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【今月の不健全図書レビュー】マンガ家・山本直樹のスゴさを改めて思い知った『分校の人たち』第2巻(今回は本人取材アリ)

おたぽる1月10日(日)20時0分
画像:『分校の人たち』第2巻 (山本直樹/太田出版)
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『分校の人たち』第2巻 (山本直樹/太田出版)

——東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月“不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない! このコーナーでは、“不健全図書”に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング(群衆による資金調達)ならぬ“不健全図書”クラウド・レビュー(群衆による批評)、はじまり、はじまり〜!


【今月の指定図書】

 12月の指定の目玉は2008年の『堀田』第3巻(太田出版)以来7年ぶり3度目の指定となった山本直樹『分校の人たち』第2巻(太田出版)であります。山本直樹といえば、1991年に光文社から発行された『BLUE』が不健全指定を受けた後に版元が回収し絶版となった事件が思い出されます。当時、山本は「コミック表現の自由を守る会」の発起人でもありましたし、光文社は日本雑誌協会に加盟する大手出版社。折りからの「有害」コミック騒動の渦中の出来事に大きな波紋が広がりました。

 当時、まだ熱かった光文社労組が他人事ではないと、社内で情宣を行い、会社に対して団交で「不当な圧力に屈しない毅然とした姿勢を望む」と要求するなど、大きな騒動になりました(その後、弓立社よりマーク付きで再刊)。

 それから24年。この間、山本は2010年に『レッド』で第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しています。

 権力に賞されながらも、決しておもねることはない。今回の指定はその過激で危険な作風が改めて明らかになったものだと思います。

 だって、30年あまりマンガ家を続ければ大抵の人は「円熟味を増した」等々の言葉で彩られる無難な作風になるとか、手のひらを返すかのように「クールジャパン」などというインチキ臭い言葉で賞讃されるでしょう。山本は、そんな方向に逃げない真のエロマンガ家だったのです。

(以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用)

 さて、そんな山本の『分校の人たち』第2巻は、なにがマズかったのか。

【指定該当】とする意見の多くは、まず性描写の露骨さです。【修整が甘いところもあり、性描写も多く、指定やむなし】【全編にわたり、セックス描写があり、ストーリー性がなく、性器の描写も明確であり、性器の呼称も出てきて、卑わい感がある】なるほど、こうした言葉からは未読の人でも相当エロい作品ではないかと想像できるのではないでしょうか。さらに、そして、描かれているキャラクターの年齢も問題視されています。【年齢が不明だが、まだ青少年のようなので、問題があると思う】【登場人物の3人は明らかに青少年であり】【設定も少年・少女と明らかである】。

 さらに注目すべき意見は、これ。【以前、東京都の不健全図書の指定を受けたことのある作者の久しぶりの挑戦作と見てとれるが、条例を読めば、該当作品とせざるを得ない】。

 実は、この後に指定を決めた審議会の関係者にも話を聞いたのですが、東京都、自主規制団体、審議会それぞれに「山本直樹と聞けば読まずに“指定該当”と決める人が多い」のだとか。『BLUE』の衝撃は24年の時を過ぎても続いているようです。

 ですので、指定非該当の意見【作家の描いている性愛の世界はリアルではあるが、露骨ではなく、官能的で痛々しくはあるが、卑わいではない。性的好奇心に届くものではあるが、いたずらに性的感情を刺激はしない】からは、苦しさを感じざるを得ません。

 名前を聞いただけでエロいと思われる、唯一無二のマンガ家・山本直樹。ちょうど指定が決まった翌日にロフトラジオに出演と聞いていたのでスタジオまで話をお伺いに行ってきました。

※アーカイブで聴けます。
http://www.loft-prj.co.jp/loftradio/?p=877

 主に『レッド』が話題だったのですが、本人は久々の不健全指定について話を振られると、自ら文化庁メディア芸術祭で受賞しているのに指定も喰らうことをネタに話を。さらに現在描いている『レッド』は「出向しているようなもの」だといい「もっとエロマンガを描きたい」というのです。

 放送終了後に、さらに話を聞いたのですが、普段からほかのマンガ家の作品はあまり読まず、ひたすら作品を描くことに集中しているといいます。そして、指定されたことに怒りはないのかと問うたところ、こういうのです。

「作品が世の中から消されなければそれでいい。太田出版は、販路が減るけれども売ってくれるそうなので、あまり気にしていません」

 ストイックに作品を描くことだけに全力を集中し続ける山本直樹。「本物」というのは、こういう人のためにある言葉なのだと思いました。
(文=昼間たかし http://t-hiruma.jp/)

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/666/666siryou2.pdf

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