映画『エマニュエル』シスターフッドにも発展する“女性主体のエロティシズム”も描く
2025年1月10日(金)17時0分 オリコン
映画『エマニュエル』(公開中) (C) 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHE FILMS
舞台を現代に変えて、観る者にめくるめく興奮と陶酔、さらには幸福感までも与えるエロティシズムを、大胆かつ刺激的に描き切ったのは、中絶が違法だった時代のフランスの女子学生の妊娠を描いた『あのこと』(2021年)で、「第78回ベネチア国際映画祭」で最高賞の金獅子賞を受賞したオードレイ・ディヴァン監督。
原作が「一人称で展開されている」ことに目を付け、1974年の映画版とは異なる視点から「エマニエル夫人」を映画化している。ディヴァン監督は創作する際、「女性主体のエロティシズムとはなにか?」を最重要課題として考えていたと明かしており、その顕著な例となるキーキャラクターが登場するシーンの一部が解禁となった。
ホテルの品質管理の仕事を請け負うエマニュエル(演:ノエミ・メルラン)は、監視室のベテラン従業員(演:アンソニー・ウォン)からプールの常連客ゼルダ(演:チャチャ・ホアン)の存在を教えられる。宿泊客でもないのに、毎日のようにプールサイドで本を片手に男性客とおしゃべりをするゼルダはやがて、人が寄り付かない敷地の奥にある小屋へと消えていく。気になったエマニュエルが跡をたどると、そこには男性客と情事を重ねるゼルダの姿があった。エマニュエルの視線に気付くも焦ることのないゼルダから、エマニュエルは目が離せなくなってしまう——。
1974年の『エマニエル夫人』にも、エマニエルの社交界の友人として性に奔放なマリアンジュという若い女性が登場する。ゼルダにもその影を感じるものの、彼女の場合は自身の身体が求めるものが何であるかを知っており、エロティシズムにおいて一番大事なものは何かをエマニュエルに指南する。
本編では、やがてエマニュエルとゼルダの関係がシスターフッドに近いものに変化し、過去作では男性を通して描かれることとなった“女性同士の連帯”を描くための大事なキャラクターとして重要な役割が与えられていることが見て取れる。男性の欲望の対象としてではなく、自らの快感のために行為をする女性の姿を通して、ディヴァン監督は男女関係なく世界中の観客たちに新しい感覚を伝えようとしている。
なお、映像の冒頭にホテルの監視員役として登場するのは、香港出身の大スターアンソニー・ウォン。現在も植民地時代の名残が見え隠れする街で、激動の時代を生き抜いてきた名俳優が説得力と威厳を作品にもたらしている。