佐久間良子 頭の後ろ側にも二つ、舞台のときは目が四つある

1月9日(水)16時0分 NEWSポストセブン

大女優は舞台で緊張するのか

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、女優・佐久間良子が、石井ふく子演出について、舞台での緊張感について語った言葉をお届けする。


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 代表作の一つとなった一九八三年の『唐人お吉』をはじめ、佐久間良子は石井ふく子演出の舞台作品に数多く出演してきた。


「石井先生は女の情感のつけ方をよく教えてくださいました。『ここはどうしたらいいですか』と伺うと、ご自分で演じてくださるの。座り方一つにしても『こうすると女の美しさが出る』とかすべて教えてくださる。大変尊敬している先生です。


 ですから、石井先生は最初から役者が芝居を考えてくるというのがあまり好きではないんです。私も感じたものを自然と出すように心がけています。自分が『こうだ』とあらかじめ固まっていますと、現場に行って相手役の出方が考えていたのと違っていた時に苦しいですからね。割とニュートラルにして臨んでいます。


 そこで重要なのは、『間』です。相手の息との間によって芝居は全く違ってきますから。それだけに難しいんですよね。


 はじめは舞台に出るのが怖かったです。三時間なら三時間、凄い緊張のしっぱなしですから。でも、それに慣れてくると、その時の間の中でどういう芝居をするか──動きとか、目線とか──そういうことが自分の中でうまく納得できると楽しいんですよね。特に舞台の場合、毎日のことですから。毎日同じことをやっているようで、同じ芝居は二度とできないんですよ。


 まさに一期一会。セリフのやりとりにしても、その日によって違います。お互いのキャッチボールが上手くいって、間と芝居がすぽっとはまると、自分の中で気持ちいい。そういう生ならではの緊張感が楽しいですし、好きです」


 多くの芝居において、主役として一座を引っ張る「座長」のポジションであり続けている。



「舞台の時は『目が四つある』と言っています。お客さんと向き合っている二つの目の他に、頭の後ろ側にもう二つ。


 後ろの方で共演者たちがどう動いているか、あるいは舞台裏で何かトラブルは起きていないか。そういったことまで感じ取らなくてはならないんですよね。


 結局、『嫌だ、嫌だ』と言いながらも演じることが好きなんですよね。演じている時だけでなく、役を作って、それがある程度評価されたりすると、やっぱり凄く嬉しいですから」


 東映で映画デビューしてから舞台に主戦場を移した現在まで、一貫して「スター」としての道を歩んできたようにも映るが、実際に話をうかがってみると、その意識は完全に「役者」として確立していると感じた。


「普通にやって、みんなと同じように現場で過ごしてきました。『私はスターだから』という意識は全くないですし、そういうのは好きではないです。


 東映の『五番町夕霧楼』の時も、主演とはいってもスターとして扱うというよりも役者として丁寧に扱っていただけました。ですから、私も決して甘えることはありませんでした。


 スターというのは、お客さんやご覧になった方がそう思ってくださるだけであって、私としては役者としての道を自然と歩いてきましたから」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


■撮影/藤岡雅樹


※週刊ポスト2019年1月11日号

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