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カンヌで賛否両論…N.W.レフン監督が挑発作を描き続ける理由

シネマカフェ1月12日(木)18時15分
画像:ニコラス・ウィンディング・レフン監督/『ネオン・デーモン』
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ニコラス・ウィンディング・レフン監督/『ネオン・デーモン』
画像:エル・ファニング/『ネオン・デーモン』 (C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch
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エル・ファニング/『ネオン・デーモン』 (C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch
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いま、世界の映画ファンから注目を集める俊英のひとり、ニコラス・ウィンディング・レフン監督。2011年にカンヌ国際映画祭で彼に監督賞をもたらしたクライム・サスペンス『ドライヴ』、そして2年後に同映画祭で高い評価を得た『オンリー・ゴッド』に続き、発表された新作が『ネオン・デーモン』だ。究極の美に執着を見せる者たちの欲望を、煌びやかなファッション業界を舞台に描き出す本作の魅力、そして創作活動について、来日したレフン監督に聞いた。

現代社会を描く上で、切り口は無数にある。“執着”もそのひとつだろう。物質社会の中では、所有する願望を抑えることはなかなか難しい。今回、ニコラス・ウィンディング・レフン監督が映し出す世界は、幻想的な映像美とともに描き出される、グロテスクなまでの美への執着だ。自分を否定してまで、自分を削ってまで、危険な美に引き寄せられる人々を通して、人間の本質に迫ったレフン監督は、本作を創るきっかけをこう話す。「ある日、自分が女性に支配されて生きていることに気付いた。そして、危険な美についての映画を撮りたいという不思議な衝動を覚えた」。女性に支配されているといっても、決して否定的な意味では決してないと言う。「自らすすんで女子の支配下にいるんだ。なぜなら、女性の方がすべてにおいて男性より断然面白いから。かといって、男女の違いを追求したいのかどうかはわからない。女性についてはミステリアスなままにしておきたいんだ」。

今回テーマとした、美への執着を通し、人間の欲望の極限を描いている。その衝撃的な表現で、本年度のカンヌ国際映画祭では賛否の議論を巻き起こした。だが、「観客の心に刺さることで、彼らの一部になる目的は達成された」と、むしろ満足気な様子さえある。「クリエイティビティとは破壊なのだと思う。一回既存の概念を壊して、それを再構築する行為が、クリエイティビティであり、映画を作ることだと思う」。

『ブロンソン』『ヴァルハラ・ライジング』『ドライヴ』などこれまでの作品が、既存の映画と全く違うと感じさせるのは、私たちが考える“映画”という概念を壊すことを、監督自身が恐れていないせいなのだろう。「壊すことを怖いと感じているとしたら、安全が欲しいからだ。安全とはクリエイティビティと対極をなすものだ。クリエイターにとって健全な状態というのは、安心していない状態だ」。

批判に屈せず、安全さえも嫌い果敢に観たこともない表現に挑み続ける監督は、その繊細かつ大胆な感性をいったいどのように育んできたのだろう。「特に劇的な人生ではないよ。デンマークに生まれ、8歳まで育った。その後、NYに移住し、安全な普通の家庭に育ったんだ。だから、自分の感性がどこで育まれたのかはわからない。失読症だったから、普通でいることの素晴らしさというのが分からなかったけれど。失読症のイメージは、社会的にあまりよくない。それを背負っていかなきゃいけないところはあるけれど、普通の人とは違う脳の部分を使うことを強いることができる。それに気づいてから、失読症は一種のギフト(才能)だと思うようになった。だから、失読症の結果、自分の中の何かが変異しようと、それを資質として受け止めようと考えたんだ。それ意外では、家族のことで悩んだりする普通の人生さ」。

解説的な手法を使わず、映像や音楽をコラージュするように物語を紡ぐ手法も、もしかすると、“ギフト”に由来する素晴らしい資質ということなのかもしれない。「物語よりもスタイルを重要視していると言われるけれど、質の良い物語とはいったい何なのかと思うことがある。一方的な見方を押し付けることが、これからの映画の進化の妨げになるかもしれない。例えば、ある作品について内容よりも様式が勝っていると言う人がいたとして、そういう気持ちもわからなくはないさ。でも、その人自身に、その作品から物語を読み取る力がないのかなと思うこともあるんだ。映画のパワーとは答えがないこと。課題や政治的な目的があって映画を作っているわけではないのなら、特にね。答えを求めるなら算数でいい。定義のようなものを映画に求めるのは違うんじゃないかな」。

監督の作品の中で、重要な意味を持っている音楽についてはどう捉えているのだろう。「デバイスとして、映画の中で音楽を使うことをとても楽しんでいるんだ。もちろん、音楽自体を聴くのも好きだ。同時に沈黙も愛している。世界で最も大きな音だから。音楽と沈黙のコントラストが、また好きなんだ。僕にとって、最大のインスピレーション源は音楽だ。物語をどう綴ろうか模索しているとき、音楽が助けになる。企画中のプロジェクトでも、ではこれは音楽だったらどんな風になるだろうと考えるんだ。楽器もできないし、楽器も弾けない、専門的知識は何もないけれどね」。

作品自体はもちろん、映画作りの発想からして、レフン作品が既存の枠を超えているのは明らかだ。「映画とは何であるかには興味はない。何が映画でないかに興味があるんだ。そうすれば発見があるから。すべてのクリエイティビティは、定義づけることを避けるべきだ。なぜなら、定義づけることによって神秘が取り除かれる。僕にとってクリエイティビティの半分は、その神秘によって成り立っているんだ」。では映画監督と定義づけられるのも嫌い?「職業欄に“director”と書くのは苦手だね。そもそもその意味するところが、自分にとって腑に落ちていないから。それに、人が映画監督と呼ぶような領域に、自分が達しているかどうかもわからないから恥ずかしさもあるし。だから、どこかで職業を書かなくてはならないときは、“unidentifiable (正体不明)”としておくよ(笑)!」

映像作家として、「自分のフェティッシュを形にして生きていくことをとても楽しんでいる」と語るレフン監督。「でも、その他の部分は現実世界に即して生きている。妻、子供は何より大切だというのは間違いない。ただ、僕は欲望に正直に生きていくことしかできない。だから、現実とフェティッシュのバランスをどうとっていくかを、長いこと模索してきた。クリエイティビティとは、その人の欲望の延長線上にあると思うからね」。
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