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【劇場アニメレビュー】ついにとうとうようやく『傷物語』完結! でもやっぱり思う「3部作の必要はあったのか?」

おたぽる1月12日(木)20時0分
画像:『傷物語』公式サイトより。
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『傷物語』公式サイトより。

 西尾維新・原作の『傷物語』劇場用映画全3部作が、2016年1月8日公開の『I鉄血篇』(64分)、同年8月19日公開『II熱血篇』(69分)を経て、年を越えた17年1月6日に公開『III冷血篇』(83分)によって、ついに、というか、ようやく完結を迎えた。

 最近はこうした中編シリーズ型(今回の『III』は長編といっていい長さだが)のアニメーション映画の興行形態は、イベント上映も含めて一般化して久しいものがあるが、長編で一気にやってくれよと言いたくなるのも本音ではあり(正直、期間が空いてしまうと、前作までの細部を忘れてしまうこともしばしなのだ)、この3部作に関してはちょうど1年で完結している分、まだ良い方かなと思えないこともない。

 とはいえ、最初に製作が発表された2010年以降なかなか音沙汰がなく、ようやく詳細が出たと思ったら、まさかの3部作で正直うんざり。そんな経緯があっただけに、やはり今回も無理に3部作にする必要はなかったのではないかという原作ファンの声もチラホラ聞こえてくるが、こうしたシリーズものは映画館に定期的に通う癖をつけさせてくれる部分もあるので、個人的にはそう嫌な気はしていない。

 もっとも、それは作品の出来が面白ければ、という大前提があってのものであり、では<物語>シリーズ第1弾『化物語』の前日譚でもある『傷物語』の映画化は果たして成功しているのかと問われると、ちょっと首を傾げてしまうところもある、というのが偽らざるところ。

 これまでTVアニメ『化物語』(09年、TOKYO MXほか)を皮切りに幾度も映像化され、そのつど好評を博してきたアニメ版<物語>シリーズではあるが、その中で『傷物語』を劇場用映画として、しかも3部作仕様で発表しようという意図は、今回の『III』を見終えたばかりの今、やはりピンと来ないものがあるのだ。

<物語>シリーズの主人公である高校生・阿良々木暦(声:神谷浩史)が瀕死の吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(せっかくなので正確な名前を記してみました。声:坂本真綾)を救おうとして、結果、吸血鬼もどきの人間と化してしまうまでを、それまでのものと比べて作画などの趣向を変え、また劇場用映画だからこそ可能な残酷表現なども成し得ながら悪夢的世界観を描出すべく腐心しているのはよくわかる。

 ただし、新房昭之総監督&尾石達也監督による独自の映像テクニックの数々はテレビであれば、ほどよく映えるものの、意外やこの3部作に関しては、映画館の銀幕大画面だとやや過剰に感じられ、そのうち見飽きてしまうところもある。

 一方、その過剰な映像センスの割にストーリー展開は3作品通してまだるっこく、なるほど、これでは2時間強の長編1本でまとめてくれたほうがテンポよく仕上がったのではないかという原作ファンの声に同意せざるを得ないものもあるのだ。

 今回の人間側のヒロインとなる女子高生・羽川翼(声:堀江由衣)の存在も、原作通りとはいえ、どこかもどかしい。彼女のおっぱいにまつわる下ネタの数々が、ある意味エロいブレイク・タイムになっていればよいのだが、これまたどうにも間延びしてしまっており、作品の大きな魅力になり損ねている。

 そもそも自己犠牲の精神なのか単なる自己満足なのか定かではない羽川のキャラクター自体、どこか浮世離れしていて、しかしながらそれがまた妙に堀江由衣の声とピタリはまってしまっているので、どうにも不可思議な想いに囚われてしまうのだが、これに比べるとキスショットの言動は意外にリアルに受け止められるものがあるので、これまたモゾモゾした気分になってしまう。

 総じてシリアスなパートと下ネタを含むギャグ・パートのバランスの悪さを、過剰な映像表現をもって、これでもかとしつこく見せられるウンザリ感に浸ってしまうのだが、次第にそれゆえの奇妙な魅力がもたらされていくように感じられるのは、これもまた甘美な悪夢的体験にこちらがいつのまにか引き込まれているからだろうか。

 結局のところ、もっと上手いやり方はなかったのか? いっそTVアニメで他の<物語>シリーズと同じような装いでやったほうが気持ちよかったのではないか? などなど、いろいろ文句を言いたくもなってくるところもあるのだが、一方でこの世界観にどこかしらはまってしまっている自分もいたりするので、本当に居心地が悪い。

 この居心地の悪さこそを新房&尾石コンビが狙っていたのだとしたら、こちらの完敗である。

 とはいえ、特に新房作品ということでは彼の悪夢的技巧表現は本作に限らずパターン化してきている懸念も感じないではない。

 それはテレビから映画にと発展していった『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズが、愛らしいキャラと不穏な世界観、そして悪夢的演出の数々のギャップによって魅力が引き立てられていたのに対し、今回はそのギャップがどこかしら欠けていたのかもしれない。

 その意味でも、新房が総監督を務める今夏公開予定の『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(監督は武内宣之)なる東宝メジャー進出作品が、また別のギャップから魅力をもたらし、彼にとっての新たな転機となることを、今から期待したいところである。
(文・増當竜也)

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