久米宏 ニュース番組で小宮悦子を「悦ちゃん」と呼んだ理由

1月9日(火)7時0分 NEWSポストセブン

なぜ小宮悦子を「悦ちゃん」と呼んだのか

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 テレビが政治を動かし、時代を動かす──そんな番組は、『ニュースステーション』(テレビ朝日系)以降ない。なぜそれほどの影響力を持ち得たのか、今のテレビとは何が違うのか。初の自伝『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』を刊行した久米宏氏が、自身の半生を振り返りながら、「テレビ論」を語り尽くした。


 * * *

『ニュースステーション』は1985年の秋に始まったんですけど、その年のゴールデンウィークに、僕は倉本聰さんの富良野塾にいました。『ニュースステーション』のキャスティングについて倉本さんに相談したかったからです。


 ただ、『ニュースステーション』が始まることは極秘事項だったので、「テレビでワイドショーをやるとしたら、キャスティングはどのように決めていけばいいでしょうか?」という感じでうかがったと思います。


 倉本聰さんのお考えは「みんなが同じ方向を向かない方がいい」というものでした。趣味嗜好がバラバラな人間たち、個人の意見を持つ独立した人間たちがたまたまスタジオに集まった方がリアルだろう、と。つまり、社会の縮図です。


 なるほどと思った僕は番組に緊張感を持ち込もうとした。僕の言うことに小宮悦子はノーと言うとか、中継レポーターの若林正人さんも僕の言うことを全然聞かないとか。


 ふだんは小宮悦子と呼び捨てにしている僕が、たまに「悦ちゃん」と呼んだのはわざとです。「もしかしたら、あの二人は何かあるんじゃないか?」と勘ぐってくれる人が100人に1人でもいてくれたらいいな、と思った。


 民間放送が毎晩、1時間以上のニュース番組をやるというのは初めての試みです。だから、経営的に成功すれば、あとは何をやっても大丈夫だろうと思いました。


 たとえば、NHKのアナウンサーはとても厳しい職業で、ニュース原稿に手を入れようものなら即座にクビになるという世界です。でも、僕はアドリブで平気で変えた。かなり自由にさせてもらいました。照明やセットについても深く考えました。


 夏はスタジオ全体を少し青くして涼しい感じを出そうとか、冬は暖色にして、なんとなく温かい感じを出そうとか。セットとはいえ、窓の外がいつも同じなのは変じゃないか。木があるのなら、秋になったら紅葉するだろう、とか。


 歌番組では当たり前のように行なわれている演出を、ニュース番組に持ち込んだんです。


『ニュースステーション』が軌道に乗った頃、CNNが取材に来ました。


「『ニュースステーション』をやる以前は、歌番組の司会をやっていました。その前はクイズ番組と料理番組の司会です」と言ったら、CNNの連中は腰を抜かしていましたね。そんなことはアメリカでは考えられない、と。


 アメリカのニュースキャスターは、地方局のレポーターから始めて、ニューヨークやロサンジェルスの大きな放送局に引き抜かれ、最終的にウォルター・クロンカイトやダン・ラザー(いずれも『CBSイブニングニュース』のアンカーマン)までキャリアアップしていく。


 いわゆるアンカーマンはどのニュースをどの順番で扱うかを決める編集権を持っています。それぞれのニュースに自分の意見をつけ加えることはほとんどないけれど、ニュースをチョイスする時点で、最大の発言をしている。


 ところが、日本のニュースキャスターは言ってみれば芸人あがりだというのですから、彼らが理解不能なのも当然です。


■聞き手/柳澤健(ノンフィクションライター)


※週刊ポスト2018年1月12・19日号

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