもらった。将棋界では、誰かが「明日があるので」といって帰ろうとすると、すかさず「誰にだって明日はある」と返すことになっている。うかつなことは言えないのだ。



©iStock.com


 他には「○○にないものはない。ないといったらない」というのもある。ここには何でもあるという自慢かと思いきや、ない袖は振れないというダブルミーニング。地名はどこでも使えるので汎用性が高いのだが、私が知る限りの元祖は本八幡だったと思う。


 あれは20年くらい前、まだ奨励会に在籍していた頃だろうか。当時は千葉県の市川に住んでいて、隣駅の本八幡で開いていた加瀬純一七段の教室に、ちょくちょくお手伝いに行っていた。当時の加瀬教室の生徒さんは愉快な人が多く、終了後のお食事やカラオケも込みで、しがない奨励会員には数少ない楽しみのひとつだった。そんななかで聞いたのが例の言い回しである。


「本八幡にはね、ないものはないんだ」


「たしかに便利なところですけど、そこまでですかね。あれとか、ほらこれもないような気が……」


「はっはっは。だから言ってるじゃないか。ないものはないって」


 そうそう、先日の木村一基王位の祝賀会では加瀬教室でお世話になった方々の元気な姿を見ることができた。



 教室は現在も続いており、指導する棋士も木村王位をはじめ実に豪華。詳しくは「加瀬純一七段将棋教室」( https://kaseshogi.webnode.jp/ )にて。



12月27日、金曜日。


 棋王戦の挑戦者決定戦第2局は本田奎四段が快勝。挑戦権獲得とともに、五段昇段を果たした。勝ちながら強くなっていく姿は実に頼もしい。


 一方その頃、受けて立つ渡辺明三冠は軽井沢でカーリングを楽しんでいた。しっかり勝って、しっかり遊ぶ。後者は誰にでも出来るのだが、前者が非常に難しい。わかっちゃいるけど真似できない。


 なお、この挑決第2局の新聞観戦記は私が担当させていただいた。棋王戦の観戦記は全国の地方新聞20社に掲載されるので、加盟社のお近くに住む方はぜひ新聞をチェックしてみてください。詳しくは日本将棋連盟サイトの棋王戦ページ( https://www.shogi.or.jp/match/kiou/ )にて。



12月29日、日曜日。


 NHKのEテレで「将棋の日in甲府」が放映された。これは11月に収録されたものだそうで、きっと読者のなかにも現地で楽しまれた方がいらっしゃることと思う。


 文春オンラインでも相崎修司さんがイベントをレポート( https://bunshun.jp/articles/-/16221 )していたが、放映日の都合で対局については触れられていなかったので、合わせて読んだら2倍楽しめるかもしれない。


 さて、第1部の企画は「10秒将棋勝ち抜き戦」。戸辺誠七段、中村太地七段、藤井聡太七段による勝ち抜き戦である。



解説もそれぞれ、聞き手もそれぞれ棋風がある


 最初の中村−藤井戦の解説は、佐藤和俊七段が務めた。ふだんから口数があまり多くないタイプであるが、この日は実に積極的に話していた。きっと聞き手のカロリーナ・ステチェンスカ女流1級が困らないように頑張ったのだと思う。クールでありながら、うまくリードをするダンディな和俊さんであった。


 ポーランド出身のカロリーナさんは将棋のプロを目指して日本に来て、山梨県に住みながら修行に励んだ。もともと日本の文化が好きであり山梨学院大学に通っていたこともあって、日本語もまったく問題なく話している。そんななかでも駒の名前、「カク」や「ヒシャ」といったあたりは独特なイントネーションがあり、それがキュートなアクセントになっていた。


 将棋は角換わりで藤井さんが快勝。強い。


 2戦目は戸辺−藤井戦で、解説は飯島栄治七段、聞き手は山田久美女流四段。こちらは飯島さんのソフトかつときに自虐的な語りを、久美姉さんがキビキビとしつつも優しくリードするかたち。これはこれで収まりがよく、とても見やすかった。解説もそれぞれ、聞き手もそれぞれ棋風があるのである。


 将棋は藤井さんが戸辺さんの振り飛車をきっちり負かして優勝。強いね、本当に。



第2部、合わせて五冠の豪華対決


 第2部は、客席参加型の「次の一手名人戦」。渡辺明三冠と永瀬拓矢二冠という、合わせて五冠の豪華な対決となった。


 解説は木村一基王位と杉本昌隆八段のコンビ。できるだけ多くの人に正解してもらいたい思いと、進行の都合もあるため絞っていかなければいけない事情の板挟み。なかなか難易度の高い役回りなのだが、お二人はうまく立ち回っておられた。



 優しいだけでは生きていけないのが将棋界。途中で解説に参加した藤井七段は、きっとこれから学んでいくことだろう。あれもこれもオールマイティだったら周りはたまらねえや。


 対局のほうは永瀬さんが受けの強さを発揮して快勝。次の一手名人になったのは埼玉県から来たという女性だった。「勘だけでここまで来てしまった」と謙遜されていたが、なんにせよ名人はえらいのである。それほど強くなくても楽しめる、一番にだってなれるのだから、将棋の楽しみ方は無限大なのである。


1月2日、木曜日。


 Eテレで放映された「棋士が語る! 平成のNHK杯戦名対局」を見る。いきなり中原先生に米長先生、和服姿が超渋くてカッコイイ。村山聖先生、ぷっくりしていてカワイイ。将棋の内容は擦り切れるほど知っているから、目が行くのは棋士の所作や表情ばかり。観る将が増える理由がよく分かる、眼福のひとときであった。


1月4日、土曜日。


 お昼から東陽町の江東区文化センターの「特撰落語名人会」に行く。音楽のライブでは平均年齢を上げることが多いが、落語会はその逆で古参の年配が多い。それでも最近は若い人の姿が多くなってきた気がするのは、将棋界のイベントでも感じることだ。


 開口一番はお正月らしく、三遊亭歌つをの「初天神」。2番手に柳家さん喬師匠の「ねずみ」。さん喬師匠はチューハイのCMなどでおなじみの柳家喬太郎師匠のお師匠さん(師匠、師匠って変な感じですね)で、今年で72歳になる年男。きょうの真打のなかでは一番年上で兄さんのはずだけど……と思っていたら、やっぱり仕掛けがあった。


 続く桃月庵白酒師匠が古典の「富久」。トリの三遊亭白鳥師匠は、その富久を創作落語にアレンジした「富Q」を演じる趣向だったのだ。落語会はテレビではとても出せないようなブラックなネタが結構出てきて、思わずドキッとしてしまうことも。将棋の対局や大盤解説などもそうだが、現場には独特な迫力や楽しさがある。



将棋連盟フットサル部のお約束


 初笑いのあとは急いで移動して、将棋連盟フットサル部の蹴り初めに参加。正月ボケの身にはハードだったものの、楽しく汗をかくことができた。佐藤天彦九段の重いシュートをみぞおちに食らったのも、まあ一種のお年玉といえる。



 私はここでも平均年齢底上げ側を担当しているが、最年長は49歳の瀬川晶司六段だ。自分も細く長く、何かしらのスポーツを続けていけるといいなと思う。


 ボールを蹴る合間にスマホで将棋連盟ライブ中継を開くのも、将棋連盟フットサル部ならではのお約束である。この日はA級順位戦の▲稲葉陽八段−△渡辺明三冠戦や、竜王戦6組の▲小倉久史七段−△横山大樹アマ戦。それに上州将棋祭りのお好み対局が中継されていた。盛りだくさんで目移りしてしまう。


 いやー、それにしても強かったですね、小倉先生。三間飛車が好きな人、居飛車穴熊に苦戦している人は、今から日本将棋連盟モバイルに加入してでも見てほしい。


 サイト( https://www.shogi.or.jp/lp/mr201704/ )によると2週間無料とのこと。好局振り返りのシリーズも充実しているので、まだ試していない方はぜひ。


1月5日、日曜日。


 すっかりこの日が日本将棋連盟の指し初め式だと思ってスケジュールを組んでいた。寒空の下ひとりで鳩森神社の将棋堂を詣でたり、ひとりでリレー将棋をする羽目になるところだった。実に危ないところだった。


 気を取り直して某SNSを見ると、関西の某女流の先生が私と同じ勘違いをして、さらに会館まで行っていたことがわかった。ご本人の名誉のため絶対に実名を出すことはできない案件だ。


 それはそれとして。長谷川優貴女流二段、ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに。




(後藤 元気)

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