中島博之弁護士「私が漫画村問題を追及する理由」

1月8日(火)7時0分 NEWSポストセブン

「読者も作者を応援する気持ちを忘れずにいて欲しい」と中島博之弁護士

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 2018年の検索語上位として記録された「漫画村」は、漫画の海賊版サイトの代表的存在として国会でも取り上げられるほど大きな社会問題となりました。各方面の専門家が問題視するなか、漫画村運営の実態が少しずつ明るみに出始めています。漫画家のたまきちひろさんの依頼を受けて、漫画村問題の追及を続けている中島博之弁護士が、海賊版サイトの問題点について解説しました。


 * * *

 漫画村で漫画を読むことの何が悪いのか?という声が未だに聞かれます。著作権侵害が著しいサービスを利用することは、本来、作者が受け取る報酬を奪い、報酬が得られなければ仕事としての漫画が成り立たず、漫画家は仕事を続けられなくなります。もし、そうなったら、私たちは新しい漫画を読めない世界で暮らさねばならないかもしれません。そんな世の中にはしたくないと考える漫画家のたまきちひろ先生と立ち上がり、漫画村の運営者の責任を追及するために、法律家として動いています。


 漫画村の運営者が、著作権法などの法律を守っていないことは、明らかです。日本という国は、法律というルールを守ることで皆が暮らしている社会なのですから、法律の専門家として、この状態は見過ごせません。運営者は、法を守らなかった刑事責任を負うべきだと考えていますし、民事でも責任を負うべきだと思います。


 たまき先生は、このまま海賊版問題を放置すると、漫画そのものがなくなってしまうかもしれないという危機感を持って、漫画村の問題に取り組んでいます。法律家ではありますが、私自身も漫画のない未来はやってきて欲しくないと考えています。漫画がない人生なんて、想像がつきません。


 実家には手塚治虫作品が全巻そろっていましたので、『ブラックジャック』をはじめとした手塚漫画は繰り返し読みました。漫画雑誌では『コミックボンボン』を小学生のときに愛読していたのですが、大人になって、廃刊した(※2017年に休刊、2017年からWEB漫画として再開)と知ったときはショックでした。掲載誌が休刊してしまった神堂潤先生の『redEyes』も好きな漫画ですが、一年に一回くらい単行本が出版されるので、見逃さずに読み続けています。最近は『封神演義』の藤崎竜先生が描いている『銀河英雄伝説』の漫画連載が楽しみです。


 他にも漫画を描くことを諦めなかった、ひよどり祥子先生の『死人の声をきくがよい』も好きです。過去に自費出版を行うなど厳しい時期があったそうなのですが、それでも自分の作風を信じて描き続けて今がある先生で、そういう人は、やはり応援したいですね。


 そんなふうに、漫画を読み続けていると、まだ知らない、面白い漫画に出会えます。でも、もし漫画村のような海賊版サイトを放置してしまったら……。漫画を描き続けてくれる漫画家さんがいなくなり、新しい漫画との出会いがなくなってしまうでしょう。


 海賊版サイトの運営は、人の著作物を勝手に使っているのですから、やはり悪意があると言わざるを得ません。もちろん、その運営をできないようにすることが根本的な解決となりますが、やはり、読むだけの利用者にも少し考えて欲しいことがあります。


 自分ひとりくらい盗み見ても問題ない、と思ってはいませんか? 同じように自分だけなら問題ないだろうという人が何万人、何百万人、何千万人と広がったら……。本来なら、作品を読んでもらうことで作者が得ていたはずの報酬が、無関係の他人に渡ります。作者には一円も入りません。そういう大問題を海賊版サイト、とくに漫画村は起こしました。



 私自身は、2017年の夏ごろに「漫画村」というサイトの存在を知りました。見てすぐ、著しい著作権侵害が行われていると確認すると同時に、ずいぶんと日本の漫画事情に詳しい人が更新していて、少なくとも日本国内で生活しないと作れないサイトだと驚かされました。というのも、漫画雑誌の発売日やその翌日に公開したり、公式の漫画アプリがイッキ読みキャンペーンを開始すると、すぐに同じ漫画の全巻公開をして対抗してくるなど、あまりにこまめな動きをしていたからです。各社の漫画アプリの動向に詳しくないとできません。日本事情に詳しい人が運営しているのは確実だと考えました。


 遠からず、これは大変なことになるだろう、と予想していたところ、あっという間に広まり、見過ごせない規模になってしまいました。


 インターネット上にある漫画の海賊版は何度も問題になってきましたが、漫画村には、これまでの海賊版サイトと違う点がいくつかあります。もっとも大きな違いは、サイトにアクセスしたとき、ダウンロードではなくビューワーで閲覧できることです。


 2010年に著作権法が改正されたとき、違法インターネット配信による音楽や映像ファイルのダウンロードが違法になりました。このとき大きく報道されたことや、いまも全国の映画館で上映されている『NO MORE 映画泥棒』CMの効果もあって、多くの人が、著作権が怪しいものをダウンロードすることに抵抗を感じるようになったと思います。ところが、漫画村はダウンロードをせずに見られるため、後ろめたさをあまり感じずに閲覧できてしまいます。


 海賊版として提供されていたダウンロード用ファイルの多くは、漫画をスキャンした画像データをzipやrarといった圧縮ファイルの形にしていました。この形式だと、ダウンロードしたあとに解凍する作業が必要で、ある程度の知識を持っていることが利用の前提でした。スマホでも不可能ではない作業ですが、PCからの方が利用しやすいので、スマホしか持たない人にとって海賊版は利用の敷居が高いものでもありました。


 ところが、漫画村はスマホという身近なもので見られて、罪悪感を持ちづらいサイトです。そういったカジュアルさもあって、月の利用者数が1億人弱だとか、YouTubeやTwitterに迫るほどの利用者を集めていると言われるほどのサイトに成長してしまいました。


 さらに、漫画村の運営者は様々な手段で収益を得ていることが分かっています。


 分かりやすいところでいうと、広告を掲載し月に約1億円、最低でも5000万円は稼いでいたと言われています。さらに漫画村では、閲覧する人のPCを利用して仮想通貨のマイニング(採掘)をさせていたこともありました。こちらは相場の問題もあるので、具体的にどのくらいの収益に繋がったのか不明です。


 運営者が手にした莫大な収益は、作者にまったく還元されません。また、日本国内で活動することで莫大な収益を得ているにもかかわらず、日本にきちんと納税しているかどうかも不明です。



 どちらの方法も、サイト訪問者が増えるほど利益が増える仕組みです。自分ひとりくらいが見ても影響しない、という軽い気持ちを持つ人が増えるほど漫画村の利益になるので、罪悪感をあまり感じずにすむデザインや仕様が工夫され、便利さを追求する運営がされていました。公式かと見間違えるような工夫のため、海賊版だと理解せずに利用してしまった人もいるようです。


 いくら利用しやすかったとしても、それは作者から勝手に奪った作品で行われている商売のひとつです。その海賊版サイトを利用することは、盗品を便利に使っているようなものです。盗んだものを並べた商店は、閉店するのが普通です。インターネット上であろうと、その原則は変わりません。そして、海賊版サイトの運営者は著作権をもつ人たちに対して収益を返すべきですし、読者も、作品を生み出した作者を応援する気持ちを、ほんの少しでよいので忘れずにいて欲しいと思います。


【PROFILE】なかじま・ひろゆき/弁護士(第二東京弁護士会所属)。2010年神戸大学大学院法学研究科法科大学院修了、衆議院議員秘書を経て2011年弁護士登録。国会議員政策担当秘書の資格所持。サイバー犯罪に関しては警察に捜査協力も行う。ITと知的財産分野を中心に活動する他、電力会社や医療法人の顧問、有名ファッションブランドのプロデューサーを務めるなど多岐にわたって活躍する。海賊版問題を解決できる『銀河英雄伝説』ラインハルト・フォン・ローエングラムのような存在の到来を密かに待っている。

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