「やっぱり映画っていいなあ」 ートラッシュ!ー

1月11日(日)9時9分 アサ芸プラス

──トラッシュ!−この街が輝く日まで−──

●ストーリー リオデジャネイロ郊外でゴミ拾いをして生活している3人の少年が、ある日、ゴミ山の中で財布を拾う。その財布には重大な秘密が隠されていた。●監督/ステイーヴン・ダルドリー 出演/ルーニー・マーラほか 配給会社/東宝東和 ●1月9日よりTOHOシネマズほか全国公開。

 子供が主役の映画というと、たいてい文化庁ご推薦的な健全映画になることが多い。いわゆる“オトナが考えたあるべき子供キャラ”というやつだ。結果、子供向けだか子供だましだかよくわからない、煮えきらない凡作となるのがお定まりだ。実際、子供なんていうのは、大人が思うよりはるかに狡猾で、ずぶとくて、生意気だったりする。だから本来、子供キャラはそういう悪ガキにしたほうが映画的にはおさまりがいい。少年野球映画の最高峰「がんばれ!ベアーズ」(76年・米)などは、口は悪い、酒は飲む、と今の映画人が見たら仰天するほどの悪たれぞろいだ。が、だからこそ大人も感動する傑作と称されている。

「トラッシュ!−この街が輝く日まで−」は、そうした「子供だましじゃない子供映画」のよさがわかる大人にこそ見てほしい佳作である。ブラジルのゴミ拾いスラムで生きる筋金入りの悪童3人が、腐敗しきった警察や「本当のワル」である大人たちの追跡をかいくぐって一泡吹かせるスリリングな冒険物語だ。

 唯一の収入源であるゴミあさりの最中、偶然拾ったちっぽけな財布。それには彼らのみならず街の運命を変えるほどの秘密があった。

 さびれた炭鉱町でバレエダンサーを目指す少年の物語「リトル・ダンサー」(00年・イギリス)など、子供の扱いには定評あるスティーヴン・ダルドリー監督。彼は、この話のキモが3人のキャラ造形にあることを理解していたのだろう。まず、原作の児童文学では未設定の舞台の街を「リオスラム街のゴミ集積所」と定めた。そのうえで「シティ・オブ・ゴッド」(02年、ブラジル)で、少年ギャングの殺し合いを描いた、フェルナンド・メイレレス監督を制作チームに迎え、本作に同レベルのリアリティを加えたのだ。結果、スラム住民と警察側の一触即発の感情的対立や、におい立つような生々しい生活風景など、それだけでも興味を引く見せ場となっている。

 何しろオーディションで選ばれた主役の少年役は実際にスラムで生まれ育った。彼らが暮らすゴミ山は、2年前に閉鎖されたばかりの本物の廃棄物処理場。さらに「湖畔のスラム」との設定を実現するため、わざわざ隣地に穴を掘って水を張り、魚まで放して湖をこしらえたというから半端じゃない。映画一本にそこまでやるか!

 そんなわけで、本物の悪ガキが圧倒的権力と戦うこの物語は、持たざる者が強者に一撃を食らわす痛快作として、この上ない臨場感とともに楽しめる娯楽作となった。むろん、根底に流れるのは少年らしいまっすぐさ、純粋な心の尊さを賛美する真っ当な主張。中学生くらいの子供とともに鑑賞できたら最高だろう。

◆次回は秋本鉄次氏です

◆プロフィール 前田有一(まえだ・ゆういち) 1972年生まれ、東京都出身。映画評論家。宅建主任者、消費者問題などを経て現在の仕事につく。自身のサイトである「超映画批評」( )では幅広いジャンルの作品を解説している。

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