ケーキ、チキン、おせち 巧妙化する従業員への買取強要

1月12日(土)7時0分 NEWSポストセブン

ケーキ、おせち、恵方巻もノルマと買取強要から逃れられない

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 お正月の三が日を過ぎると、コンビニやスーパーマーケットでは途端に、節分の飾り付けが登場する。大手コンビニによって2000年代に全国で認知されるようになった、恵方巻の予約を呼びかける垂れ幕やのぼりも出現する。近年では、恵方巻をはじめとした季節の食べ物の厳しい販売ノルマと買取強要がSNSや報道で問題視されたため、ノルマの強要は減ったと言われる。ところが、より巧妙に買取強要は継続されている。ライターの森鷹久氏が、その実態をレポートする。


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 友達との与太話から近所で起きた事故、政界を揺るがすような大暴露まで、ありとあらゆる情報が当事者によりSNSで発信、拡散されるようになった現代。昨年はパワハラ、セクハラ問題がこうしたSNS告発によって明らかになるパターンも散見されたわけだが、年末から年明けにかけて、とある業界でもまた同じような告発を行おうとする若者がいた。いったい何が起きたのか?


「クリスマスのチキン、ケーキを僕らバイトが買わなきゃいけないっていう例のアレ。毎年ネットで話題になるし、ワイドショーでもやってるのに、うちの店長はバカなのかアホなのか…」


 ため息交じりに打ち明けてくれたのは、埼玉県K市のコンビニ店でアルバイトする大学生のシンゴさん(21)。若者らしくSNS上で起きる様々なコト・モノを把握しているため、勤務先のコンビニ店長からクリスマスチキン、そしてケーキの予約を取ってくるようにといわれた瞬間に「アレだ」とピンと来たのである。アルバイトやパート従業員へのこうした買取・予約の強要はほとんど社会問題化しており、各コンビニ本部、大手小売店本部から「強要を禁止する通達が出ているとみられる」(大手紙経済部記者)というが…。


「実は店長、同級生のオヤジなんですよね…。古くから家族づきあいもあるし、今年も平然と言ってきたんです。でも、新入りのバイトは縁故採用でなく外から入ってきた子。友人まで限定公開のSNSに“チキン、ケーキの強要”を上げていたのを僕が発見し、店長に報告したんです」(シンゴさん)


 新入りバイトが首になるのか、それとも強要が大拡散され、店が廃業に追い込まれるのか…。シンゴさんは固唾を飲んで見守ったが、結果は予想外の方向へ転がった。


「店長がバイトを集めて、ワンワン泣いて謝ったんですよね…。本部の目もあり、最低でもウン十個は売らなきゃいけないと。最後は新入りバイトに土下座して、頼むから投稿を消してくれと。もう見てられなくて、バイトも逆に謝っちゃったりして…。ネット(告発)のおかげで、俺らも無駄な買い物しなくて済んだと思う反面、店長のこと思うと心痛むんすよ…友達の親だし」(シンゴさん)


 これまで行われていた「弱者いじめ」そのものであった買取や予約の強要は当然糾弾されるべきだが、シンゴさんの感じた通り、店長だって上司や本部から相当な圧力をかけられているのだから、やはり強要問題が根本的に解決されているとは言い難いのかもしれない。しかし、中には悪質ともいえる方法で、バイトやパート従業員に「実質買取」を迫るコンビニオーナー、店長がいる。宮城県仙台市のコンビニで働く主婦・中谷恵美さん(仮名)の告発だ。


「予約の強要問題はうちの店でも昨年問題になり、今年からなくなりました。毎年親や親族、ご近所さんにまで買っていただいていたのでやっと楽になったと思っていたら、オーナーから“12月25日の夜パーティーをやるから家に来い”と呼び出されまして…」(中谷さん)


 毎年、厳しいチキンやケーキの予約ノルマを従業員に課してきたケチなオーナーが…と驚いていた中谷さんだったが、すぐにオーナーの奥さんがやってきて囁いた。


「“タダっていうのも気が引けるでしょ。会費は一律5千円ね”と。高いなーと思いつつオーナー宅に行くと、うちで販売していたケーキとチキンが卓上にズラリ。しかも呼ばれたのは私と大学生のアルバイトの女の子だけ…。あとから別のバイトの子に聞いたら、28日までパーティーに呼ばれた子がいて…」(中谷さん)


 なんとケチなオーナー、バイトやパートに買取を強要できないからといって、会費をとるクリスマスパーティーに従業員を参加させることで、チキンやケーキの「実質的な買取」を強制させていたのである。


「実はお正月にも、会費制の新年会がオーナー宅で開かれたのですが、そこにもうちで販売しているおせちが並んでいたのです…。さすがに私たちも"やられた"と気が付きました。オーナー宅の大きな冷凍庫には、ケーキやおせちがまだまだたくさん入っていたのを見たという子もいます」(中谷さん)


 このままでは節分の恵方巻、バレンタイン、ホワイトデーと、事あるごとにオーナー宅に呼ばれる可能性もあるとして、中谷さんはすでにブルーモード。一方、学生アルバイトの一人がSNSに「店長が買取を迫ってくる」と書いたが、地元の新聞社やテレビ局からコンタクトがあり、恐ろしくなって書き込みを消してしまったという。


 あの手この手でバイトやパートを使い、売り上げを伸ばそうとする姑息な経営者もいれば、SNSの爆発力を理解し、経営者やその家族を思ってコトを胸に収めようとする弱者もいる、という現実だ。こんないびつな商売方法は、平成の終焉と共にぜひとも消え去ってほしい悪しき慣習であることだけは間違いない。

NEWSポストセブン

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