「首吊り自殺が起きた事故物件に住んでみた」芸人・松原タニシが語る“死にやすい部屋の条件”

1月7日(火)17時0分 文春オンライン

 いま僕は全国の事故物件情報を集めている。できれば確実に「出る」物件、何かが「起こる」物件を求めており、条件が合えば住むつもりだ。効率は良くないかもしれないが、ツイッターで呼びかけて、良い情報があればダイレクトメッセージで送ってもらうようにしている。


 しかし、「これだ」という物件にはなかなか辿り着けない。怪談話でよく聞くような「女の霊が出る」部屋や「住むと呪われる」部屋というのは、実際には稀有な物件なのである。


「死にやすい部屋」は存在する


 これまで9軒の事故物件を渡り住んできた。その結果、実体験としてわかったのは、人が死んでいるからといって“何かが起こる”とは限らないということ。むしろ何も起きない物件の方が多い。



松原タニシ氏 ©悠遠かなた


「物音が鳴る」「気分が滅入る」などといった報告例では、そうした事象を「そこで人が亡くなっている」という事実と結びつけた結果、霊の仕業だと思い込んでしまう人が多いようだ。大抵の場合、その建物の性質上寒暖差によって生じる家鳴りであったり、その人自身の精神的な不安定さからくる鬱状態が原因である。


 つまり、事故物件だから何かが起きたのではないということだ。


 ただ、元々その部屋が“そう”だから、入居者が死んでしまった場合もある。いわば、「死にやすい部屋」というのが実際に存在するのだ。


1K6帖ロフト付き、家賃3万6000円の物件


 僕が今から4年前に住んだ3軒目の事故物件は、大阪にあった。玄関のドアノブで30代の女性が自殺を図った部屋だ。1K6帖ロフト付きの部屋で、家賃が3万6000円。


 ちなみにこの部屋へ内見に行った日、心斎橋の商業ビルの屋上から飛び降り自殺を図った女学生が、商店街のアーケードの上に落下した。僕は案内してくれた不動産屋と一緒に、その直後の現場をたまたま通りかかったのを覚えている。まあこれはただの偶然だが。




前入居者は恋人と喧嘩の末、命を絶った


 部屋はとても綺麗だった。7階建マンションの最上階で、ロフトの窓からは大阪市内が一望できた。何の不満もないはずのこの部屋で、前入居者は恋人と喧嘩の末、突発的に命を絶った。


 僕が異変に気づいたのは住み始めて数週間経ったあとだった。この部屋に来てからどうも慢性的な頭痛が治まらない。そのせいもあってか、些細なことでイライラするようになっていた。



 ある日、華井二等兵という後輩芸人が泊まりに来た。僕はいつも下で寝ているので、華井にはロフトの上で寝てもらった。時おり聞こえる後輩の呻き声のような寝息に少々苛立ちを覚えながらも、その日はなんとか眠りについた。


頭痛薬なしでは生活できなくなった後輩


 翌朝、ロフトで寝ていた華井は頭を抱えながら悶絶していた。酷い頭痛のようだった。この日以降彼は約1ヶ月間、頭痛薬なしでは生活できないほど、頭の痛みに悩まされることになる。


 しかしその代償として、彼は大きなヒントを与えてくれた。


 一つは、この部屋で頭が痛くなるのは僕だけではないということ。しかも個人差がある。


 もう一つは、ロフトの柵の違和感だ。



「この柵、一箇所だけ凹んでますよね?」


 彼が指摘した箇所には確かに不自然な凹みがあった。しかもそれだけではない。コの字型に設えられた柵の一辺だけが、止め金で補強されている。


「これ、もしかしてここで吊ってません?」



 細いロープに人間一人の全体重の負荷がかかれば、木製の柵をぐらつかせ、そこに食い込んだ跡を残すこともあるだろう。となると、やけに綺麗に塗り直した白いペンキも、その痕跡を隠すためなのではないかと疑ってしまう。


 だが、僕が不動産屋から聞いた情報は「1年前に玄関のドアノブで首吊り」である。ロフトの柵で首を吊ったとは聞いていない。



「大島てる」で調べてみると……


 僕は事故物件公示サイト「大島てる」で自分の部屋を探してみた。もしかしたら僕の知らない情報が載っているかもしれない。「大島てる」にはマップ上に火の玉のアイコンが表示されていて、それをクリックするとさらに住所と死因、死亡時期などが表示される。


 僕が住んでいる場所に、火の玉はついていた。クリックすると、そこにはこう書かれていた。


「3〜5年前、ロフトで首吊り」


 つまりこの部屋は、二重の事故物件だったのだ。元々ロフトで首吊りがあった事故物件に住んだ女性が、1年前に玄関のドアノブで首を吊った、ということである。


 さて、この事実をどう解釈するか。



「二重の事故物件」に理由はあるのか?


 オカルトに結びつけるなら、ロフトで首を吊った前々住人(そのさらに前かもしれないが)の霊に引っ張られて前住人も自殺をしてしまった、となるだろう。しかし、前住人は前々住人が首を吊ったロフトではなく、玄関のドアノブにタオルをかけて首を吊っている。霊に引っ張られるなら、同じ場所で同じ方法で、の方がなんだか納得がいくのだが、実際はそうではない。


 ここで気になるのが、僕が不動産屋から聞いた「恋人と喧嘩の末、突発的に自殺」という情報である。何故そんなことがわかるかというと、部屋には遺書が残されていたからだ。さすがに現物は見せてもらえなかったが、そのような内容がおそらく書かれていたのだろう。



「死にやすい部屋」にはお気をつけて


 僕は、「頭が痛くなる」ことが原因ではないかと思う。この部屋に1年半住んでみて実感したのは、慢性的な頭痛に悩まされるため、常にイライラする心理状態に陥ってしまうということだ。


 何故頭が痛くなってしまうかはわからない。もしかしたら塗料などの化学物質が人体に悪影響を及ぼしているのかもしれないし、磁場や電波がどこからか出ていて脳波に支障をもたらしているなどの物理的な要因があるのかもしれない。あるいは、僕が見えないだけで本当は幽霊がうようよいて、何か悪さをしているのかもしれない。本当の原因は僕にはわからないのだけど、ただ、頭が痛くなるという事実は間違いない。



 この「頭が痛くなる」現象が、前の住人を些細なことで苛立たせ、恋人と喧嘩をさせ、命を絶つに至るまでの後押しをしたのではないかと、僕は想像する。「たかが頭痛で自殺するかね」と思うかもしれないが、慢性的な頭痛は思考能力を低下させ、ネガティブな感情を増幅させる。実際に住んでいた僕がそうだったのだから。


 ただ、そう考えると、ロフトで首を吊った前の前の住人も、この部屋に元々ある「頭が痛くなる」作用の犠牲者なのかもしれない。


 人が死んだ部屋にはそれぞれ理由がある。偶然もあれば必然もある。皆さんも「死にやすい部屋」には気をつけてください。



(松原 タニシ)

文春オンライン

「事故物件」をもっと詳しく

「事故物件」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ