減反と農地整備並行する農業基盤整備 20年で42兆円消費

1月9日(木)7時0分 NEWSポストセブン

 2014年、交渉中のTPP(環太平洋経済連携協定)の進展を背景に、農政に大きな変化が生ずることが予想される。その一端が減反政策の廃止だが、大前研一氏は、減反という制度を「理解不能な政策」と切り捨てる。以下、大前氏の解説だ。


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 コメ価格が下がらないように生産量を調整してきた「減反」が、2018年度で廃止されることになった。減反に参加する農家に10アール当たり1万5000円を一律に払ってきた補助金は、2014年度から7500円に半減させて2018年度に完全になくすが、その代わり、家畜の餌になる飼料用やパンなどに使う米粉のコメづくりに転作した場合の補助金を増額するという。


「自立した農家」を育てることを目的とした農業政策の約50年ぶりの大転換、と政府・農水省は喧伝している。しかし、それで本当に日本の農業を生まれ変わらせることができるのかといえば、甚だ疑問である。


 減反の廃止は当然だ。もともと今までの農政が完全に間違っていたのである。減反政策は、日本人のコメ離れと人口減によるコメ消費の減少で1971年度から始まり、コメの生産量は1967年度の1445万トンをピークに徐々に減少して2012年度は何と6割の869万トンになっている。


 本来、需要が減少したら供給を減らさなければならない。ところが、農家にとっては他の作物より補助金の多いコメが一番儲かるから、放っておけばコメを生産してしまう。そうすると供給が需要を上回って価格が下がる。それでは農家が困るから計画的な減反によって供給を減らし、減反すれば補助金を出すという制度を作ったのである。


 しかし、価格を維持するために補助金を払って生産量を調整(減反)するというのは、どう考えてもおかしい。余るなら生産をやめればいいし、価格が下がるなら消費者に還元すべきである。



 さらに、1986年から約7年続いたGATT(関税貿易一般協定)のウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)でコメ市場開放を迫られた日本は、コメの778%(1キロあたり341円)の関税を維持する代わりに毎年一定量を無税で輸入すること(ミニマムアクセス)を義務づけられ、関税も毎年下げて最終的にはゼロにすると約束させられた。


 そして、ウルグアイ・ラウンド対策として競争力を強化するという名目で「農業基盤整備事業」なるものを20年間で42兆円もかけて実施した。減反する一方で新しい農地を作るという理解不能な政策である。しかも、その結果は生産性も競争力も全く上がらなかった。したがって、ウルグアイ・ラウンド終了から20年が経過しても日本は市場開放できず、コメの関税は778%のままである。価格維持のための減反にもカネを注いできた。これ以上の悪政はないと思う。


 結局、農水省は「農業」を守りたいのではなく、自分たちの「農業利権」を守りたいだけなのだ。なぜなら、日本の農業はとっくに崩壊しており、いくら補助金を出したところで競争力を持ちえないということを、誰よりも知悉(ちしつ)しているのは農水省だからである。


※週刊ポスト2014年1月17日号

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