古市憲寿さんが20歳の自分に読ませたい「わたしのベスト3」

1月9日(火)7時0分 文春オンライン



古市憲寿/社会学者 ©文藝春秋



 子どもの頃から「世界の見取り図」を探し続けていた。この世界は一体、どんな原理で成立しているのだろうと考えるのが好きだったのだ。幸いにして、僕がまだ二十歳だった頃には出版されていなかった素晴らしい本たちを、この数年で手に入れることができた。


 ルイス・ダートネル 『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』 は、ほぼ滅亡してしまった世界で、どうしたらゼロから文明を再興できるかを考えた一冊だ。世界の終わりを舞台にしたサバイバル漫画と違い、きちんと人類が文明を取り戻す点まで考えているのが特徴。農業一つをとっても、そこには人類の叡智が集約されていることがわかる。


 しかし文明は、技術だけでは成立しない。人間たちの日々の営みが社会を織りなす。社会を根源的に考えるには東浩紀 『ゲンロン0』 を読むのがいい。「観光客」という、誰もが知る言葉を糸口に、人々がいかにつながることができるのかという命題に真っ向から挑んだ挑戦的な一冊だ。観光客という存在は、様々なコミュニティをつなぎ、もしかしたら戦争の抑止にもなるのかも知れない。哲学から時事問題を縦横無尽に渡り歩き、何とか希望をつなごうとする本書自体が、一つの観光の実践としても読める(前半と後半で話題が変わるように読めることも含め)。とにかく比喩がわかりやすく、哲学書としては異様に読みやすい。


 社会を生きる主役は、いつの時代も人間。そして時に、不合理で向こう見ずな人間が、社会を動かす力を持ってきた。藤崎彩織 『ふたご』 は、人気グループSEKAI NO OWARIのピアニストが書いた自叙伝的な小説だ。社会運動ではよく「最初のフォロワーの存在こそが、孤独なバカをリーダーへと変える」と言われる。『ふたご』も、社会からドロップアウトした少年が、仲間を見つけ、成功へ向かう物語だ。語り手は、彼を「ふたご」のように支える巫女のような女の子。現代の神話としても読める。


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『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』ルイス・ダートネル/河出書房新社



『ゲンロン0』東 浩紀/株式会社ゲンロン



『ふたご』藤崎彩織/文藝春秋




(古市 憲寿 )

文春オンライン

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