秋篠宮による問題提起、一世一元の制を巡る政権と皇室の対立

1月10日(木)7時0分 NEWSポストセブン

秋篠宮は大嘗祭への国費支出に疑問を呈した 共同通信社

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 今年5月の改元を前に、皇室内で大きな動きがあった。秋篠宮による問題提起は何を意味するのか。そしてポスト平成の皇室はどうなるのか。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者・慶應大学教授の片山杜秀氏が、皇室と日本について語り合った。


佐藤:昨年11月30日に公開された誕生日会見で、秋篠宮が大嘗祭の費用について「宗教色が強いものについて、それを国費で賄うことが適当かどうか」と発言し、物議を醸しました。あの発言を片山さんはどうごらんになりましたか?


片山:秋篠宮は皇室の私的な費用である「内廷会計で行うべきだ」とまで踏み込んだ。国家と宗教を分離するという戦後民主主義の建前を徹底させる点ではもっともなロジックです。ただその背景にはポスト平成の天皇像を巡る駆け引きがあったように感じます。


佐藤:同感です。あの発言で、天皇の宗教性を守りたい官邸と皇室の対立の構造が露わになった。今回の秋篠宮発言には今上天皇の意見が反映させていると見るのが自然です。


 2016年に今上天皇がおことばで生前退位の意向を示した。しかし官邸は皇室典範を改正せず、1回限りの特例にした。これは「わがままを1回だけは許しますよ」という官邸の姿勢のあらわれです。そんな官邸を秋篠宮は天皇の代弁者として、痛烈に批判した。


片山:そもそも戦後、占領軍は、宗教と一体化した天皇が異常なナショナリズムを喚起したと考えた。この対談で話し合ってきたように、天皇制のもとに生まれた日本型のファシズムが、特攻や玉砕の精神に結びついていく。それが、GHQが危惧した天皇制です。


 だからこそ、宗教と切り離すために昭和天皇の人間宣言から戦後がスタートした。そんな状況で、いまも残った宗教的な仕掛けが、秋篠宮が指摘した「大嘗祭」。それから「大喪の礼」。さらに崩御と結び付いたかたちで、改元を死と再生の儀礼に結び付けた、一世一元の制ですね。



佐藤:その文脈で言えば、明治憲法で定めた一世一元の制を維持したい政権と、それに反発する皇室の対立とみると分かりやすい。


片山:明治維新から続く流れというわけですね。言われてみれば官邸の発想は長州的だと言えます。


佐藤:そうです。安倍首相も、政権を支持する日本会議を結成した小田村寅二郎、小田村四郎兄弟も長州(山口県)にルーツがありますから。


片山:長州は、明治維新で天皇を王として担いだ。しかし山県有朋も伊藤博文も王は何も言わずに、ただ担がれていればいいという態度を貫いた。国民を畏怖させる物言わぬ神として、ただそこにいてもらって、あとは自分たちがうまくやると。そして現政権は物言わぬ天皇をいただき、憲法改正が実現すれば、明治国家に戻れると考えている。


◆さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。片山杜秀氏との本誌対談をまとめた『平成史』が発売中。


◆かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究者。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』。


※SAPIO2019年1・2月号

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